コミュ障&ビビりなのに『救国の聖女』に転生したようです(涙)~顔面偏差値が高い世界は、問題しかありません! せめて生き残り(メンタル含む)をめざします~

香散見 羽弥

1章 聖女と神殿

第1話 聖女、降臨?


 もしも転生することになったら何になりたいか。

 そう聞かれても答えることはできない。

 でも、なりたくないものなら決まっている。


 “目立つ人間”だ。


 主人公・ヒロインはもちろん。

 悪役令嬢やお助けキャラ、実はすごい人、その他もろもろ。

 なんなら物語で活躍の場があるサブキャラにすらなりたくない。


 叶うのなら、モブの中のモブ。


 目立つ人とのかかわりを、持たず、作らず、持ちこませず。

 どんなことがあっても、コミュ障三原則を守る。

 そんなトップオブモブに私はなりたい。


 ……なのに。


 なんで……「聖女」になんてしてくれてるんですか神様ぁ!?



 ◇



「はあ、はっ! 教皇さま! これ以上は危険です!!」

「分かっています! だが……」


 教皇と呼ばれた長身の男の目線の先には、赤黒いモヤをまとった異形がいた。

 魔物まもの――そう呼ばれるそれがじりじりと男たちへと近づいていく。



 王都の外に点在する教会から要請を受け、向かったその途中。

 運悪く魔物の急襲きゅうしゅうにあってしまったのだ。


 そしてなお悪いことに、男たちの後方には小さな村があった。

 人を襲う習性のある魔物は、彼らが逃げてしまえば確実に村を襲うだろう。


 引くに引けない状況で必死に応戦おうせんしていたのだ。


 だが……。


「くそっ数が多い! このままでは……!」


 一体でも厄介な魔物が、十数体。

 せめて急襲でなければ強い結界を張れたのに……。


 魔物の攻撃を受ける度に、薄い結界にひびが入っていく。

 護衛の騎士たちも皆怪我をし、今はこれだけが頼り……。



 男達は死を覚悟した。



 ――その時。



 ゴロゴロゴロ……ドオンッ!!


 揺れる地面。光る閃光。

 天から真っ直ぐに落ちてくる雷の光。

 そしてその中に、信じられないものをみた。



 ――波打つ赤い髪の少女が1人、雷と共に降りてきたのだ。



「聖女……様」


 だれからともなくそんな言葉がもれる。



『危機に陥ったとき、主神である雷神の力を宿した女性が現れる』



 男達の信仰する「ベルタード教」にある言い伝えだ。

 それは「救国きゅうこくの聖女」と呼ばれ、かつてこの国が滅びかけた時にも現れたと言われている。



 間違いない。

 彼女こそが救国の聖女なのだろう。

 その場にいた、誰もがそう思った。




 閉ざされていた少女の瞳がゆっくりと開かれ、現れる神々しい金色の瞳。

 その瞳にしっかりと魔物が映し出された。


 そして――


「いぎゃああああ!! おばけえええええ!!」



 ――彼女は絶叫ぜっきょうした。


「「「え」」」



 それはもう見事なまでの悲鳴だった。

 先ほどまで感じていた神々しさなど即座そくざに消えてしまう程のいさぎよい叫び。



 あれ、これ聖女様だよな? いや、オレに聞かれても。


 そんな空気が広がった。

 けれどそんな疑問もすぐに消えることとなる。




 ――ゴロゴロゴロ……ドオオオオォン!!!




 少女の叫び声に合わせて雷が落ちてきたのだ。

 人には伸びず、魔物だけを正確に打ち抜いていく。



 しばらくすると魔物は跡形あとかたもなく消えうせていた。

 それどころか、振りまかれていた瘴気しょうきもなくなっているではないか。



「……これは……浄化……?」




 魔物と瘴気を完全に消滅させる。

 そんなことができるのは神に選ばれた聖女のみ。


 その力は神の御力みちから

 浄化の力だ。



 やはり彼女は聖女に違いない。



 ……。

 ……なんだか思っていた聖女とはかけ離れているような気がしないでもないが、それはそれ。


 教皇はすぐに我に返り、いなくなった魔物をきょろきょろと探している少女にそろりと声をかけた。




「あ、あの聖女様?」

「ぎょええええ!!?」


 ……そろりとかけたはずだった。

 けれども振り返った彼女からでたのは今までよりも大きな悲鳴。


 ビクリと跳ね上がり飛びのかれてしまう。

 目を見開き、体は奇妙きみょうな形から動かない。


「あ、あの……?」


 再び声をかけてみる。

 やはり反応がない。



 ――どたーん!!



 それどころかゆっくりと後ろに倒れてしまった。

 目を開いたまま気絶していたのだ。



 ――聖女は、ビビりだった。



「た、大変だ! 早く運ばねば!」


 そうして教皇たちは聖女を神殿へと迎えたのだった。



______


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