第3話:現金輸送車襲撃事件。

現金輸送車の襲撃事件は公表されているデータでは1997年(平成9年)の

24件をピークに減少傾向にある。

それでも襲撃事件等は未だなくならない。


最近の横浜湾岸警察署は珍しく事件もなく平和に過ごしていた。

心音もまじめに交通整理に励んでいた。


「あ〜暇・・・ひま〜」


「こら心音・・・事件がないのはいいことなんだからね」

「捜査一課の刑事さんや、私たちが忙しいってことはそれだけ世間を騒がせてる

人物が多いってことなんだからね」


そう言ったのは心音の一個先輩の婦警さん「西山 涼子にしやま りょうこ」さん。


しかしその日、警備会社の営業所を狙うという新たな手口で6億円強奪事件が

発生した。

襲撃事件はすぐに湾岸署にも連絡が入った。

とうぜん心音のパトカーにも連絡が入るわけで・・・。


事件と聞いて我慢できない心音。


「先輩、ごめんなさい、私行きます」


「ちょっと〜心音・・・仕事ほったらかしてどこに行くのよ」


心音は交通整理をしていた西山 涼子をほったらかしてひとりでパトカーに

乗って湾岸署へ帰ってしまった。


当然だが捜査一課の「錨 恭一郎いかり きょういちろう」警部も

心音の大学時代の二年先輩の「御手洗 与四郎みたらい よしろう」刑事も動いていた。


すぐにヘリが動員され湾岸署に新たな情報も入ってきていて、

現金輸送車は乗り捨てられて現金は別の車に乗せ換えられたようだった。

犯人は用意周到で、狭い道路も走って逃げられるよう軽四を用意していた。


奪われた現金が入ったケースには盗聴器が仕込まれていたので犯人が乗った

車が今、どこを走ってるかはすぐに分かったので犯人が捕まるのは時間の

問題と思われたが犯人もそれほどバカじゃない。

盗聴器の信号はすぐに途絶えた。


心音はヘリの情報だけで犯人の車の位置を特定おいて自分のディスクに寄って、

あるモノを手にしてから駐輪場に停めてあるプリンスのところに向かった。


「スカートが邪魔」


そう言うと心音はスカートのサイド側を手で破って婦警さんの制服のまプリンス

に跨って走った。


心音の愛車は「ピナレロ・プリンス カーボン T700 12K 」ってロードバイク。

ピナレロはイタリアの有名ブランド、スポーツバイシクルメーカーだ。

心音は毎日、真っ白なプリンス君に乗って出勤している。


自転車なんかで犯人の車に追いつくのかって思うけど、心音の健脚を舐めちゃ

いけない。

なんせ大学時代はトライアスロンの選手をしていて優秀な成績を残している。

だから自転車ばかりじゃなくスイミングもランニングも得意だった。


都心では小回りの効く自転車のほうがパトカーなんかよりはるかに有利のだ。

直線の長距離でもへたすると心音のプリンスのほうが速いかもしれない。


心音はヘリからの情報を頼りに近道を通り抜けて犯人の車を追った。


「御手洗・・・嫌な予感がするな?」


「錨さん・・・俺もそう思ってました」


「また自転車バカの心音がでしゃばってきてる気がするな」


「絶対ですよ・・・あいつがおとなしく指食わえて見てるわけないんすから」


「しょうがないやつだよ・・・とにかく、あいつより先に犯人あげるぞ」


錨と御手洗は心音にぶっちぎられたポンコツパトカーで犯人を追っていた。


その頃、心音は確実に犯人に近ずいていた。


「プリンス、もう少しだよ・・・頑張って!!」


心音は自転車で通れる道路をショートカットしてついに犯人の車に追いついた。

犯人を追跡してることがバレないよう距離を保って後をつけて行くと犯人が

乗った車は港に立ち並ぶ倉庫街の一角に止まった。


止まった倉庫の壁面に「中山港商会第三倉庫」って書かれてあった。


心音は隣の倉庫に身を潜めて様子を伺っていると第三倉庫の扉が開いて犯人の

車が中に入って行くのが見えた。


心音もプリンスを降りて犯人たちにバレないよう第三倉庫の中に入って行った。

倉庫の中では、さっきの軽四が止まっていて数人の男がうろうそろしていた。


「そこまで!!動かないで・・・全員逮捕します!!」


その声に驚いて犯人たちが振り向くとそこに拳銃をかまえた婦人警官が立っていた。


つづく。



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