好みじゃなかったはずのイケメン神様となぜか結ばれることになりました
かぐら
???視点
プロローグ
ざあざあと雨がふってくる。
でもわたしは、どうくつの入り口でぎゅっとちぢこまった。
だって帰れないんだもん。
もう六つだ。どうしてここにおいていかれたのかなんて、知ってる。
村には食べ物がなくなった。大人も、子どももおなかをすかせてた。
だから、モンスターが出るっていう、ダンジョンの前においてかれた。
わたしは生まれたときから目が見えないから、はたらけない。ごくつぶしだ、って村のだれかが言ってたから。
ここにおいていったのは村の人。
お父さんとあたらしいお母さんは、おうちでわかれた。まだちっちゃい弟がいるから。
…モンスターに食べられちゃうのかな。いたいのかな。こわい。
そんなとき、大きいかみなりの音がなった。ドカン!とかそんなの。
近くにおちたのかな。すごい音だった。
「おい」
「ひっ」
近づいてくる音もなかったのに声をかけられたからびっくりした。
でもなんだろう、ふしぎな感じがする。
「…なんだ?お前、目が見えねェのか。手さわんぞ」
左手をだれかにやさしくつかんで、そっとどこかに持っていく。さわったのは、人のはだ。
…あったかい。いつのまにか、右手もそっちにもっていって、その人の顔をさわる。
さわったかんじ、おにいさんぐらいの年かな?おじさんとか、そういうかんじじゃなさそう。
「…冷てェな。どんだけここにいたんだ」
「…わかんない」
「なんでここにいる?危ねェぞ」
「おいてかれた」
「あ?」
低くてこわい声にびっくりすると、その人は「…悪ィ」と小さくつぶやいた。
「お前に怒ってるわけじゃねェよ。…なんで置いてかれたか、分かるか」
「ごくつぶしだって」
…あ。ほっぺたのとこがピクピクしてる。
思わずそこをむにむにしてると、大きなため息が聞こえた。
「……んじゃ、お前、俺んとこ来るか?」
「おにいさんのところ?」
「そ。ちょうど俺の世話をしてくれるやつを探してたんだよ。キャーキャーうるせー奴しか来ねェからうっせェのなんのって…その点、お前ならちょうどいい」
「でもわたし、見えないよ?」
「んなもん、どうとでもなる。で、どうする?」
…いいのかな。いいのかな。行っても、いいのかな。
さわっているおにいさんの顔がわらったようにうごいた。
「……行く」
「よっしゃ!じゃあ帰るか」
ぶわ、と足がういた。
それと同時に、ぎゅっとだっこされた。どこをつかめばいいんだろう。
そう思ってたら、おにいさんがわたしの手を引っぱって、つかんでいいところをおしえてくれた。
…あ、そうだ。わたし、おにいさんに名前おしえてない。
「おにいさん、わたしの名前はね、」
「捨てろ」
「え?」
「お前を捨てた親がつけた名なんて、捨てろ」
「…そうなると、名前なくなっちゃう」
「俺がつけてやる。考えといてやるから、今は寝とけ」
「……うん」
おにいさんはあったかい。
びゅうびゅう、ざあざあと音がきこえるのに、わたしにはそれらが当たらない。
どうやってるのかな。おにいさん、まほうが使えるのかな。
すぐ近くでゴロゴロとかみなりがなる音もきこえるけど、おにいさんがいるからこわくない。
あったかくて、ゆらゆらするからねむくなってきた。
目をあけてもとじてもまっくらだけど、あったかい。
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