第3話 マリリンは逢いたい

 私は『酒屋 バッカス』の看板犬マリリン。

 ゴールデンレトリバー と云う犬種の雌犬女の子よ。


 実は私、恋をしているの。


 相手は、ご主人様と配達に行く 居酒屋『あおきや 』の看板猫、ガンモさん。

 そう、彼は『猫』で 私は『犬』。

 種族の違いは分かっているつもりよ ! でも好きになったんだから仕方無いじゃない。


 愛があれば種族の違いなんて !


 今日の配達も ご主人様のお供に軽トラの助手席に乗っている。

 もうすぐ もうすぐ ガンモさんの居る居酒屋『あおきや』に着くと思うとジッとはしていられないわ !

 ブンブンと尻尾を振り、落ち着かない私を見てご主人様が、


「 はっ はっ はっ 、 もうすぐ『あおきや』に着くのが分かるのか、マリリン

 もうすぐ 愛しのガンモに逢えるから大人しくしてくれよ 」


 私の気持ちは、ご主人様には バレバレなのよね。


 キッ キキィー ! 軽トラが『あおきや』の前に止まり、ご主人様が運転席側のドアを開くと同時に飛び出した !



「 バウ バウ バウ バウーン !( ガンモさーん、マリリンがきましたよぉー !)」


『 あおきや 』の前にあるベンチで昼寝をしているガンモさんは、私に気が付き逃げようとしたけど………逃がさないわ !



「 ウニャ ニャ ニャ ニャ !( ヤメレー 、 おいらは雌猫女の子は好きだけど 雌犬女の子は、守備範囲外なんだよぉー !)」


 逃げようとするガンモさんを捕まえて全身を舐め回す、私の匂いを付けて 他の雌猫女の子を牽制しないとイケナイわ !


 幸い、ご主人様達は 私達の事を 微笑ましい顔でみているわ。


「 バウ バウ バウ バウーン バウーン !(きっとご主人様達も私達の仲を祝福してくれるから お嫁さんにしてね、ガンモさん !)」


「 ウニャー ! ニャア ニャア ニャア ( 嫌だぁー ! おいらは、雌犬女の子じゃ無くて 雌猫女の子が 良いんだよぉー )」



 そうしたら、『 あおきや』の隣の床屋さん『バーバー・バーバ」から 二匹の雌猫女の子が飛び出してきた。


「 ニャア ニャア ニャア !(兄さんを離しなさいよ、バカ犬 !)」


「 ニャア ニャア ニャア !( お兄ちゃんのお嫁さんは私達が成るんだから離れてよ、オバサン !)」


 ムカァ ! たった一年違いで、オバサン呼ばわりなんて ガンモさんの妹でも許さないわよ。


「 ウニャーア、 ニャア ニャア (嫌だぁー、 シャンプー に リンスは妹じゃないかぁー 。 おいらは 普通の恋がしたいんだよぉ )」



 荷物を搬入したご主人様に呼ばれて仕方なく 軽トラに乗り込んだ。


 こんな事では、あくらめないわよ !


『 恋 』は障害がある程 、燃え上がるんだからね !


 妹達シャンプーとリンスに迫られている、ガンモさんを見ながら 取られたら取り返せば良いわ !

 略奪愛は、それはそれで燃え上がるものね !


 マリリンが逢いに行くまで待っていてね、ガンモさん !

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