27.M4-4
ふと、ミッション3の最後、巨大カマキリとの戦闘の後、密室に閉じ込められた時の会話を思い出す。あの時は、何の役にも立たない能力であると思った。
「な、何が起きているんだ……!?」
土間が立て続けに起こる理解が難しい出来事に疑問を投げかける。
「金井崎さんの体が燃え尽きるように消滅しました……」
友沢がありのままの事象を伝える。
「私の能力<火葬>で、金井崎さんの遺体を燃料にし、ターゲットを攻撃しました」
白川さんが淡々と述べる。
「なっ……!? てめぇ、まさかこれを狙って、わざと金井崎を餌に……!?」
「っ……!?」
土間のその言葉は予想外であったのか、あの白川さんが動揺しているように見える。俺は、それを見て、何かが込み上げてくる。
「気持ちはわからなくもないが、それは流石に、言い掛かりってものだろう」
自分が、土間に一言、言ってやろうと意気込んでいると、その前に、日比谷が釘を刺す。
「もし、そうだったとしても、推論で物を言うのは感心しない……」
「す、すみません……」
土間は、日比谷に対し、謝罪する。
もし、そうだったとしても……だ? 日比谷さん、あんたも間違っている。それに土間、すみませんは、日比谷ではなく、白川さんに言うべき言葉だろ? と憤りを覚えながらも、今は終息へ向かいつつある話を拗らせるのは得策ではないと思い、自身を抑制し、再び、ウツボ恐竜の様子を注視する。
ウツボ恐竜は先程までは悶えていたが、徐々に落ち着きを取り戻しているようだ。
「流石に、これだけでは致命傷には至りませんでしたね……」
白川さんが呟く。ファシリテイターが最後のターゲットを討伐してもいいのかが若干、気になったが、彼女がこのように攻撃をしたということは特に問題ないのだろう。
「これでわかったことは、あいつを倒すなら、外からではなく内側から攻めるのが有効そうということでしょうか」
白川さんが続ける。
ここにいる大体の人はそう思っているだろう。
しかし、白川さんを責めるつもりは毛頭ないが、それがわかったところで、どうすればいいのだろうか? また誰かの死体を奴の腹の中に送り込むのか?
グゴォオオオオオ――!!
「!?」
ウツボ恐竜の突然の咆哮に否応なしに、身が縮こまる。と、同時に勢いよくこちらに突進してくる。
「来るぞっ!!」
日比谷が叫ぶ。
俺は もう来てるよ! と思いながらも、本能的に自身が攻撃対象にならないようにするにはどうしたらいいかを考えている。
ウツボ恐竜は怒り狂い、誰を狙うでもなく、頭と尾を乱暴に振り回す。防御性能の高い俺、水谷、土間を除けば、この時、生存するために必要であったものは完全に運だけであったと思う。
「うわぁあああああ!!」
「よ、横之内さん!!」
ウツボ恐竜の口には、横之内さんが咥えられている。
「……」
この時、少しだけ脳裏を巡った考えに、罪悪感を覚える。また火葬が使えるかもしれない。
だが、その罪を抱える心配は杞憂に終わる。
「ぎゃぁあああああ!!」
ウツボ恐竜は、横之内さんを強く噛み締める。口からは大量の鮮血が溢れ出している。
その後、ウツボ恐竜は横之内さんを呑み込むことなく、なぜか口を大きく開ける。
「!?」
身の毛がよだつ思いであった。ウツボ恐竜の中には、小さなゴンズイが大量にひしめいていたのだ。
「ぎゃぁああ゛あ ああ!! やめて!! やめてぇえ゛え ええ!!」
横之内さんの断末魔を聞き続けることしかできないことに強い無力感を覚える。
と、同時に、俺が唯一、アイデアとして持っていた、奴を一撃で葬れるかもしれない方法が極めて困難であることを認識する。
「……くっ」
確実に倒すには、やはり脳を狙うしかない。しかも内側の柔らかく骨の薄そうな部分に狙いを定めて…… だが、あれだけ口の中にゴンズイがいては、どうやってあそこまで到達するんだ……? なくはない。だが、そのためには……
「私の能力が必要か……?」
「っ……!?」
「皆さん! 作戦があります! 聞いてください!!」
らしくもない大声で、俺は皆の注目を集めようとする。
「聞くったって、この状況でどうやって聞くんだよ! すまねえが、俺は聞きながら身を守るなんて、器用なことできねえぞ!」
友沢が俺に正論をぶつける。
「た、確かに……」
早くも暗礁に乗り上げてしまう。
「平吉ぃ! その作戦、勝算はあるんだろうな!?」
土間が叫ぶ。勝算…… 成功率は半分くらいであろうか…… 回答することを躊躇ってしまう。だけど、次第に、これ以上、高い確率が期待できる作戦があるのなら、言ってみろという気持ちに変わっていく。
「……はい!」
「……だったらデカいのは俺が引き付けてやる! 小さいのは自分らでなんとかしろ! いいですよね!? 部長!」
「あぁ……すまない……土間」
「……はい……! やってやろうじゃねえか!!」
土間はウツボ恐竜に向かって猛進する。
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