サンタ・デコルテ(3)(2023/12/18)

 たとえば、やわい首筋に這わせた唇とか。

 そこに確かな温度があるならば、いつかの娘が拒むことはしないだろう。三田みつだと奥さんだって、そうやって娘へ命を繋いできたのだ。

 たとえば、突然告げられる「明日から来なくていいよ」とか。

 ぐっと唇を引き結んで、自分の至らなさを噛みしめる。それは初めての挫折かもしれない。あるいは岐路であるかもしれない。


 そういうのは構わないのだ。

 パパとしては苦い思いを隠せるはずもないけれど、それもまた経験。三田は娘をガチガチに守り固めたいわけではない。

 まだ幼いと言ってもいい娘には早すぎる心配だろう。でもとにかく、そういうのはよいのだ。娘の人生が豊かになるならば、黙って見守ろうではないかと決めていた。

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