そのころ、勇者と悪女神たち②

 魔王国首都。

 夢見レイナ、相川セイラ、鎧塚金治。そして黒鉄レオンの下半身は、魔王城にある玉座の間にいた。

 そして、目の前に広がるあり得ない光景。


「おかえりなさいませ、我が主」

「ただいま、魔王ファルザークくん」


 魔王デスレクス。本当の名はファルザークというらしい……が、仲間であるラーズハートに頭を下げ、座っていた玉座を明け渡し、さらに跪いていた。

 ポカンとする相川セイラ、鎧塚金治。夢見レイナも同じようにラーズハートに跪いていた。

 そして、ラーズハートは玉座に座ると……姿が変わる。

 身体がブレたように見え、衣装が際どいドレスに変わる。

 胸を豪快に見せ、深いスリットの入ったスカートになり、髪飾りが豪勢になり……まるで、真の姿と言わんばかりに変わってしまった。


「お、おいラーズハート……そ、それどういう」


 鎧塚が、かろうじて声を出す。

 すると、ラーズハートは笑みを浮かべていた。


「ごめんなさい。実は私……この世界の支配者なの」

「……はい?」

「この子たちは全員、私の僕。つまりね、魔王軍っていうのは、私の私兵。どうあがいても勇者は魔王に勝てない。でも、戦いわなくちゃ生き残れない……私はそれを見て楽しんでいるのよ」

「「…………」」


 鎧塚金治、相川セイラには理解できなかった。

 だが、ファルザークと夢見レイナは笑みを浮かべたまま頭を垂れている。

 他にも、レベル200近い怪物たちが一斉に跪いており、ラーズハート……いや、悪女神フォルトゥーナの言葉が真実だと理解させられた。

 鎧塚は、口元をヒクヒクさせて言う。


「あ、相川……こ、これ夢か?」

「し、しらない」


 相川セイラは、真っ青な顔で首を振った。

 今更ながら、踏み込んではならない領域に踏み込んでしまったと理解。

 振り返ると、無数の魔族が相川セイラをジロッと見た。


「ひっ」

「セイラ。もう帰れないよ」

「れ、れいな」

「さあ、跪いて。フォルトゥーナ様、どうか奇跡を!!」

「お、おい夢見、おま」

「黙ってろ」


 真っ赤に輝く目で鎧塚を恫喝する夢見レイナ。鎧塚はビクッと震え、思わず跪いた。

 フォルトゥーナは少し考えて言う。


「ファルザークくん」

「は、我が主」

「あなたの身体、私にくれない?」

「はい。どうぞお受け取りください」


 ファルザークは立ち上がると、自分の手で自分の首を切断した。

 首から噴水のように血が噴き出し、相川セイラの身体を汚す。


「ぎゃああああああああ!?」

「ひょぉおおおおおおお!?」


 絶叫し盛大に漏らす相川セイラ。そして、相川セイラに覆いかぶさるようにファルザークの身体が倒れ、鎧塚金治の傍に生首が転がった。

 フォルトゥーナはニコニコしながら指を鳴らすと、ファルザークの頭がドロドロに溶ける。

 そして、夢見レイナが黒鉄レオンの下半身を取り出す。

 黒鉄レオンの下半身、ファルザークの胴体、溶けたファルザークの頭が一つになる。

 そして……魔王軍の目の前で、それは復活した。


「……う、お、オレは」

「レオンくううううううん!!」

「うわっ!? れ、レイナ? え、これは……お、おおお!? な、なんだ!?」


 黒鉄レオンは、復活した。

 漆黒の衣装を着た、魔王軍の新たな魔王として。

 すると、フォルトゥーナが玉座を譲る。


「レオン」

「きみは、ラーズハート。いや違う、フォルトゥーナ様。あれ? な、なんだこの記憶……」


 レオンは頭を押さえ、ふらふらと玉座に向かう。

 いまだ、鎧塚金治と相川セイラは驚愕したまま。夢見レイナは当然のように黒鉄レオンの隣に移動。

 黒鉄レオンが玉座に座ると、相川セイラ、フォルトゥーナが両隣に控えた。

 そして、なぜか夢見レイナが叫ぶ。


「聞け魔王軍!! ここに、新たな魔王……黒鉄レオンが降臨した!!」

「「「「「オオオオオ!!」」」」」

「これよりこの世界は黒鉄レオンの物になる!! そして私は黒鉄レオンの妻、黒鉄セイラ!! 魔王の妃である!!」

「「「「「魔王万歳!! 黒鉄レオン万歳!! 黒鉄レイナ万歳!!」」」」」

「さ、レオンくん。みんなに一言お願いね」

「ああ」


 黒鉄レオンは立ち上がる。

 すると、眼が赤く輝いた。


「皆、オレについてこい!! 魔王軍はこれより、四大王国を滅ぼす!!」

「「「「オオオオオオオオオ!!」」」」」


 こうして、新たな魔王が誕生した。

 

「……相川」

「……なに」

「これ、ゆめ?」

「うん、たぶん」


 鎧塚金治、相川セイラの二人は、口元をピクピクさせて現実逃避するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇

〇|黒鉄 レオン

〇スキル『魔王』 レベル264

〇使用可能スキル

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 ◇◇◇◇◇◇

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