冬のプリン
アマノヤワラ
お前は この話を読み終わったとき 「ずっと何言うとんねん」…という
昨日(2023/11/25)。
私は約十年ぶりに“プリン”を購入した。
買ってきたプリンをお皿の上にプッチンした時。
私は率直に、こう思った。
「……アレ? なんか、“ちっちゃく”なってない?」
私は、自分の手のなかにあるプリンが入っていた“
……やっぱり、プラ容器自体の大きさも以前と比較して『すこし小さい』気がする。
今一度。
私は、テーブル上に置かれた皿の上にプッチンしたプリンを“横から”観察してみた。
『ゴゴゴ…』という効果音が入りそうなほど、テーブル上のプリンを間近から凝視する私。
そして──
「
プラ容器に入っている状態のプリンは目測で高さ“約3センチ”。そして、お皿の上にプッチンした状態のプリンは目測で高さ“約2センチ”。
つまり、このプリンはお皿の上にプッチンしただけで、目測で『約1センチ』もの高さの違いが出ていることになる。
私のスタンド、“ザ・スキャン”の能力をもってすれば、これくらいの計算は造作もない。
私は再度、重力に負けて“ぺたーん”となっている平たいプリンをしげしげと眺めてみた。
「……つまりは、こういうことか?
“このプリンは、プッチンした時点で、目測で高さが『約1センチ』目減りする”……」
戦慄すべき事態である。
プリンというものは、プルプルしつつも、その一方で『しっかりとしたプリンの形』を保っていなければならない。
しかし、目の前の“プリン”は、ともすればそのまま崩れそうなほどに“ぺたーん”としている。
大人になった私が『プリン戦線』から離れていた間に、このようなことにまでなってしまっていたとは……。
そしてプリン側も
「……あなた『
と言っている気がする。覚悟はない。
しばし睨み合う、私とプリン。
絶対前よりも小さくなってると思う。プリン。
なんかプッチンした状態が『平たい』し、全体的に『色も薄い』気がする。プリン。
◇
私が思うに、製造工程で『水分の量が増えている』感じがする。おそらく、『コスト削減』のために原料に『水』を増やした?
そう考えると、納得のいく『
私のスタンド、“ザ・スキャン”の能力によって丸裸にされつつある(かもしれない)プリンは、
「……『
…と、プルプル震えながらすでに臨戦態勢だ。
やつのスタンド、“ソフト&ウェット(柔らかくて、そして濡れている)”の
『ゴゴゴ…』の中で、一触即発状態になる私とプリン。
──ちなみに、本作における『スタンド現象』及び『プリンのセリフ』は、
この現象のことを『
……誰にだって、趣味はあるでしょう?
これが私の趣味なのだ。
◇
──しかし、私が思うにこれは『プリン業者』の状況の変化なのではなかろうか?
つまり、“社会の
このご時世である。
プリン一つ作るにも多大な『コスト』がかかるだろう。
働く人の数が年々減っている昨今、一番コストがかかる“人件費”はうなぎ登りだ。世界情勢の変化によって“原料費”も勿論うなぎ登り。
工場のランニングコストは言うに及ばず、それを維持するために必要な“メンテナンス費”だって、莫大な『
『コスト』の問題は、今や人類一人ひとりが抱えている問題と呼んでも過言ではないだろう。
気の良い居酒屋さんは閉店しちゃったし、昔から通っていた古本屋さんも気付いた時にはすでに閉店していた。
みんな、『コスト』との闘いに疲弊したのだ。
みんな、つらいのだ。
この厳しい状況において、『私のプリンだけ』が目こぼしを許されるわけがないではないか。
むしろ、『まだプリンが食べられる』ということがプリン業者の企業努力の賜物なのかもしれない。
私は、自分の目の前で健気に『自分の
『ドドド…』という効果音を発しながらプリンは、
「『
…と言っている気がする。
プリンが私に対して示している姿。
液体と固体のギリギリの狭間で“持ち堪えようとする心”。“その
それこそが、“覚悟”。
プリンとしての『
──それを笑うことは、私にはできなかった。
◇
私は、“ザ・スキャン”を自ら解除した。
自分の意思による『スタンド能力の解除』は、スタンド使いにとって“戦闘継続の意思なし”を意味する。
キョトン…とした表情を浮かべるプリン。
私の突然のスタンド解除に戸惑っている様子である。
すでにプリンの射程距離に入ってしまっている私に対して、スタンドを展開したままのプリンは『
「……『
“ソフト&ウェット(柔らかくて、そして濡れている)”を展開し続けるプリンに対して、それだけを伝える私。
「!!」
…と、プリン。
見つめ合う、私とプリン。
やがてプリンも、己のスタンド“ソフト&ウェット(柔らかくて、そして濡れている)”を解除した。
(これは『感覚の目』を持つ者にしか分かるまい。)
しかし、相変わらず横半身の姿勢でプルプルと震えていた。『
しかし私とプリンの間には、先程までにはなかった爽やかな風が吹いていた。
少し早い“雪解けの季節”である。
◇
私とプリンの間の『
それは“食べる者と食べ物”。それのみである。
いつだって、シンプルがいい。
「“いつでも”いいぜ。……いつだって、覚悟はできてる」
…と、プリン。
「……“ありがとう”。“いただきます”」
…と、私。
“ありがとう”と、“いただきます”は、一方的に恵みを享受する者が示す『
プリンに向かって両の掌を合わせ、一礼する私。
本気の『
本気の“いただきます”。
私は、少しだけ緊張感を保ちながらプルプル震えるプリンを慎重にスプーンで
するん、と私の口の中に滑り込むプリン。
「おいしい……」
私の口から、思わず言葉が漏れた。
プリンからの返事はなかった。
たとえ世の中が変わろうとも、“プリンのおいしさ”は変わらなかった。
それもまた、何処かの誰かの『
そのことを深く噛み締めながら、私はゆっくりと舌先で咀嚼し、そしてプリンを飲み込んだ。
プリンは、最後までおいしかった。
◇
知らない誰かが、知らない何処かで頑張っている。
だから私はプリンが食べられる。
そんなことは、スタンドを使うまでもなく分かっていることだ。
──いつからだろう?
いつから私達は、食べる物の『
自分以外の誰かが、頑張って“持ち堪えようとする心”や“
私は、応えるすべを持たない。
──ただ『2つ』だけ、私にも言える言葉がある。
「“ありがとう”。プリン」
そして、
「“ごちそうさまでした”。プリン業者さん」
≈≈≈
『冬のプリン〜《スキル》進化論序説外伝〜』
…了
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