第18話 入団試験

 はい、皆さんおはようございます。

 神崎廉です。って、誰に言ってんだろうな。

 まあ、何だかんだあってSSS入団試験を受けることになった。

 いや、意味わからん。

 とりあえず試験が終わったら絶対に奏華をボコす。これは確定事項。

 と、そんなことを考えていると、対戦相手が来た様だ。

 ん?今どこにいるのかって?試験会場だよ!

 SSS入団試験は、現役のSSS団員と手合わせして、手合わせした団員が入団させるかどうかを決めるらしい。

 で、俺の対戦相手。なんと……。


「よ、紅羽」

「昨日ぶりですね。先輩」


 なんと、日本最強の異能力者、江禅紅羽だ。

 うん、終わった。死ぬわ。

 ふと観察席に座っている月詠を見る。なんか目をキラキラさせていた。

 おい、ふざけんなよ!てめえ、面白い患者が増えるとか思ってるんだろ!

 そんな様子を見て紅羽は苦笑い。


「私が相手なのに余裕そうですね……」

「ん?そうか?……まあ、そう見えるんだったら俺はヤバいのかもな」


 戦鬪狂みたいな感じで嫌だわ。

「『私はどんな廉でも受け入れるよ(ますよ)!』」


 クラーと雛は黙ってろ。

 良いセリフなのに言ってる人が残念すぎて間違ってるよ。


「まあ、とっとと始めますかね」

「そうだな。さっさと帰りたいし」

「それ、負ける宣言じゃないですよね……」

「そんなバカはいねえだろ」


 お互い戦鬪状態に入る。

 呼吸は静かで深く。目線は相手ただ1人のみに絞る。

 そして互いの集中力が頂点に達した瞬間、先手を打ったのは俺だった。


「『超高演算戦鬪ハーフオートシステム・紅瞳クラー』」

『受諾しました。これより、戦鬪モードに移行します』


 その声と同時に、俺は音をも置き去りにする超高速で紅羽に拳を振り抜いた。

 紅羽はまともに喰らって、吹っ飛びながらも壁に激突する直前に足で踏ん張って耐える。

 どうやらダメージはそこまでなさそうだ。

 だが、紅羽は俺を見て驚いている。


「どうした。紅羽」

「いや、なんというか、先輩の右目が赤く輝いてるんですけど……」


 そう、超高演算戦鬪ハーフオートシステム・紅瞳クラーは、俺の脳内にいるクラーが脳へ指示へ出して自動的に異能力を発動させるシステムだ。

 その影響で右目が赤くなるのだが、それはなんか格好いいからどうかしようと考えてない。


「こういう技だ。気にするな」


 ただまあ、これにもデメリットがある。

 それは、これを使用している間は、俺はクラーの選択したことに合わせて体を動かさなきゃいけないことだ。

 オートといっても、クラーが今行っていることは未来演算と異能発動だけだ。

 残りの全ては俺がやらなきゃいけない。

 つまりは、クラーとの連携が大事だ。

 フルオートならこうはならないが、その場合、俺の脳が持たない。

 そのため、ハーフオートが限界だ。


「じゃあ、次はこっちの番です!」


 紅羽がそう言い放った刹那、俺の周りの空気が一気に重くなる。

 紅羽が異能力を発動させる予兆だ。


「『コード:キャンセルソー』!」

「『雷霆獄ライトオブヘル』!」


 俺は何とか紅羽の異能力をキャンセルし、紅羽に一瞬の隙が生じる。

 クラーはそれを見逃さず、すぐさま距離の概念を操作し一気に距離を詰めた。

 俺は拳に衝撃の概念を付与しーー。


「『衝撃拳インパクトドライブ』!」


 再び紅羽の腹に叩き込んだ。

 紅羽は一気に後方へと吹っ飛ぶ。

 さっきは壁に激突しなかったが、今回は大きな音を立てて激突した。


「いやはや、消費するリソース量が半端じゃ無いな……」


 愚痴とばかりにこぼれ出す言葉。

 クラーの超演算のお陰でリソース消費が効率化されているが、それでこの消費量とは恐れ入る。

 持ってあと3分ってところだ。

 頼むからこのまま終わってくれと懇願していると、ふとピリッと自身の体に電気が走る。

 何だ?クラー、何が起きた?


『……』


 クラー?おい、返事をしてくれ!

 おかしい。クラーとの契約を感じない。

 これはー。


「あはははっ!良いですねえ!」


 その声が聞こえてきたと同時に、横腹に痛みが走る。

 あまりの痛さに、俺はその場に蹲った。


「げほっ、げほっ」

「ああ、先輩。この程度でダウンですか?そんなはずないですよね!」


 何とか顔を上げると、そこには先程殴り飛ばした紅羽が立っていた。

 紅羽の表情は、とても高揚している様に朱色に染まっている。

 とりあえず、概念操作で痛みを無くしてーー。


「っ!?」

「あ、やっと気づきました?」


 異能力が、発動しない!?

 驚きの表情を浮かべる俺に対して、紅羽はニヤリと笑っている。


「『第二次覚醒:阻害電波スタンウェイブ』。電気を張り巡らせた領域によって、私以外の異能力は使えなくなります」

「ぐっ……!」


 なるほど。日本最強だとは聞いていたが、ここまでとは……。

 何より、俺との相性が最悪だ。

 俺の強みは異能力による概念の物量の回避不可ゴリ押し戦法だ。

 だが、異能力が使えないんじゃ、俺は何も出来ない。

 紅羽は、俺を見て少し失望したかの様にため息を吐いた。


「ここまでですか……。まあ、私に対して善戦した方ではあります。このまま入団を許可しても良い実力で……」


 刹那、紅羽は何かに押しつぶされそうな様子を見せた。

 そう。俺だけじゃ、勝ち目は無いんだ。


「なあ、クラー?」

『全く。人使いの荒いご主人様ですね』

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