第7話 まずは体力測定

 部屋から転移して知らない所に来ている僕達、辺り一面荒野でした。目の前の奥に連峰と呼ぶに相応しい山々が連なっていて後ろには深い濃い森。


 「さぁ始めようじゃないか!それでは整列!!番号!!」


 洋一は毅然とした態度で大声で告げる普段の間の抜けた姿と打って変わり凛々しさが増していた。顔も劇画風だ。


 「いちっ!以上です!」


 洋一は形から入るのが好きなのか鬼軍曹を気取り偉そうだ。


 ヒマリはカーキ色のキャップを被りキャップの後ろから黒髪のポニーテールを靡かせている。顔にはゴーグルとフェイスマスク迷彩柄のミリタリスーツの上下、黒のグローブ、コンバットブーツで身を固め右腰にはコンバットナイフを装備している。


 洋一も同じ格好をしてるがゴーグルは首に掛けてフェイスマスクは外している。


 「それじゃやりますか、適当に体を解してね~。」


 劇画風顔から昭和のファミリーアニメのモブおじさん顔にチェンジするのに3分もか掛からなかった。ヒマリも「ほ~い」と返して手足をグルグル回してる。


 「先ずは体力測定、垂直跳び~。深くかがんで思い切り上にピョンね。」


 ヒマリは気合いを入れると深く膝を曲げ大きく飛び上がった?一瞬で姿が消えた。


 「キャアァァァァァー」上空からの悲鳴が響き渡り徐々に小さくなっていく。見事な逆バンジーだ紐ないけど洋一は素晴らしい!とパチパチ拍手をする。


 暫くするとまた「キャアァァァァー!」と上空からの悲鳴が徐々に大きくなってきている彼女のご帰還だ。


 此の儘ほっといても、小さなクレーターが出来るだけで大したダメージは無いはずだが、多分ヒマリは激おこぷんすかで絶対に口を聞いてくれ無い、この後の強化訓練にも支障をきたす。なら答えは一つ。


 「風神エアーバック!」


 洋一の魔法がヒマリに大きく優しく絡みつき徐々に落下スピード落ちていきファっとヒマリは地面に降りた。


 肩で息をきらしこっちを見ているゴーグルとフェイスマスクで表情が分からないが多分激おこだ。ぷんすか迄は言っていないはず、どうしよう。褒めるか......


 「ブラボー!さすが僕が見込んだ人だ!素晴らしい才能だ!誰もが羨む美貌に溢れ!あとイッパイ素晴らしい!!さぁ冷えたスポドリを飲むが良い!」


 満面の笑顔で肩をバンバン叩く。おっとと言いながら僕はボトルキャップを外して上げてスポドリを渡す。ヒマリさんは無言だ


 「一息付いてからは、次の体力テストです。ここに直径1.5メートル長さが10メートルの丸太が有ります。僕が向こうから直径2メートルの大岩を投げますので。遠くに打ち返して下さい。」


 「なんで私が丸太持って大岩打ち返さなきゃいけないのよ!持てる訳ないしょ!」


 大丈夫、大丈夫と軽く答える洋一。


 ふとその時にヒマリに悪魔が囁く洋一目掛けて打ち返しても罪にならないと所謂ピッチャー返しである。


 「こんなの、どうやって持つのよ!」


 抱きつき抱え込み、えいっ!あら不思議軽く持ち上がったわ。えいっ!えいっ!とブンブン振り回す。


 「洋一さんいいわよ。」


 ヒマリさんは悪意に満ちた笑顔でニヤニヤしているがゴーグルとフェイスマスクをしているので表情は読み取れない。


 洋一は身の丈程の岩石玉ロックボール作り出しホイっと放った。物凄い回転の剛球だがヒマリは狙い澄ましフルスイング!


 「うおりゃぁぁ!」


 ドッゴーン!バッキーン!真で捉えたが丸太も耐え切れづ真ん中から折れ飛んで行った。


 洋一は慌てず目の前に飛んでくるロックボールをマトリックスばりのブリッジで軽く躱し全身のバネで起き上がると折れた丸太の塊が顔面直撃した。 


 「ブギャ!」


 ロックボール、洋一、丸太の順番で遠くに飛んで行く。


 「うわーーー!」


 洋一の叫び声がこだまする。その直後山麓の中腹に三度の着弾音が響いて土煙が上がっった。


 あそこ迄飛んだ?身体強化は100倍?イヤイヤそれ以上あるでしょう。頭を振るヒマリは目の前に現れた男に疑問をぶつける。男は鼻を赤くしていたが丸太の直撃でも大したダメージには見えない。


 「明らかに威力有り過ぎでしょう。身体強化100倍、超えてるでしょう。」


 「ん?どれどれ……あっ万倍でした。好きなだけ、無双出来ますよ。」


 何が万倍ですか!どこの宝くじ売場ですか!私人じゃないんですか!うーっ、あっ指輪外せばいいだけじゃないですか!ヒマリはこう結論付けた。少しホッとします。


 「体力テスト、最後は鬼ごっこです!さぁ僕を捕まえてごらん。アハハハ、アハハハ」


 もう、あんな遠くに行ってる。ヒマリは無性にイラ立ち、思いっ切り踏み出した。クソが絶対捕まえてやる!だがその前に踏み込んだ右脚が地面にめり込みビッターン!強烈に地面に叩き付けられた。


 「ブキャッ!痛ったーー!くない?体も頑丈になっている……でもクソは捕まえる!」


 ドドドドドッ土埃を巻き上げ爆走するドンドン加速する。後ろに流れる景色は新幹線のよう。見つけた!フル加速!!ドッゴーン!衝撃波が後ろに飛んでいく。絶対万倍じゃないやんけ……。


 「クソ野郎!これで終わりです!」


 捕獲寸前に洋一は鋭角に方向転換しヒマリの両手は空を切る。


 「まだまだっ!」


 直ぐ追いつくが後少しの所で逃げられる。洋一は、よっ、はっと軽く躱している。ヒマリは熱くなり過ぎ周りが見えてない。


 「腹が減ったな。休憩で〜グッゲッ!!」


 洋一が止まり振り返ると前から強烈な衝撃!ヒマリがつこんで来た。二人は絡まりながら数十メートル飛んだ後も地面を数十メートル転がった。


 気が付くと僕は彼女の上に覆い被さってた。いい匂いがした。女の人って身体柔らかいんだ。両手が幸せの膨らみ掴んでいた。手のひらに収まりきらない僕の始めの経験……気が遠くなる、頭の中が真っ白です。息苦しいです。


 ヒマリが僕の首を両手で締め上げてます。

物凄い力です。ゴリラ女です。いやメカゴリラ女です。軽くゴリラさんの手グチャできます。ごらぁ!放せ!死ぬ!死ぬのか?幸せを握り締めているのでどうでもいいかな?辞めろ!脱出転移!


 「ゴッホ、ゴッホ寸前まで行ったゾッ!あぁ謝る!すみませんでした。あれは事故案件です。本当です。許してください!」


 ヒマリさんは、ゆらっと立ち上がるとフッと姿がぶれた。強烈なショートアッパーが僕の鳩尾に炸裂する。当たる瞬間捻りやがった。コークスクリューかよ!何という格闘センス、チート過ぎるだろう。


 「うげっ!!」


 僕は扇風機のように高速で回転しながら山の中腹に飛ばされてしまった。


 




 






 



 



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る