30.C-2
……逆に、今がスキルを奪う最後のチャンスということになるのだろうか? 確認してみることにする。
「では、今が、
「え……?」
皆が俺の方に注目する。
「そうなるね。君は、なかなか見どころがあるね。今ならまだ間に合うよ」
<思案>は自分の想定通りの回答をしてくれる。
ふと皆の方を見ると、早海さんと友沢以外はすでに臨戦態勢になっている。
この短時間で、随分と頼もしくなったものだと感慨深さすら覚える。
「一応、確認する。どういう意味だ!?」
土間が険しい表情を俺に向けて、問い掛ける。
「そのままの意味ですよ。キメラを倒して、生き残るためには、少しでも強くなっておく必要がありますね? 今は、それができる最後のチャンスということです。なので、これから白川さん以外からスキルを頂戴しようと思います。白川さんにはファシリテイターをやってもらおうと思います」
「……」
白川さんはこんな状況でも平然としている……と思いきや、色濃く焦りの表情を見せている。
流石に、多少は驚いたのだろうか。
「嘘……ですよね……?」
早海さんが今にも泣き出しそうに、俺に問いかける。
それを見ると、少し可哀そうな気持ちになる。
「すみません、早海さん。でもキメラを倒して未来を変えるには、やっぱり、これが最善だと思うんです」
「そんな……」
早海さんは消え入りそうな声でそう呟く。
思えば、今に至るきっかけは高峰さんを救えなかったところから始まったのかもしれない。
弱さが招いたあの結果、それを変えるには強くなるしかなかった。
そう考えると、早海さんはきっかけを与えてくれた恩人だ。
少しだけ覚悟が揺らぎそうにもなるが、これまでの全ての行動は、この時のために積み重ねてきたこと。
今さら、それが覆ることはない。それよりも今は彼女の持つ高火力レーザーへの好奇心の方が大きい。
「それがてめぇの本性か!? 水谷を殺すのを立候補するとか言ってた時から、きな臭いと思ってたんだよ!!」
他のメンバーと比較して、ここに来る前の付き合いも少なく、過ごした時間も短いせいか土間はそれほど困惑することもなく、俺に罵声を浴びせてくる。
「後出しで、そんなこと言われましても…… 後からならどうとでも言えますよね?」
「……っ!?」
「僕も、まさかここまで全てが想定通りにいくとは思っていませんでしたよ」
「てめぇ……」
「長話も何なので、そろそろやりましょうか。これが、本当のラストミッションです」
「しかし、本当にうまくいくかね……?」
「っ!?」
体が……動かない……!?
「私のスキル……<ストップ>を失念するとは……とんだ凡ミスだな」
日比谷がそう言いながら、ゆっくりと近づいてくる。
警戒していたつもりであった。
彼からは十分に距離を取り、<ストップ>の射程に入らないようにしていたのだ。
「しかし、君がこんな野心家であったとは正直、驚いたよ……見直したと言ってもいいかもしれない」
「っ……」
「だが、最後にその稚拙さを晒してしまったようだね…… 本当に残念だ……」
その言葉と同時に、日比谷がブレイドを出力する。
その美しい輝きが視界に入ると同時に、全身から冷や汗が滲み出る。
ここまで、積み上げてきたものが全て無に帰す。そして、死ぬ。
「本当に残念……なのは、あなたです……」
「え……?」
何かが高速で移動し、そして止まる。その何かは水谷。そして、水谷はなぜかブレイドを日比谷の首元にかざしている。
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