第14話 魔王
―― 山口の憑依視点
山口は麗亜とフィニッシュした直後だった。体全身に爽快感が走っていた。
(高校生のくせにけしからんな)
麗亜はどうやら、山口とは転移前から男女の関係だったようだ。
(特に麗亜、ご両親は泣いていると思うぞ)
そもそも、麗亜はこんな悪人のどこがいいのだろうか。
でも、やってる最中でなくてよかった。俺は好きでもない女とはしたくないし、見たくもない派なのだ。
「麗亜さん、ナビゲーターさんのレベルを知っていますか?」
山口がズボンを履きながら、布団にくるまっている麗亜に声をかけた。
「知らない」
「レベル48だそうです。今の私では瞬殺されてしまいますが、本物のダンジョンで強力な魔物を倒すことを繰り返せばなれるそうです」
「本物のダンジョン? ここはダンジョンではないの?」
「突然ダンジョンが現れて、魔物に滅ぼされた古代都市の廃墟だそうです。本物のダンジョンに繋がる場所が、廃墟のあちこちにあるそうですよ」
「ナビゲーターって何者?」
「今はまだほとんど何も教えてくれません。レベルが上がれば、その分、情報開示してくれるそうです」
「でも、そんな怖い場所に入って大丈夫?」
「『魔王』というのは、『魔物の王』なのです。自分よりもレベルの低い魔物はテイムできますので、護衛を何匹が連れて、ダンジョンに行こうと思います。まずは、トロールをテイムします。あれは強いですが、レベルは10しかありません」
山口がステータスを確認している。
氏名
鑑定、測量、土木建築
(何だか良さそうなスキルを持っているな)
「分かった。私は山口くんに着いて行く。私の見込んだ男だから」
(けっ、小娘が何ほざいてやがるっ)
と思わず毒づいてしまったが、小娘の割には、なかなかいい体をしてる……。うーん、でも、やっぱり高校生じゃ全くダメだ。まさか女子高生インポになるとは思いもしなかった。
「麗亜さん、服を着て下さい。ナビゲーターさん、トロールの探索を頼みます」
「かしこまりました。……、この先、三キロほど先に一体います」
ナビゲーターが山口の後ろにいた。ずっと二人がしているところを見ていたのだろうか。結局、ナビゲーターはカナ一人だけのようだが、二百歳以上ということで、人間でないはずだが、一体何者なのか。
(
この世界のことは、ほとんどわかっていない。人間ぽいのも
山口は驚いたことに、今のところは、麗亜には優しく接している。麗亜は正直、俺の趣味ではないが、魅力的な女性ではあると思う。目つきが鋭く、少し上がり目で、口元にほくろがある。冷たい美人といった感じだ。
(麗亜は大人になったら、すごいセクシー美人になるんじゃないか?)
山口と麗亜は二人で建物の外に出て、すたすたと歩き出した。途中で遭遇したオーガを山口が睨むと、オーガが二人の護衛であるかのように並んで歩き出した。
(おおっ、さすが魔王!)
そして、トロールも同じように簡単に手下にしてしまい、オーガ三匹、トロール二匹に守られながら、中華風のお城のような建物の前まで来た。
「ここから先は魔物のレベルが格段に上がります。ダンジョンの一階層目『森のエリア』です。気を引き締めて下さい」
カナの声を背中に聞きながら、山口は城の門の観音開きの扉を開けた。
(何だ、ここは!?)
開けた扉の先には広大な森が広がっていた。
「麗亜さん、私の後ろについて来て下さい」
前にトロール二匹、その後ろに山口、さらに後ろに麗亜、そしてしんがりにオーガ三匹の隊形で、山口たちは森の中に踏み入った。
「ナビゲーターさん、どこに行くのがよいですか?」
「『森のエリア』にはエルフの廃村がいくつかあります。そこを宿泊地にしながら進みます。まずはここから五キロ先の廃村に向かいましょう。途中にトレントが何体かいます。トレントには中村様のファイアが有効です」
カナって便利だなぁ。麗亜って中村っていうんだな。
「森の魔物で最強は、『エルフリッチ』で間違いないですか?」
「はい、レベル20の魔法使いです。勝ち目はありませんので、すぐに逃げて下さい。追ってくることはありませんので」
かつてはエルフの楽園だった森が、今はエルフの亡霊の森になっているようで、エルフのアンデッドが
「トレントを支配出来なかったら、麗亜さんがファイアで燃やして下さい。オーガやトロールたちが肉の壁になってくれます」
という作戦だったのだが、まさかトレントが上から降って来るとは思わなかった。トレントが五体、山口と麗亜の間に降りてきて、麗亜が咄嗟にトレント群にファイアをぶち放った。
「ファイア、ファイア、ファイア、ファイア、ファイア、ファイア」
麗亜が唱えたファイアが一つ多かった。まさかの山口焼死。
何と山口は、ダンジョンの初戦にて、仲間である麗亜からのファイアが背後から直撃し、トレントと共に呆気なく焼死してしまった。
これには俺もあんぐりだ。
―― 俺はいったん自分に戻るのだが、全く慌てることなく、山口が燃えて行く様を冷静に見つめている麗亜の表情を見て、背筋を寒くするのだった。
(加世子といい、麗亜といい、クラスの女子が無茶苦茶恐ろしいじゃねえかよぉ!)
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