第2話  だってお母様が言ってたんだもの

エレナとアイラは腹違いの姉妹。

アイラの母が亡くなった後にきた後妻、それがエレナの母、シャムシエル。


彼女はその美貌を気に入られ後妻に召し抱えられたのだが……

性格は最悪だった。


傾国の美女のように父をろう絡し、陰ながら血の繋がらない娘であるアイラを虐待してきた。


そんな女の子供として生まれたエレナは美しかったが、そんな母の影響を強く受けてしまった。


「いいエレナ。アイラは一応はあなたの姉だけど、あなたと違い魔力も少ない無能。その上みすぼらしい容姿であなたとは似ても似つかない。いい?あんな子みたいになっちゃダメよ!」

「どうして?」


このときのエレナはまだ純粋だった。

だが、母は許さなかった。


「あなたは美しく優秀でなくてはならないの。誰よりも誰よりもよ!」


強く机を叩く母にエレナは気圧され、震える。


「もし、アイラがあなたより一つでも優れるようなものがあってごらんなさい!あなたもアイラのように!制裁を加えるわよ!」


ムチでエレナの足元を叩く!

あまりの恐怖にエレナは言葉も出ない。

エレナはアイラが四六時中母に折檻されてることを知っていた。

それが自分にも来るなんて思えば、幼いエレナは耐えきれない恐怖だったろう。


「そうならないためには、姉を蹴落とすでも何でもいいから、結果を見せなさい。だからといって他の令嬢を無視もダメよ。その美貌でも魔力でもいいから、敵を蹴落とし、地位も名誉も手に入れるの」


冷たい笑顔を見せ、エレナの頬に優しく触る。母。


「そしてあなたは将来、それ相応の相手と結婚し、私を楽させないといけないの。わかる?」


軽くエレナのほほをつねる。

エレナはブンブンと頭を上下する。


「わかればいいの」


エレナにとって、その時の母の顔はトラウマとして残っていた……





それからエレナは変わった。

姉のアイラには日頃から辛く当たった。


「お姉様、あいも変わらず汚いですね~妹として恥ずかしい」


アイラは母に足蹴に、されたことで顔に泥がついていたのだ。それを見てエレナは嘲笑った。


…最初こそ、彼女は心が痛かった。

でも、


「ご、ごめんねえエレナ。みっともないもの見せちゃってさ。ほ、ほら拭いたからさ。どう?これから一緒に遊ばない?」

「はあっ!?」


姉の態度にむかっとした。

良い人ぶってるのかと。

自分が一方的に蔑み、姉は受け身で自分を気遣うような態度。

そんなものを日常的に見ることになるメイドや執事からは絶対に自分が悪者に見える。


みんな姉の味方をするだろうと。

現に、


「お嬢様!大丈夫ですか!」


こうやって助けが来る。


「差し出がましいですが、エレナ様……アイラ様の事を少し……」


ほら悪者になる。と、エレナは思う。


自分も好きでやってるわけじゃないのに、嫌嫌やってるのに、せめて姉が反抗してくれば姉妹喧嘩ですむのに。

こんな私かわいそうアピールして、ワタクシを悪者にする。


そう、エレナは思っていたのだ。

無論アイラに悪気はない。アイラにはエレナの事情は知る由もない。だが争いが嫌いなアイラはこうするしかなかっただけ。


だがそのせいで……姉妹仲には亀裂が入るのだ。悲しい事に。



つづく。


次回は続いてエレナとアイラの悪化する姉妹仲。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る