ミステリアスなメイドと女主人が住まう幻影の世界
碧居満月
プロローグ
ある朝のこと。県立
徐に観音開きの扉を開け、朝の陽光で明るい聖堂の中に足を踏み入れる。
ところどころひび割れた、石造りの床。左右に並ぶ木製の長椅子。奥には主となる金色の十字架と祭壇。その両脇には白い像となっているジャンヌ・ダルクと、クリスティーヌ・ジュレスが、重厚な雰囲気を
真剣な表情になるほどの決意と覚悟を胸に、しっかりとした足取りで聖堂の奥へと進んだ美果子は、甲冑に身を包み、勇ましく旗を掲げた等身大のジャンヌ・ダルクの像の前で立ち止まった。
「今の私に出来ることはもう、これしかないわ」
そっと右手を伸ばし、面前に佇むジャンヌ・ダルクの像に触れる。
次に、刃の先端が下に向いている剣の柄に両手を重ねて佇む、クリスティーヌ・ジュレスの像の前まで移動した美果子は、ジャンヌの像と同じく右手を伸ばし、凜々しい表情をしているクリスティーヌの像にも触れた。
「もしかしたら、私がここに来るのも、今日が最後になるかもしれない。ジャンヌ、クリスティーヌ、万が一、私の身に何か起きたら……その時は像から人間となり、私の代わりにこの町を護って」
ジャンヌ・ダルク、クリスティーヌ・ジュレス、双方の像が見える位置に佇み、両手を組んで祈りを捧げると美果子は、足元に置いた旅行用のトランクを片手に聖堂を後にした。
決断して聖堂から出たものの、とある場所へ向けて歩を進めるミカコの頭は不安でいっぱいだ。
これから未だかつてない経験をするのだから、不安になるのも当然と言えば当然だが……それでも自分自身で決めたことなのだから、行かないと言う選択肢はない。
万が一、私が元の世界に戻れなくなった場合は、
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