第12話 運命の?お茶会。before.
「子どもたちのお茶会、ですか」
「そうだね」
無事に魔力測定が済んで、楽しい楽しい家族でのパーティーも終わって二日後。神殿で貰った制御の指輪をニマニマ眺め、魔道具が使えるのが嬉しくて、屋敷中のランプを点けたり消したりしまくって、さすがに怒られ始めた頃。
晩餐時、すっかり早く帰って来るのが習慣になっているお父様が話し出す。ちょっと嫌そうな感じがするけれど……?お母様は、にこやかな苦笑?みたいな顔をしている。
「1ヶ月後の予定だ。王太子殿下が12歳になられたからね。来年から学園に行かれるだろう?その前にご友人を作りたいのだろうね」
お父様は言葉を選んでいるが、詰まる所、側近と婚約者選びの場だな。あー、なるほど。
ちなみにその学園は、13歳から18歳までの貴族は全員通う義務がある。魔法のコントロールが主な目的だ。あとはお決まりの社交ね。
そしてこれはあれよね!物語の運命のお茶会だわ!
今回私は慌てず騒がず何より目立たず殿下にも近づかず、平穏無事に乗り切らねば。
そして、マリーアを推す!推しまくる!!
あ、そしたら近づかないとダメか……うーん。……それは後で考えることにする。
とりあえず、あれよね、家族内でマリーア推しをまとめておくと良さそうじゃない?私は狙っていませんよアピールもついでにしておこう。
「王太子殿下って、そういえばお姉さまと同い年だったのですね!そうしましたら、こん……」
「リリー?ご友人を作るためのお茶会だ、いいね?」
お父様が凄味のある笑顔の圧で、言葉を被せてくる。
その迫力に、「はい、スミマセン」と、思わず謝る私。
「い、いやすまん、リリーに怒った訳じゃないぞ!マリーも来年から学園だし、友達は作っておいた方がいいしな。もちろん、リリーもだ」
私がちょっとしゅんとしたのを見て、お父様が慌ててフォローする。マリーアは素直に「はい」と返事をし、私も頷く。そしてそんな私たちをお母様はクスクス笑いながら見ていた。
「旦那様。お嫌なのは分かりますが……。何も聞かされていないと、困るのは当人の二人ですわよ?」
「むぅ……。ジョセフィーヌ、君は寂しくないのか?」
お父様が拗ねた顔でお母様を見る。お母様は更にやれやれと言った感じで眉を下げて、お父様に言い聞かせるように話す。
「旦那様。これは貴族家である以上、仕方のないことです。……わたくしだって、今がとても幸せですから……二人にも愛する方と幸せになって貰えるのが夢ではありますわ。それでも、これは王命ですからね」
「………………分かっている……」
お母様の途中のセリフに顔がだいぶ緩んだお父様だが、最後に王命と言われ、不貞腐れたように呟く。
が、お父様はどうしても言いたくないらしく、長い長い沈黙が続いた。
「はあ……お父様は言えないようですから、わたくしからお話するわね。マリー、リリー」
「ジ、ジョセフィーヌ!」
「旦那様は黙っていらして。話が進みませんから」
「……はい」
お母様がマナーを捨て、思いっきり呆れたような溜め息を吐き、お父様をピシャリと遮断する。
お父様はイジイジとお皿の上のディナーをいじる。まったく、小学生か!そしてお母様は、そんなお父様をもう見ないことにしたようで、マリーアと私に話し出した。
久々のツン発動だ。
「マリー、リリー。このお茶会は、もちろんお友達を作る機会でもあるのだけれど、将来王太子殿下の側近になる方たちの候補者選びと、ご婚約者の候補を選ぶものでもあるの」
「ご婚約者、ですか」
マリーアがちょっと驚いたような反応をする。分かるよー。庶民からしたら早すぎる感覚だよね。
「ええ。わたくしは我が儘を言って遅くなったけれど、貴女のお母様だって、幼い頃からご婚約をされていたでしょう?」
「あ……」
ふふっ、とお母様が優しくマリーアに応える。
「……それでね、貴女たちはその婚約者候補の筆頭なのよ」
マリーアは更に目を見開き、私はやれやれ感で項垂れる。……まあ、そうなっちゃいますよね?なんせ……
「先日の魔力測定で、マリーは濃紺で聖魔法持ちだったし、リリーは紫光ほどの魔力……王家が気にならないはずはないのよ。……これは、何となくでも分かるかしら?」
ですよね。マリーアと共に頷く。
そんな私たちの様子に、お母様も安心した様に頷き、優しく微笑んだ。
「旦那様は貴女たちを手離したくなくて、ちょっと……いえ、かなりご機嫌斜めだけれど、このお茶会は王様からのご命令なの。お断りはできないわ。それも分かるわね?」
また二人で頷く。
「……でも、筆頭とはいえ、まだ候補の中の一人には変わりないの。当日は公爵家のご令嬢もいらっしゃるし、他の侯爵家、更には優秀な伯爵家のご令嬢もいらっしゃるわ。……これも意味が分かるわね?」
お母様の不敵な笑みに、思わず反応する。
「はい!わたくしたちは選ばれなくてもいいってことですよね?!」
つい、大声で。
「まあ。リリー、ちょっとはしたないわ」
「すみません……」
「でも、そういうことよ。もちろん、二人が王太子妃になりたいのなら、お母様も全力で応援するけれど……。無理強いすることはないわ。我が侯爵家は、王家との縁があろうがなかろうが、揺るぎませんから。ねぇ?旦那様」
「!!そう!そうだぞ!!二人ともずっといていいんだぞ!」
「さすがにそこまでは申しませんが。……どうしても、なら、仕方ないですけれど」
ふふっ、なんやかんやでお母様も私たちに甘い。両親二人の愛を感じるなー。うんうん、娘の嫁入りとかって、寂しさとかいろいろと感情が大渋滞だよね!
「ともかく。何も覚悟がないと、他の方々にいろいろな干渉を受けますからね。今の状況はきちんと把握して、動ける準備はしましょうね」
「「……はい!」」
二人で揃って返事をする。確かにお貴族様コワイ。
まだ貴族となって半年も経たないマリーアは、私が守るんだ。そして、そうだ、お母様が……サバンズ侯爵家が、無理に王家との縁を強いて望まないのなら。
「どちらかが無理に王太子妃にならなくてもいいってことよね?」
ぽそっと一人言る。
そうね、そうだわ!新しい道が見えたんじゃない?!
もちろん、マリーアが王太子に惚れました!とかだったら協力するし!それで良くない?
やったー!もう、いろいろ回避かな?
順調過ぎじゃない?さすが私!
ーーーなんて、これがただの夢だったなと、1ヶ月後に知ることとなるのであった。しくしく。
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