12/20

 とき子祖母ちゃんは友達と無尽講で食事するから、と昼に出かけた。無尽講というのは一定のメンバーで決まった額のお金を出して、一人ずつ順番にそのお金を受け取れる……という、儲かるのか儲からないのかよく分からない経済活動である。


 そのとき子祖母ちゃんが帰ってきていないようなのだ。なにかあったのだろうか。

「おばあちゃんのことだから友達と買い物サでも行ってらってね?」

 あかりは楽観視しているが果たして大丈夫なんだろうか。


 秋田県内はもともと過疎地域だったが、異世界の人たちが入ってきて、お店などは逆に増えた感じだ。秋田県は金になるぞと異世界人も思ったに違いない。


 だからどこかで買い物している可能性もある。あまり心配しなくてよかろう……と思っていると、とき子祖母ちゃんがルンルンの足取りで帰ってきた。


「なした祖母ちゃん」


「光もそろそろ幼稚園サ入れねもねえべ、八幡幼稚園の園長先生サ話つけてきたんだ」


「……はい?」

 あかりがポチ目になっている。八幡幼稚園というのは八幡神社のやっている格式高い幼稚園だ。俺も通ったが結局こういう人間になったので早期教育というものを疑っているのだが。


「光だって友達いたほうがいいべ? どだ、ひかくん、お友達ほしいべ?」

 完全に親である俺たちの意見はスルーされていたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る