閑話 とある歴ヲタの転生譚ー弐ー
「
「は、す???す、とはなんでしょうか?」
現代から転生した拙者が駿河はま家に仕えるようになって一年少し。
桶狭間の戦いという『参加したら死亡ルート確定イベント』に帯同するのを何とか拒否して、代替わりによってようやく伝説の人物、はま寿四郎様が東駿河の正式な国衆の当主になった最初の年貢米収穫時期。
『採れた米で多すぎる分はこの辺の海で獲れる魚と一緒に皆で食べよう』と判断された寿四郎様が要望したのはなんと、酢と砂糖……つまり寿司酢の材料だった。
この我が当主・はま寿四郎様は戦国乱世にまだ無かった食文化や技術の多くをいち早く生み出し、それによって民衆を豊かにさせ一大版図を築き上げた事から『実は未来人だったのでは?』なんて仮説まで現代では飛び出していたのだが、米と魚と聞いて寿司を生み出す事をこうもナチュラルに考え付くとはその説もあながちデタラメでは無いのかもしれない。
だが残念ながらこの時代に飛んでありとあらゆることを調べた私は知っている。この時代の酢と砂糖は目玉が飛び出るくらいの値段で売られている、超絶レアな調味料であることを。
何故そんな事を知っているかというと、拙者が現代からこの時代へ来た時に持っていた武器はウイ氏のやり込みで覚えた、各武将のデータベースだけだは無かったのだ!それは―――
現代の情報社会では必須の武器!! スマホ!!!
現代の服からこちらの服に着替えた時、ポケットの中に堅い感触を感じて取り出してみたらそれは現代の姿と変わらず、そこに存在していたのだ。持っていた所で会社からの連絡以外ではほぼほぼ鳴る事の無い、拘束道具の一つと思ってたのに……って言っててめちゃくちゃ空しくなるのだが><
はま家配下として迎え入れられ自分の部屋を割り当てられて早速、色々と試してみたのだが調べ物の類でならどうやら使えるらしい。ただそれ以外は動画再生もゲームもマンガにラノベもどれも読み込み不可だった。ちなみに通話も無理。っても掛ける相手なんて実家ぐらいだから問題は無い……切ないけど><それでも、調べもの用のツールとして使えるのはとてもありがたい。
試しに『今川家』で調べたら、ちゃんとウィ〇ペディアでここまでの今川家の歴史と桶狭間の戦いによって当主・今川義元が亡くなる事までは書いてあった。ただその先、義元公の後を継いだ名監督・氏真公がどう活躍していくかは『この時代からするとまだ未来の出来事だから』という意味でネタバレ防止なのか、全く書かれていなかったしググっても何の記事も出てこなかった。そのあたりは、どういう基準でそうなっているのかは謎だ。
話を元に戻すが、知恵自慢をアピールしてはま家に入ったからにはボロが出ないようにと、この時代の知識で調べられることは片っ端から調べた中で『酢も砂糖も存在するには存在するがとんでもなく高価な物だ』という事は知っていた。だからその場はひとまず用意できない旨を伝え、夜、自室に戻ってから金が無くても自作できるかもしれない方法についてあれやこれやと調べると、1つの可能性に行きついた。
ワインビネガー。
これに関してはヨーロッパでは古代の時代から存在しているモノで、果実の糖分が多ければそこに甘さもプラスされるのでどうやったって戦国日本(本州内)では生産されず、希少価値の高すぎる砂糖を使わなくても寿司酢の生産が可能になる。だが問題はどうやってこの戦国日本で葡萄、それも山葡萄ではなく現代の日本で食べられているような西洋葡萄が手に入るかだ。
その問題の答えは色んな可能性を模索した結果、検索には全くヒットしなかった『甲斐の山中で村人たちが自分たちの腹の足しにと採っていたもの』の中に含まれていた。
その頃のはま家は財政的に危機的状況だったので「海のモノを山で売って、山のモノを海に持ってきて売れば需要があるから稼げる」と提案した事から発見に繋がったのが自分でも驚きだった。これで、この時代で初めて生魚を扱った『
こうして寿四郎様の名を冠して戦国に新たな食文化として誕生した『寿四』は、それを目の前にした者の全員を魅了した。いや魅了した、どころかそれが元で大国同士が手を取り合う【新・三国同盟】が生まれ、戦乱の京の都を離れて落ち延びた元将軍・足利義輝公とそれを支える者達にも振る舞われて【後足利幕府】と呼ばれる東日本を中心とした新たな幕府が誕生し、寿四郎様はその中心人物となっていった。
拙者の方も良き右腕として、この時代にはまだ無かった『スナイパーライフル』や『大砲』『石火矢』など工夫次第で技術的に達成可能な武器の開発や、天婦羅・濁りを無くした清酒といった新たな食の開発など戦場での働き以外の面で、寿四郎様の偉業を長年手伝ってきたのだがこの世界に来てから15年近く。ついに、問題が起こった。
この世界に持ち込んでから充電も必要とせず、いつでも使い放題だった知恵の殿堂・スマホが、電池切れで動かなくなってしまったのだ。
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こうして物語は現在進行形の世界へ繋がります。
スマホの使えなくなった彼に、道は残されているのか!?
乞うご期待!!!
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