詳細究明
「そうか、では本日はよろしく頼む」
「はっ」
「そう堅苦しくなるな。もっとラフな感じで良い」
「か、かしこまりました……」
「では、詳しい事は其方らの後ろにいるヴルーケから聞いてくれたまえ。下がれ」
「「「「「はいっ!」」」」」
そうしてヴィリットさん達が俺らの方へと歩いて来る。
「ん……? あぁっ!」
おっ、あの反応的にヴィリットさんも俺を見つけてくれた様だ。
周りにバレない様に俺に手を振っているし。
「それではこれより皆さんには、東の方にあるダンジョンに潜って頂きます。同行するのは、私、ヴルーケ・アーガスと、聖騎士団の副団長であるアリス・ローヴェルチさん。そして、今年の闘技力祭優勝者の、ルイド・アッカーサーさんとその仲間であるエリシア・ローゼリッタさんとラルム・レンスさんの合計五名です」
「分かりました。その方達を護衛しつつ、目的地へと向かうという感じでよろしぃでしょうか?」
「その様な認識で大丈夫です。では、早速参りましょう」
「「「「「はい!」」」」」
そして俺達は、闘技場に爆弾を持ち運ぶ為に利用されたダンジョンへと足を運んだ。
「ここからぁ、足場が悪ぅなってるんで、注意してくだせぇ」
ランタンに灯りを灯しながらヴィリットさんがそう言う。
「分かりました!」
確かに、注意してないと転んでしまうなこれは……。
あっ、ラルムは大丈夫か!?
「……はふへへ……」
「ラ、ラルムー!」
振り返ると、ラルムは地面の丁度良い感じの隙間に何故か逆さまの状態でハマっていた。
急いで引っこ抜き、怪我がない事を確認にてホッと一息吐く。
「あ、ありがとうございますルイド様……」
「うん。怪我が無くて良かったよ。ここからはより一層注意して進もう」
「はい!」
ラルムを立たせて、ヴィリットさんの元へと戻る。
「なはは……んな転び方しちょる人初めて見ましたわ」
「いやー、俺も時々そう思います」
「はうっ」
いやラルムよ、ダメージを受けている様だが事実だからな?
「そいじゃ、奥に進みましょか」
ヴィリットさんのそつ掛け声を出した後に、俺らは更に奥へと向かって行った。
そして――
「ここ……はずですぁ」
闘技場の真下、犯人が爆弾を持ち込んだ場所まで辿り着いたのだった。
「……あれ? どこにも通路は見当たりませんよ?」
天井のどこを見渡しても、闘技場へと続く道は無い。
おかしい……ウィーラーチ様の考えが間違っていたのだろうか?
「いやいやルイドはん。ダンジョンにゃあ自己修復機能があるんですわ。ほんで期間的にも、丁度埋まるくらい何で、なぁんもおかしな事あらへんのですわ」
「あっ、そうだったんですね……」
ダンジョンには自己修復機能がある……確かによく考えてみればそうだ。
モンスターとかがダンジョンの壁を壊しても直ってるし、俺らが壊しても直ってるし……何というか、それが当たり前な感じだったから気付かなかった。
「取り敢えず、ここら辺に犯人がいた痕跡が無いか調べてみましょ」
「よーし作業開始だ! 全員調査道具を用いて犯人の手掛かりを探してくれ!」
ヴルーケさんがそう言い、ダンジョン内での調査が始まった。
だが、やはりダンジョン内。モンスターが来るわ来るわ。
だが……
「そっち行ったぞ!」
「はぁっ!」
「ナイス!」
それを、ヴィリットさん達がパパッと倒してくれる。
へぇー……ヴィリットさん……強かったんだな……。
まあ、こう言うのも何だけど、見た目から強そうだったしね……。
「ルイド様の方がお強いですよ」
すると、エリシアが俺の心を見透かした様にそう言った。
「あれ? 何で分かったの?」
「ルイド様は心の中身が顔に出やすいです」
「マジ?」
知らなかった……俺顔に出やすいタイプだったのか……。
「じゃ、じゃあ今俺は何を考えてる?」
「……クレープですね?」
「エリシア、君はもうこれからエスパーを名乗った方が良いと思う」
何で分かるんだ……てか、クレープを考えてる顔って何?
どんな顔してたの俺?
「こらこら、口じゃなくて手を動かせ手を」
「「あっ、すみません」」
「全く…………クレープ、好きなのか?」
話乗ってくれるんだ……。
「まあ、そうですね。エリシアと食べたクレープの味は忘れられません」
「〜〜っ」
エリシアの頰が赤く染まる。
「はっはっは! エリシア君、素晴らしい人に好かれたね!」
「は……はは……」
「むぅ〜……」
その会話を聞いていたラルムは頰膨らませつつ
「ルイド様! 今度私ともクレープ食べて下さい!」
「え? 別に良いけど……どうして突然?」
「ルイドよ、君は乙女心が分かっていないな……」
「?」
やっぱり、乙女心って難しい。
◾️ ◾️ ◾️
その後、調査を終えた俺達は、様々な情報を共有し合っていた。
で、その情報をまとめると、まず、ここに立ち入ったと思われる犯人の人数は一人。そう、つまり爆弾を持ち運んだ人はもう既に自爆してこの世にいない。
そして、持ち込まれた爆弾の数はおよそ6個。
どれもかなりの威力を誇る爆弾だったらしい。
そして天井を掘るのに使われた道具……だが、これに関しては道具では無く、恐らく魔法だそうだ。
証拠に魔法痕が色々な箇所に残っているらしい。
因みにだが、犯人はもう死んでしまったが恐らく犯人に指示を出した組織があるだろうという事で、まだ調査自体は行われる様だ。
「それでは、本日はこれにて解散とする!」
ダンジョンから出た所でヴルーケさんがそう言った。
「よし、それじゃあ俺らは帰ります。アリスさん」
「うむ、気を付けて帰りたまえ」
「では、さよならー」
「「さようならー」」
「ああ、またな」
そうして俺らは、宿に帰った。
「……」
そして夜。
俺は中々寝付けないでいた。
「……なーんか、引っ掛かるんだよなぁー……」
爆弾……魔法痕……ダンジョン……。
うーん……引っ掛かるのによく分からないや……。
「スゥー……スゥー……」
「むにゃぁ……」
チラリ、と俺は横で寝ているエリシア達を見た。
「……まあ、エリシア達がこうやって安心して寝れるのなら、何でも良いか」
そう言って俺は、目を閉じるのであった。
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