―ブラックアウトした俺は、まるで電池が切れたかのように意識を手放した。身体が限界を迎えた時に、ちょうどお弁当を食べていたのなら、そのままお弁当に顔を突っ込んで寝落ちするような、そんな感じだった。


ふと目を開けると、真っ白い空間が広がっていた。白いスモークが立ち込めている中、足音が響き、ゆっくりと人影が現れる。――そして、そのシルエットだけで分かる。スタイルが、とんでもなくいい。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。これこそ理想のスタイルというやつじゃないか。


「異世界での生活はいかがでしょう?私の独断で設定させていただきました。魔剣と美少女のセット、気に入っていただけましたか?」


声が響いた。うっすらと見えた人影の正体が分かってきた。――女神だ。ああ、ここは女神の間。どこかで見たことがあると思ったんだ。


「うーん、どうだろうな?今のところ、俺のハーレムには関係ないけど、魔剣の美少女ってのも悪くないかもな」


スモークが徐々に消えて、女神の姿がはっきりと見えてくる。相変わらずの美貌だが、その余裕のある微笑みが少しばかり腹立たしい。


「少しだけお時間をいただきまして、魂を引き止めさせていただきました。ご覧の通り、やえはやと様の魂を縛らせていただきました」


女神の横に、紐のようなものが現れた。天井から垂れ下がるそれに、亀甲縛りで拘束された魂がぶら下がっている。


「せめて、箱か何かに閉じ込めてくれよ。それにしても、その縛り方、どこで覚えたんだよ?」


「これはもっとも美しい縛り方ではないでしょうか?」


「違いますー!そんなの俺の趣味じゃありませんー!」


女神は少し考えるポーズを取る。だが、それさえも美しい。どういうことだよ、この完璧なビジュアル。


「お時間が迫っておりますので、簡潔に申し上げます。これは内緒ですが、これからはやと様には異世界で無双できるイベントをご用意しておりますので、お楽しみに。それでは、良い異世界ライフをお過ごしください」


魂は解放され、俺は再び意識が異世界に引き戻されていく。


―おきて。


―おきなさい。


―おきろ!


だんだんと声が強くなってくる。だが、まだ目覚めない。というか、何か柔らかいものに包まれているような心地よさが身体に広がり、このままずっとここにいたいという誘惑に駆られる。


ゴスッ!

突然、頭に何かが当たる音がした。さらにもう一度、ゴスッと響く。


痛みが広がり始める。俺は強く、起きたいと願った。意識が身体を揺さぶり、ようやく目が覚める。


ハッと目を開けると、クラリエの顔が、めちゃくちゃ近い。まさか、この状況は――


「ひ、膝枕だと……!!」

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