第17話 なぜなに質問コーナー!
「総評として――この店の料理は、私が自信をもっておすすめできます!」
食後にホムラちゃんが、リスナーの前で俺の料理の総評を述べてくれた。
「モンスターの肉という普通出回らない素材を、既存の食材や調味料と合わせてここまで味を引き出す技術! 焼き具合をミディアムにするのだって、簡単ではないと思います。トオルさんの料理人としての確かな技術が見える一品です」
「なんか照れるなぁ」
:ほんとに美味しそうではあった
:地上にあれば行きたかったな
:ダンジョン食材って凄かったんだな……
:庶民でも手に入れられるダンジョン食材とか出回ってないかな
コンタクトレンズに大量のコメント欄が流れていくが、ほとんどが好意的な意見だった。
コラボ生配信は大成功と言えるだろう。これでお客さんが増えてくれると良いのだが――
「――さて、リスナーのみなさん。本来の予定ならばここで配信は終わりの予定なのですが……」
「ん?」
「同時接続者数およそ五十万人……私でもここまで人が集まった経験はありません。この熱気を前にこのまま配信を終わらせてしまうのは、少し勿体無いと思うんです」
え? 何か始まるの?
「トオルさん、一つ私から、ご提案があるのですが」
◆
「――と言うわけでリスナーの皆さん、お待たせしました! ここからは質問コーナー! トオルさんに気になるアレコレを聞いてみちゃうお時間です!」
:本編
:待ってました!
:正直これが本命だった
:今日は色々ありすぎて聞きたいことが多すぎる
:ホムラちゃんへの質問はアリですか?
いや待ってました、とかいうコメントがちらほら見えるけど、これ突発で決まった企画だからな?
本来はホムラちゃんに食事をしてもらったら終わりの筈だったんだけど、ホムラちゃんがこのまま終わらせるのは惜しいって事で、
いや俺は別に質問くらい全然構わんが、みんな俺の料理より俺自体に興味あるの?
「あはは……今日はトオルさんがメインなので。トオルさん、急な企画だったのに快諾して頂いてありがとうございます。答えられない質問とかはハッキリそう言って下さって大丈夫ですからね!」
「まぁ大概の事は答えられると思うよ? 隠し事とかあんまりないし」
:ほんとか? 遠慮なく聞くぞ
:なんか一気に視聴者数増えてるけどw
:正直店長の正体が一番謎なんだよな
:今日は寝かさんぞ
「では、私がコメント欄から質問を拾い上げていきますね……うん、まずはこれかな。トオルさん、簡単な自己紹介をお願いできますか?」
なんかテレビのインタビューみたいだなぁ。
「
:ん?
:忘れた??
:あーあるある。歳とると自分の年齢ぱっと思い出せなくなるんだよね
:どう見ても外見二十代ですが……
:ほんとに日本人? 人の皮被ったモンスターとかじゃない?
「失礼な、どう見ても日本人男性でしょうが。黒髪黒眼、平たい顔、ちょっと童顔。日本人の顔によくある特徴でしょ?」
:自分で言うんだ
:日本人は自分のことを日本人とは言わない
:ほんとか?????
:正直中身が人外でも驚かないよ
「確かにトオルさんは、若々しい見た目ですよね。さっき言ってた、歳がわからないというのは?」
「んー、俺って長いこと渋谷ダンジョンに住んでるんだけど、だんだん時間感覚がおかしくなってくるんだよね。俺自身が時間を操るのも理由だけど、元々ダンジョンの中は時の流れが曖昧だからね。もう自分が何年ダンジョンに居るか分からなくなっちゃったんだよ」
「…………」
あれ、ホムラちゃんが無言になった。
もしかしてドン引きされてる? コレ。
「あの、店内に漂う生活感から、薄々察してはいたんですけど……住んでるんですか? ダンジョンの下層に」
「あれ、言ってなかったっけ。基本ここで寝泊まりしてるよ、俺」
:え
:マジで?
:俺も薄々そうなんじゃないかと思ってたけど、マジだったか……
:明らかに土地勘あったもんね。長年居つかなきゃあんな風にはならない
:ダンジョンに住む奴とか初めて聞いた
:地底人かな?
「ま、まあトオルさん程の実力なら、ダンジョンに住む事自体は可能かもしれませんが……なぜ地上ではなくダンジョンに? 不便じゃありませんか?」
「いや特には? ネットも通じるし、水道電気ガスもあるし。何か必要な物があったら地上から取り寄せればいいだけだしね。最近は通販サイトとかでよく調味料とか取り寄せてるよ」
「えっ……えぇ……??」
:どこから突っ込めばいいんだ
:質問をする度に謎が増えていく
:ホムラちゃんは こんらんしている!
:いや、料理してるからインフラ通ってるのは分かってたけどさぁ……なんで??
:ダンジョン下層にはインフラが実装されている!?
:ダンジョンからガスとか電気とか勝手に湧いてくんの? 怖いわ
:でもダンジョンって何でもありだからなぁ……ワンチャンありそう
「ちょ、ちょっと情報を整理しましょう……情報量が多すぎて、私も混乱してきました」
え、俺そんな変な事言ったかな……。
「……。うん、これ以上掘り返すとこちらの処理が追いつかなくなる気がするので、別の角度から質問しましょう。今の質問と関係していて、尚且つ皆さんが一番きになっているであろう質問を」
「お、おう? 何でもバッチ来い!」
「では――トオルさんはなぜ、わざわざダンジョンの下層で料理店を営んでいるんですか?」
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