第13話14歳編⑦
気がつくと、カルマンは本殿内の客間のベッドに戻っていた。あれから5日間眠りっぱなしだったらしく、カルマンの腹部から5日分の空腹のサインが鳴り響く。
「一時はどうなる事かと思ったが、大丈夫なようだな。」
ヨハン達も安どの表情を浮かべ、共に食事を始める。
「嵐の中、本殿を飛び出した時はどないしようか思たわ。」
「えっ…?」
「覚えてないの?カルっち、あの時ご神体の前まで行って、嵐を止めたんだよ?」
「覚えてねぇ…」
「でも、勇者様には感謝してます。あなたのお陰で、姉上は再び修行に打ち込めたのですから。」
モネの言葉に、カルマンはちょっと照れ臭そうな顔をする。
食事が終わると、カルマン達は本殿を出て、ご神体の前にやって来る。そこにはセレーネと集落の長が立っていた。
「やっとお目覚めですね、勇者様。」
そう話す
「本日でこの集落を離れていただきますが、勇者様の今後のご活躍をお祈りいたします。」
長の言葉にカルマンは思わずハッとして、ヨハンの方を振り向く。
「ヨハン!グレイさんと合流できんのか?」
「いや…その事なんだが…」
幼馴染の問いかけに、ヨハンはバツが悪そうな表情をする。
「もしかして…モネ…さん?」
カルマンはモネの方を振り向くが、モネはまるで「私ではありません」と言っているかの如く、首を横に振る。そして、ジュリアの方もまるで半分悔しそうな表情で顔全体を真っ赤に染める。
「セレーネが一人前の巫女になるには、勇者ガレット…あなたのお力がどうしても必要なのです。あなたにとっては、納得のいかない結果とはなってしまいましたが、これはあなたの未来を見通した上での結果なのです。どうかご理解いただけないでしょうか?」
カルマンの前に
「ま、まぁ…集落の長であるシュゼット様がそう言うのなら、仕方ねぇよな!」
あっけらかんとした答え方をするカルマンではあるが、嵐の夜にセレーネに何をしたのかまったく理解できていなかったのだった。
「それから、セレーネ…勇者様のご迷惑とならぬよう、コレを持ってお行きなさい。」
集落の長は、セレーネにバラの紋章がついた黄金のネックレスを首にかける。
「あなたはまだ完全に「巫女ノエル」となったワケではありません。あなたが巫女として覚醒し、運命の人に真名を託せるようになったその時、そのアミュレットを運命の人に託しなさい。」
「…はい、お母様…」
セレーネはそう言いながら集落の長に顔を向けた。その表情は、まさしく勇者と一緒に旅をする事を認められた事による嬉しさに満ちている。
「さぁ、勇者様御一行の門出です!盛大に見送りましょう!!!」
集落の長の鶴の一声で、カルマン達は巫女達の黄色い声援を浴びながら集落の門を潜り抜ける。
「んで…俺、ホントに何で嵐を止めたんだよ?」
「知らぬが仏!」
少々怒り気味の魔法使いの少女の言葉にモヤモヤしつつも、カルマンは僧侶のヨハン、魔法使いのジュリア、精霊のヘーゼル、巫女のセレーネと共に次の街へと旅に出たのであった。
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