第2話

 例えば。


 果報はスマホを指さす。背面に純金、スワロフスキーがあしらわれたやたら豪華なスマホである。それがついさっき彼女にのだった。


「どうもこうもありませんわ、今連絡があって、気まぐれに買った宝くじが当たったのです!」

 

「はて……」

 背筋を伸ばして姿勢良く立つ執事は記憶を探った。


 なぜかイライラしている果報はダークブラウンのロングヘアに同色の瞳を持ち、フリフリの白いドレスを着た見目麗しい美少女、乱麻は燕尾服を着て整った顔に眼鏡をかけた長身黒髪の青年である。

 ルネサンス様式の豪奢な内装の部屋で2人が向かい合う様はまるで映画のワンシーンのようだった。


「先日まで世界旅行をしておりましたね。どちらの国で購入されたものでしょうか」

「スーパーマンとハンバーガーの国です」

「……いささか極端な印象ですが、理解しました」

「超適当なんですよ、5つの数字を選ぶだけの宝くじ。海外でもこの体質が通用するか試してみましたの」


 なぜそんな無駄な真似を、と乱麻は思ったがすぐに頭からその考えを振り払う。人間、わかっていても無駄な抵抗はしたくなるものだ。そして果報は彼女なりのトライアンドエラーを繰り返していた。全てうまくいくのが彼女にとっては物足りないのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る