第17話 賭け事は良くない!
リビングに戻った俺と西城はソファーに座り、残っていたお菓子の続きを食べていた。戻るついでに冷蔵庫からお茶も持って来たので、いつでも飲み物のお代わりが出来る。完璧だ。
「それにしてもラブレターの相手気になるよな」
「まだ気にしているのかよ」
俺は呆れながら言い、お菓子を一口食べた。
「だって、柳木がラブレターを貰うなんて、全く想像出来ないぞ」
「失礼だな!」
「柳木の学校生活を見てもモテている様子はないし、女子と絡んでいる所もあまり見たことないし」
「高校生活ではそうかもな」
プライベートなことは誰にも話していないから、西城がそう感じるのは仕方がない。
すると、西城がジト目を向けて来た。
「その目は何だよ」
「今の言い方は何か含みがあるように聞こえてな」
「……そうか」
「柳木、俺に何か隠していることでもあるのか? 俺、柳木に隠し事をされるのは嫌だぞ!」
「お前は俺の彼女かよ!!」
思わずツッコミを入れてしまった。
「いいツッコミだ!」
何故か褒められた。
そして西城は咳払いをしてから、言葉を続けた。
「それで隠し事はあるのか?」
「ないよ」
ごく普通に答えて、俺はお茶を一口飲んだ。
「それならいいんだが、もし隠し事があったら俺は柳木のことを許さないからな」
「何故、そうなる?! 前にも言ったとは思うけど、誰だって一つや二つ隠し事はあるものだ。だからこそ、その判断はおかしい」
「俺が嫌だから。 それと、今の言い方だとやはり隠し事があると解釈が出来るんだが?」
「それは気の所為だろ」
これ以上、西城から問い詰められるのは面倒くさい。それなら軽く流して、話題を変えるのが一番だろうな。
一口お茶を啜り、俺は言葉を続けた。
「そーいえば、中間テストがもう直ぐだな」
「話題を変えやがったな」
西城に睨まれた。
そしてため息をつき、「もういいや」と言って、言葉を続けた。
(狙い通り?)話題を変えることに成功したようだ。これで一安心だ。
「中間テストやりたくないわー」
「でも中間は科目数が少ないし、範囲もそこまで無いから何とかなりそうじゃない?」
「そうなんだけどさー、暗記系が被ると片方は諦めモードになるんだよな」
その気持ちは分かる。
一番被って欲しくないのは英語、物理、数学の三科目だ。英語は英単語、物理と数学は公式を覚えることになり、色々と混ざる予想が出来る。
「期末テストよりかはマシだろ。 まあ俺も赤点を取らない程度で諦める科目あるかもだけどな」
「確かに期末もやばいよな。 期末は範囲も広いし、科目数も増えるし進級させる気ないだろ」
「それにならない為に勉強しろと言いたいんだろうな。もう諦めて赤点にならない程度に勉強すればいいんだよ」
「なぁ、柳木に提案があるんだけど」
これは…嫌な予感がするな。
「俺と一緒にテスト勉強しないか?」
予想通りだ。
だけど、その願いは叶わない。
「断る」
「即答?!」
「当たり前だろ。 俺だって勉強してもなかなか点数が取れない人間だから、一緒に勉強しても一ミリも得がないんだよ」
中学時代の時もテスト前に勉強したが、色々と緊張や焦りから頭が真っ白になってしまった。
その為、中学時代もなかなか危うい成績を取っていた。ほんと高校に合格出来て良かった…。
「俺だって一人で勉強したら、違うことに目移りをして勉強が出来なくなってしまうんだよ〜」
西城は両手を握りしめ、こちらにうるうるとした瞳を向けて言ってきた。
「そんな瞳を向けてもダメな物はダメです」
てか、男にされても嬉しくないわ!
どうせなら霧宮さんとかにされた方が、誰だって嬉しいに決まっている。
「柳木のケチ」
「そんなことを言われても俺では力になれないので、担当科目の先生に聞くんだな」
「それなら柳木も一緒に聞こうぜ」
「俺は…いいや」
もしかしたら霧宮さんに頼んだら、勉強を詳しく教えてくれるかもしれない。授業風景を見ていたら、かなり勉強出来る雰囲気だしね。
「これも断るのかよー!」
「何もかも一緒に行くとは限らないからな」
「柳木…柳木がそう言うなら、俺は中間テストで柳木よりもいい点数を取ってやるからな」
気持ちの振り幅が激しいな。
だけど、そこまで言われたら、俺も負けたくないんだよなー。俺って、負けず嫌いなのかな?
「それなら俺も負けないように頑張る」
「おっ! 柳木もやる気が出てきたみたいだし、何か賭けご———」
「———しません」
「何かしら無いと気持ちが上がらないだろ!!」
「やだよ」
賭け事なんて碌なことをする訳がないだろ。
そもそもテストの点数で賭け事をしようと思うなよ…。大体、言い出した本人が負けるんだし。
「仕方がないな…。 それじゃあ、普通にテストの点数勝負ならどうだ? 賭ける物は無し」
まあ…賭け事でなければいいか。
「それなら…まあいいけど」
「よしゃあ! 絶対に負けないからな!」
「はいはい」
軽く返事をしてお菓子を一口食べた。
それに続いて、西城もお菓子を食べる。
それから軽く遊べる対戦ゲームをしたり、偶々付けたテレビで流れたドラマを見て時間を過ごした。
◯
私、霧宮飛鳥は自宅のキッチンにいた。
理由は簡単。柳木くんが帰宅するまでの間に、彼が喜ぶ夕食を準備する為だ。
「まずは何を作りましょう」
キッチン台の上には昼食と一緒に買ってきた野菜や肉などが置いてある。
スマホで【レシピを教える】を開き、いくつかのワードを登録して検索を掛けた。
「これはいいかもしれませんね!」
選んだのは“豚肉の味噌漬け焼き“という料理。
これなら野菜とお肉がたっぷりでボリューム満点なので、柳木くんも喜んでくれるはずだ。
ということで、レシピに書いてある野菜だけ残して、それ以外は全て冷蔵庫にしまった。
「それでは手順通りにやっていきましょう!」
まずは玉ねぎとキャベツを手に取り、それぞれ食べやすい大きさに切っていく。
その次に豚肉をパックから取り出し、筋を切り取る作業をする。
「次は…ボウルに調味料と材料を混ぜる…と」
シンク下にあるボウルを取り出し、調味料を混ぜてから豚肉、玉ねぎ、キャベツ加えて混ぜる。
混ぜ終えたらフライパンを出し、そのフライパンにごま油を入れてから熱し、材料を入れてから弱火で焼いていく。
「うん! いい感じの色になったね!」
肉に焼き色がついたので上下を返し、さらに火が通るまで焼いていく。
最後にピザ用チーズを乗せ、蓋をしてチーズが溶けるまで待った。
「これで完成ですね!喜んでくれるといいな♪」
蓋を開けるとチーズがいい感じに溶けており、美味しそうな香りが鼻をくすぐってきた。
料理が冷めないように蓋を置き直し、私はお米を研ぎ、そして炊飯器の【スタート】ボタンを押した。
そして四十分後———
「ただいま」
お米が炊ける音と共に柳木くんが帰って来た。
ということで、せっかく同棲をしているので、例のアレをやってみましょうか!
私はノリノリで玄関へと向かった。
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