第36話 エルフからの解放
ここは地下組織ヤマダの司令室。様々な魔法陣が各所に描かれた最新の魔法施設だ。前面には大型のスクリーンが三枚あり、その前には重厚な長机が置かれ、女性三名がスクリーンに向かって座っていた。まるで交通管制室のようだ。
俺と絵梨花は首都近郊でのエルフ討伐を終えて、三日ぶりにいったん首都に帰って来たのだが、転移で迎えに来てくれた恭子と聖女が、ここに案内してくれたのだ。恭子たちも今日初めて入ったそうだ。
三面スクリーンには、ドワーフ国の各都市の様子が、次々に切り替わって表示されている。各地でお祭り騒ぎのようだが、全国的なお祭りでも開催しているのだろうか。
三名の真ん中の女性が、俺たちの方に振り返った。ルミエールだ。すると両脇の女性もこちらに姿勢を向けた。ドワーフ姿のルミエールだった。真ん中が本体で、両脇が分身のようだ。本体が俺に話しかけて来た。
「お兄様、ありがとうございます。エルフが次々と国外へと逃げ出しています。ご覧の通り、国中が大喜びです。改めて、ドワーフ国民を代表して、御礼申し上げます」
「改まった話し方はよしてくれ。そうか、ようやく逃げてくれたか。正直、一組ずつ殺すのは、絵梨花にとって、かなりつらい作業だったんだ。だが、エルフを追っ払ったのは、頂いた食料の見返りだ。感謝する必要はないぞ」
「滅相もございません。千年以上に及ぶ支配から解放されたのです。あの微々たる食料では、我々の感謝の気持ちの一片にもなりません。ドワーフ王からも是非とも感謝の気持ちをお伝えしたく、お時間を頂きたいとのことでした」
「お前、本当にルミか? お兄様とか言っているし」
「本物ですよっ、お兄ちゃん」
「そっちのモードで話してくれ。調子が狂う」
「分かりました。それで、王と会ってもらえますか? 王は私の祖父でもあるのです」
「ルミは王族なのか?」
「母が元王女です。降嫁して王藉は離脱しています。エルフはドワーフの王女を残らずエルフに嫁がせる政策をとっていました」
「何のためだ? 一種の示威行為なのか。それとも友好関係のアピールか?」
「単なる嫌がらせです。エルフは混血を嫌いますので、父親の方は私の父のように結婚自体を隠します。母親の方は屈辱でしかありませんが、ドワーフ国内ではエルフによって、大々的に宣伝されます」
「お前、ドワーフの国で虐められていないか?」
「それは大丈夫です。むしろ、エルフの嫌がらせに屈しないところを見せるために、ドワーフたちは意地でも優しくしてくれます。でも、これまで誰も結婚してくれなくて、死神さんが嫁にしてくれたので、嬉しかったです」
(いつの間に結婚してんだ、俺は……)
「そうか。それはよかった。おめでとう」
「お兄ちゃんに言われると変な気分ですね」
「そうかもな。で、ドワーフの王様にはいつ会えばいい? ドワーフ国で見つけた人間の男五人を早めにダンジョンに連れて行きたいんだが」
「ヒミカさんのお見合い用ですね。でしたら、ドワーフ王もダンジョンに呼べばいいです」
「王様を呼び付けてしまっていいのか?」
「もちろんです。お兄ちゃんたちの方が立場が上なんですよ。救国の英雄なんですから。すぐに行きますか?」
「そうだな。一度、死神の俺を呼んで、状況を確認してから行こう」
「え? でしたら、あちらのお部屋でお願い出来ますか」
またか。こいつら毎日毎日抜きやがって、抜かないよう耐えている俺の身にもなれと言いたい。いくら若いとはいえ、こう毎日だと、一日二回が限界なのだ。
俺はルミエールに連れられて、司令室を出た。女たちの視線が痛かったが、体は俺でも、心は別人なのだ。
案内された部屋はルミエールが寝室として使っているとのことで、そこそこ豪華な内装だった。
「まずは一緒にシャワー浴びましょう」
「は? 一緒にシャワーは不味いだろう」
「え? 私は全然恥ずかしくないですよ」
「俺も恥ずかしくはないが、こういうのはケジメが大事だと思うのだ」
「今さら何のケジメですか。アナさんは大人だからまだいいですが、女学生を六人も手込めにするとは、殺人鬼ではなく、鬼畜だと死神さんは嘆いてましたよ」
「手込めではない。むしろ手込めにされたのは俺の方だ。だが、それとルミと一緒にシャワーを浴びることとは別問題だろう」
「合理的に考えれば、時間節約のためには、お兄ちゃんと一緒にシャワーをあびて、そのまま死神さんにスイッチするのが一番いいと思いませんか?」
「そう言われればそうだが、死神の俺はそれでいいのか?」
「これは死神さんのリクエストなんですよ。一日六分しかなくて、抜き一回の制限付きなんですから、時間がとにかく惜しいのです」
何だか言いくるめられているような気がするが、ここで押し問答している時間が無駄なような気がして来た。俺は黙って服を脱ぎ、シャワーを浴び始めた。
それを見て、ルミエールも脱ぎ始めたが、恥ずかしくないと言いながら、実に恥ずかしそうに服を脱ぎ、胸と下を隠しながら、こちらににじり寄って来た。
(まずい。反応して来た。もはやここまでだ)
俺は死神の俺を呼び、意識をやつに渡した。
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