閑話 スーパー銭湯と白河さん
年末年始の連勤を終えての初めての休日。
俺は、朝からある場所に行こうとしていた。
その名もスーパー銭湯!
俺がいつも行っている地獄のスーパーとは違い、こっちは天国のほうのスーパーだ!
大きいお風呂に、熱めのサウナ!
食事が取れるところもあり、ゆっくり休める場所もある。
そして入館料もそこそこ!
独り身にとても優しい、コストパフォーマンス抜群の施設である。
「私、初めてスーパー銭湯に行きます」
「そうなんだ……」
でも今日は一人じゃない。
何故か
「いってらっしゃーい!」
「わざわざ見送りに来ないでよ!」
「なんでー! 私もチーフに会いたいのに!」
外には
なんでこうなった……。
昨日、帰ってからの
●●●
『連勤お疲れさまでした! 明日はゆっくり休んでくださいね!』
『ありがとう。疲れたから明日は朝からスーパー銭湯にでも行ってこようかなぁ』
『……スーパー銭湯?』
『えっ!? 行ったことないの!?』
●●●
そんなこんなで
今日のアルバイトはいつも通り夕方から。
午前なら全然問題なしということだ。
そのスーパー銭湯は隣町の駅前にあるので、今は
「チーフ!
「は、はい……!」
今更だが、
しかも、新年初デートがスーパー銭湯ってどうなのだろうか。
「チーフ! お母さんがうるさいから早く行きましょう!
「う、うん……」
そんな疑問が脳裏に浮かびながらも、
※※※
「
クルマを運転しながら、
「……」
「
「じ、実は苦手でして……」
「えぇええ!?」
思わずクルマのブレーキを踏んでしまった!
急ブレーキ気味になってしまったので、急いで
「どういうこと!?」
そのままクルマを路肩に寄せる。
「ひ、人前で裸になるのに抵抗がありまして……」
「修学旅行のときとかはどうしてたのさ!?」
「だ、誰もいない時間を狙ってひっそりと……」
お、思ったよりも大きな弱点だった……。
俺の浅はかな考えだと、温泉が苦手な人間なんて存在しないと思っていた。
「早く言えば良かったのに!」
「だ、だってぇ……」
つい良からぬことが思い浮かんでしまったが、必死にそれを振り払う。
「戻ろうか? 無理して行くような場所じゃないし」
「い、いいんです! 行きたいのは本当なんです! お風呂は大好きですし!」
「でも……」
「
「……」
「お願いします!
「うーん……?」
こ、これ、たかがスーパー銭湯でそんな必死になる話なのだろうか……?
「や、
「とりあえず向かうけど、無理そうならちゃんと言ってね。俺も汐織が苦手なものをはちゃんと知りたいから」
「は、はい!」
俺がそう言うと、
※※※
施設内にある、畳の休憩室に二人並んで腰をおろす。
片手にはお互いにコーヒー牛乳を持っている。
「
髪は半乾きで、服装は館内着に着替えている。
……いつもより色っぽいような気がする。
「大丈夫だった?」
「はい! 朝なので人が少なくて良かったです! あとは隅っこのほうを移動したので!」
「隅っこ!?」
あんなことを言っていたの
そして今、とても楽しそうにコーヒー牛乳を飲んでいる。
「ぷはー! 冷たくて美味しいです!」
「ね? 結構悪くないでしょう?」
「はい! とても楽しいです!」
「お昼になったら館内の食堂に行ってみようか」
「はい! 私、お腹ぺこぺこです!」
一時はどうなることかと思ったが、楽しんでもらえたみたいで良かった。
……こんな若い子と、新年一発目のデートがスーパー銭湯ってきっと俺くらいじゃないかなぁ。
「いいですね、こういうの。私、おじいちゃん、おばあちゃんになっても
「
「わ、私はもちろんですが……」
呼び捨てに慣れていないのか、
俺もまだ意識して彼女の名前を呼んでいるので少し恥ずかしい。
「あははは……、でもダメですよね。もう少し慣れないと」
「慣れる?」
「だ、だって――」
「あぁああああ! 分かった! 分かったからそれ以上は言わなくていい!」
よ、良かった、止めることができて……。
値下げ発言のときもそうだったが、
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