親の再婚相手の娘が俺のVママだった。

赤城ハル

1章

 プロローグ

「みんなー、こんばんわー。虎王子ゼンだよ」


 スクリーンに赤髪の生意気そうな少年が手を振る。


 これが俺のガワで名前は虎王子ゼン。


『こんばんわー』

『やっほー』

『今日も元気だね』


 コメント欄に挨拶が流れる。


「今日はスロッチのハリオカートで新コースが追加されたんだって。で、今日は新コースをプレイするぞ」


 ハリオカートは俺が生まれる前からあるゲームで、人気ゲームシリーズ『ハリオ』のキャラを使って遊ぶカートゲーム。


 普通のカートゲームと違い、コース内にアイテムボックスがあり、そこからアイテムを手に入れて、スピードが上がったり、相手を妨害したりして一気に優位に立つことが出来る。


 それゆえに下手な子でも大逆転が可能で幅広い層に愛された。そしてそれは日本のみならず海を越えて世界中で大ヒットした。


『新コース楽しみだね〜』

『別ハードからのコースもあるよね』


 別ハードというのはスロッチの前の据え置きハード機のこと。今回の追加コースに前の据え置きハード機の時に発売されたハリカーのコースが含まれている。


 俺は『みんなであそぶ』を選択し、次の画面で『コード』を選択。


「一人二回だからね」


 と言って、俺は13桁のコードを画面上部に貼り付ける。


 一人二回とは俺こと虎王子ゼンと2コース遊んだら退室するということ。


 俺はキャラとカートを選択して次に進む。

 そして対戦相手が集められる。

 12名が選ばれるとコース選択画面に移動。


「僕は新コースのキャラメルポプラを選ぶね。出来れば皆も新コースから選んでね」


 ちなみにVtuberでは僕っ子で通している。


 コースを選ぶと集合場所に移動。

 そこではプレイヤーが選んだコースが表示されている。


「ちょっと! 誰だよ! クリスタルやケロキューコースを選んでるのは!」


『クリスタルもケロキューも新コースだよ』

『別ハードのコースだけどスロッチ用に追加されたんだよ』

『間違ってはないよ?』


「分かってる! 分かってるけど……むずいじゃん」


 虎王子ゼンがムスっとする。


『ゼンちゃんのために簡単のを選んであげなきゃあ』

『拗ねました。接待です』

『いや、ここしっかりと社会の厳しさを教えてあげなくては』


 そしてプレイヤー全員が集まり、全員が選んだコースから自動で一つ選択される。


「頼む! クリスタルやケロキューは選ばれるな! …………よし! キャラメルポプラだ!」


 俺ではないが別のプレイヤーが選択したキャラメルポプラが選ばれた。


 コースへと移動し、スタートのカウントが始まる。


「3……2……1……スタート!」


 俺は見事スタートダッシュを決めて、先頭集団入りする。


 だが、その後が最悪だった。ロケットで爆撃されたり、お邪魔アイテムでスピンされたりして後続にまで落とされた。


 俺は急いでコース内のアイテムボックスにぶつかる。


「こい! ミサイル!」


 しかし、


「3連ボムかーい!」


 ボム。つまり爆弾。

 爆弾を投げて相手を吹き飛ばすアイテム。

 ロケットとの違いはというとボムは投げて一人のみならず周囲を巻き込んで吹き飛ばすというもの。


 だけど当てるのが難しい。


「あーもー、皆と距離があるから届かなーい!」


『もう後ろに投げるしかないね』

『3連追尾ロケットならチャンスはあった』

『ゴール間近でそれはきついね』


 しかも後続がミサイル化して自分を抜いていく。


 ミサイルは自身がミサイルになってハイスピードで低空飛行するのだ。しかもお邪魔アイテムを一切受け付けない状態。つまり完全無敵モード。


「いーやー!」


 結局10位で終わった。


「気を取り直して次行くよ!」


 コース選択画面に移り、


「だから、なんで、クリスタルやケロキューを選ぶんだよ! しかも増えてる!」


 前は数人程度だったのに今では俺以外全員がクリスタルかケロキューを選んでる。


「ああ!? 選ばれた!? ケロキューが選ばれたじゃねえかよ!」

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