第7話



令嬢だった者たちは子息たち同様、廃嫡されたのちに投獄されて毎日鞭打ちを5打。

ひとり1本の竹は、鞭打ちを繰り返していくとだんだん割れ、細かく裂けていった。

最終日となる五十日目には、背中の傷に数本の竹の繊維が食い込み、または刺さっていたという。


罪人の牢は個室になっているものの、廊下は鉄柵になっておりプライバシーはない。

四隅の一角に申し訳程度の板が1枚たてられて目隠しに置かれた、トイレという名の小さな木箱の中に入れられた桶の処理は、鞭打ちのために出されるときに自分でもってでて洗い、牢に戻るときに自分で持って帰る。

蝶よ花よと育てられた元令嬢が自分でトイレの処理をする。

それは何より屈辱的だったろう。

しかし、すでに貴族籍はなく、罪人として罰を受けている身では誰に文句を言うこともできない。

罪を問われたのは、聞いたウワサの裏取りもせずほかの人に話したから。

たとえ立場の弱い下位貴族でウワサ話をしていた輪の中にいたとしても、それをほかの人に話さなかった令嬢たちは罪に問われていない。

地下牢にれられた彼女たちは、身から出た錆である。


「まるで白魚しらうおのよう」と言われた元令嬢たちの指は、自身の背の消毒のために触れる薬物により荒れてザラザラとなっていた。

医務室で処置などという待遇はない。

別室に用意された塗り薬を届く範囲の傷に自分で塗るだけだ。

以前は消毒液があったが、それをのんで自害しようとした元令嬢がいたため液体のものは用意されなくなった。

……背中に瓶を傾けて垂らしていた消毒方法は出来なくなった。

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