第12話(後編)
激戦が終わり、閉会式が始まりました。
日が傾く中、
(つ、疲れた……)
(もはや足の裏が痛い……)
すでに筋肉痛が怖く、何もしたくない気持ちです。シャワーだけ浴びて爆睡したいところ。
「ーーこのあとの打ち上げでは羽目を外しすぎないようにーー」
体育祭やら文化祭やら、終われば打ち上げがあるものです。
(はぁ、打ち上げかぁ。まぁちょっと顔出せばそれでーー)
「ちょうど先生方が運んできてくれているので、みんな手伝いにーー」
鼻腔をくすぐるこの香りは。
「俺手伝いまーす!」
この匂いは間違いないと思いました。
(ピザだっ!)
今日一日で「行事に熱心なやつ」と思われている
「お疲れさま、
「ああ、ありがとう」
「……今年も勝ててよかったねぇ」
「毎度肝が冷えるよ……。生徒会長の座を取られるのはごめんだ」
1年生の頃は自分ではなく、先輩の生徒会長の座を守りました。2年生は他ならぬ自分自身の王座を守り、そして今年もまた、
「でもさぁ、負けても生徒会長の座は譲らないって言い張ればそれでよくない?」
「まさか。そんなことをすれば信頼が損なわれるだろう? そしてなにより」
「なにより?」
「最悪譲っても大丈夫だ。悪いことにはならないさ」
もしも西軍が勝ち、
「それはそれで、芸能科に新しい風が起こるだけ。そうだろう?」
「ま、あのお嬢様がトップになるとあれもこれもやたらゴージャスになりそうだけどね」
「違いない」
談笑する2人から、少し離れたところにて。
ぶすっとした顔のまま、
「なんじゃあ、まだぶーたれとるのか」
「だってよぉ、
「結局おぬし、
「なっ……!」
言葉に詰まりました。
「なんだ、そうなのか?」
「
「ちょ、
「金髪小僧もまだまだお子ちゃまじゃからのぉ」
「ぐぐぐ……」
拳を握るもそれ以上なにもできない
「むしろ大人になったさ。カイトの成長が見れてよかったよ」
「あ?」
褒められたことはわかっても、何のことかはわかりませんでした。
「めんこのとき、無理に勝負せず、次に繋げただろう?」
勝ち抜き戦において、次のメンバーに勝敗を託しました。自分ではなく、チームが勝てるように、
「これまでのカイトなら、どれだけ可能性が低くても、自力の勝利を狙ったはずだ」
「勝負から逃げたって言いたいのか」
「……俺やチコ以外の相手とも、目的のために協力できるのは、大人になった証だろう」
実力、メンタル、目標の高さ、家柄など、
「俯瞰の視点を持つことはリーダーにとって必須だ。先頭をいく以外にもリーダーのあり方はある。
言われてみれば。
「来年、お前たち2年生がみんなのリーダーになる」
「……なるべく、いろんなことを学んでくれ」
そんなときです。
「先輩! 本日はありがとうございました!」
「ウン? ……ウン」
駆け寄ってきたかと思えば、ぴしっと礼をする
「一緒に組んでいただけるだけでなく、怪我をしないように配慮まで……このご恩は忘れません!」
「別に……」
「
遅れてやってきた
「あ、よかったら食べますか?」
「……ありがとう」
ぎりぃっと
(く、食事制限や好みを外せないと思って遠慮したが……不覚!)
気遣いの能力で
「ま、またしても……またしても」
悔しさを隠せない
「ゆーても、おれっちたちも頑張ったっすよ。それに収穫はあったでしょ」
「ええ! もちろん!」
「やはり『共鳴』『攻撃』『強化』は欲しいですわ! デビュー周りの騒動があった以上、
「……ほ〜い」
と、返事をする
視線の先、
体育祭における人物や能力の再評価。派閥への勧誘競争。これらのための「能力の利用を認めるルール」。
(おれっちたちはどこまでいっても先祖返りなんだなぁ)
そんな事情を知ってか知らずか、
(ヤッキーたちがこっちに来んのは、嫌だなぁ……)
頭の後ろをがしがしと掻きながら、
打ち上げが終わり、全員が帰った後のこと。
スタジアムを出てすぐの海岸沿いの道を、
同じ考えだったのか、
「む、何じゃしけた面をしおって」
「年甲斐もなくはしゃぐよりはいいだろう」
2人の
「今世の高校生活ももうすぐ終わるのぉ」
「名残惜しいか?」
「無論じゃとも。歳は繰り返せても、この3年を繰り返すことはできぬ」
「ずいぶんと謳歌してるように思う。……
心外だと言わんばかりに、
「うるっさいの! おぬしこそ、ちゃっかり楽しんでおるじゃろうが! なんじゃ生徒副会長って! ワシも会長とかやりたかった! 目立つし!」
「
「例の件か。まぁのぉ。
「……最近ということもないだろう。若者はみなそういうものだ」
「ふむ、それもそうじゃな」
2人とも同じタイミングで歩き始めます。海岸沿いをまっすぐ進むと芸能科に着きます。寮もその付近なので、自然と2人で歩くことに。
「今世も退屈せんのぉ」
「まったくだ」
月明かりに照らされながら、寮へと向かいます。仲間や級友が待っていることでしょう。いつの時代も変わらないことです。今という時代を生き、挑戦し、ときに勝ち、ときに負けながら、時代を作る。
対の
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