初登校

「じゃあ行こっか」

 そう言って駅に向かって進もうとしたら、驚いた表情で七海が尋ねてきた。


「どうしてニーハイを履いてきてないの?」「え?普通の靴下で良くない?」


 そう言うとななみは、鬼気迫る表情で

カバンから長い靴下を手渡してきた。


「絶対に駄目です!!私の替えをあげるので履いて下さい!!今すぐに!!」

「ええっ!?ここで?」

「いえ、トイレで履いて来て下さい」

「どうしても?」

「どうしてもです!!」


 引き下がりそうに無かったので渋々履くことにした。しかし女子の靴下ってなんでこんなに長いんだろ?


 駅のトイレで黒く長い靴下に履き替えて戻る。


「履いたよー」


 戻ってきてななみに報告するが、七海の目線はずっと俺の足に固定されていた。

それに心無しか息が荒い。


「もしかして、この靴下似合ってない?」


 そう尋ねるとななみは、急に表情を引き締めてから言った。


「いえ、何でもありません…。それでは行きましょう」


そう言って歩きだしたので後について行き、二人仲良く電車に乗り込む。


(しかし、電車内に女性しかいないのは変な感じだな)


電車に揺られて10分、初めての高校に到着した。俺が在籍している私立猫之宮高等学校は、創立50年以上を誇る名門校らしい。

設備も充実していて県外から来る人も多いそうだ。


「おおー。凄く大きい!!」


 校門を潜ると、真っ白な壁面に赤い屋根のついた荘厳な校舎があった。校舎は5階建てで高さは、15mにも達しそうだ。


「そういえば私の教室って何処だっけ?」

「華恋は私と一緒のクラスなので、教室まで一緒に行きましょう」

「そう?じゃあ行こっか」


ななみと二人隣り合い、学校の敷地内を教室に向かって進む。


(それにしても、さっきから周りの人達が此方を見ては何か騒いでるけどどうしたんだろう?)


「ねぇ、なんだか周りの人に凄く見られてるけどどうしたんだろう?」

「いえ、きっと華恋が誰かと一緒に親しげ……こほんっこほんっ!!……登校したことが無かったので騒がれてるだけですよ」

「そうなの?誰かと一緒に登校することってそんなに変なことなのかと思ったよ」

「まあ、そんなに気にすることでもありません。あれは無視して教室に向かいましょう」

「うーん…まあ七海がそう言うならそうするかな?気にしていてもしょうがなさそうだし…」


 結局そのまま七海と教室まで会話をしながら向かった。






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