4章 2024/5~

第45話 ウルプロ育成配信・最終

 5月ともなると大きなイベントはGWだろう。国民が一斉に休みになる上に、その休みの日も多い。旅行や帰省する人も多いだろう。


 俺はそんなことせず、いつも通りでもなく特殊な配信をする予定だ。


 その配信は夜。午前中はお決まりとなっている『ウルプロ』の配信だ。今は最後の1人の羽村さんの育成をしている。歴代最強キャッチャーの呼び声高い現役メジャーリーガーで実際能力値はべらぼうに高く、去年はメジャー初挑戦だというのに本塁打王争いをしていたくらいだ。


 その能力の高さと特殊能力の多さで試合は圧勝。オートなのにめちゃくちゃ打ってくれるからよっぽど投手が崩れないと勝てるんだけど、『司令塔』というキャッチャーとしての能力が極端に上がるという金特殊能力を持っているために投手の能力も強化されてほとんど打たれない。


 そんな羽村さん育成も、最後の夏の大会まで来た。やれることももう少ないので実質雑談配信と言えるだろう。


「今月の予定を発表しようか。今日の夜からFORでポケクリの最新作をやります。早速やっている先輩方もいますけど、まだ配信してますね……」


『今作オープンワールドだからね。やれることが無限にある』

『めちゃくちゃマップが広いのよ。だから移動と捕獲とバトルをやってたら秒で時間が溶ける』

『FORでクリア耐久だっけ?クリアって殿堂入り?』


「そうだね。一応ゲームのクリアだけど、だいたいの場合は殿堂入りがクリアだよね?だからそこまでを想定してるよ」


 細かい説明は夜になったら水瀬さんからするだろう。今回の企画は水瀬さんの持ち込みなんだから。


 クリア耐久とは言うものの、睡眠も食事もしっかりと取る。3徹なんて許しはしない。いくら若いからってそんな無茶はダメだ。


 水瀬さんも企画を出した段階で1徹ならまだしも3徹はちょっと、と事務所からダメ出しが出たらしい。無茶をしそうだから水瀬さんは霜月さんの家で配信をしてストッパーとしてお守りをさせられるわけだ。


『リリってポケクリやったことあんの?』


「やったことありますよ。3DLのやつと、ポケットコロシアムの1と2」


『ポケコロあんの⁉︎主人公が悪の組織という異色作!』

『アレ、現行機でできるようにならねえかな』

『ダーククリーチャーとか、設定的にも面白かったんだよな』


「僕のポケクリの最初ってポケットコロシアムですからね。それかカードかな?どっちが早かっただろ?」


『結構珍しい入り方してんな』


 これは他のライバーさんにも言われた。アニメとかゲームから入るならまだしも、カードか外伝作品が最初は珍しいとか。


 アニメはあんまり見てなかったんだよな。どちらかって言うと特撮とかそっち系の実写ばかり見てた。あとポケクリじゃなくてデジタルアドベンチャーというキッズアニメの方を見ていた。


 特撮の前だったからそっちばかり見てた気がする。


 アレのカードも買ってもらったなあ。俺が子供の頃って本当に有名なカードゲームの黎明期だったからルールとかも整備されてなくて無茶苦茶だった。


『最初に3匹選ぶじゃん?あれってもう話してるの?』


「ああ、決めてありますよ。炎タイプが僕で草タイプが水瀬さん、水タイプが霜月さんって話し合いで決めたよ。好きなタイプを挙げていったんだけど、誰も被らなかったね」


『揉めないなら良いな』

『今絶賛SNSだと進化した姿で阿鼻叫喚になってるから笑うわ』

『やっぱネット断たないとネタバレ食らうから、自分で見るか誰かの配信で確認するかぁ』


 ポケクリはクリーチャーのレベルが上がると進化して姿が変わるんだけど、今作だと進化先が一番気にされているのは最初に渡されるポケモンの草タイプだ。最初に渡されるポケクリは御三家とも呼ばれて一番長く旅する相棒なので進化してどう変化するのかが重要になってくる。


 強さもそうなんだけど、カッコいいか可愛く進化しないとモチベーションが保てないというわけだ。俺もビジュアルは気にしてしまう。よっぽど変じゃなければ受け入れると思うけど。


「お、勝った」


『地区大会決勝くらいならもう余裕で勝てるようになってるな』

『羽村が打ちすぎやねん。5打数4安打2本塁打って何?』

『育成が安定してる証拠だろ。この育成配信で最後の夏に甲子園に出なかったことないからな』

『マジ?俺変な乱数引くのかたまに負けるけど』

『負ける時は全然打てないんだけど、リリの場合は転生がことごとく打つのとちゃんと選手のやる気を上げるアイテムを使ってるから』


 プレイしている『ウルプロ』で夏の地区予選を優勝していた。これで合宿に行けて特殊能力をたくさん付けられる。


 よっぽど酷い乱数に巻き込まれなければ勝てるのは慣れだろう。ほとんどノーヒットということにならなければ負けない。


 今のチームは羽村さんがひたすら強いからチームも順調に勝ち上がって、チームの能力がかなり上がっている。ステータスがかなり高いから予選では負けなかった。いつぞやの宮下さん育成の1年目のように最高評価が4連続という再現性のなかったくじ運を発揮しなければこんなものだ。


 本当にあの乱数は何だったんだろうか。よく1年目で勝てたなと今でも思う。


 ポケクリの話も続けつつ、合宿に向かう途中でレアイベントのインタビューを引いた。これはインタビューの回答によって選手にランダムで良い特殊能力が付くというイベント。


 これは育成配信だから、羽村さんファーストだ。


『インタビューキチャー!』

『シンプルに打撃か?守備は微妙だし、投手じゃ羽村が育てられない』


「ここは走塁を選びたいと思います。実は羽村さんの打撃能力ってインタビューで貰えるものをもう全部覚えちゃってるんですよね」


『ええ、マジィ?』

『能力値ばっか気にしてたけど、そういや最初から特能お化けだから良い能力は結構持ってたか』

『特訓とかで現れたら優先して選んでたし、めっちゃ強くなってるから打撃能力はもう良いのか』

『被りも多そうだしな』


 このイベントになってしまった時点で選手たちの能力を確認できないが、羽村さんの能力は把握している。これ以上強化するなら走塁関連の特殊能力しかないだろう。守備能力も高いので付けるとしたら走塁関連しかない。


 選択した結果、羽村さんに『撹乱』と『盗塁◎』が付いた。『撹乱』はランナーとして出ると相手投手のコントロールを下げることができる。『盗塁◎』は盗塁の成功率がかなり上がるというもの。


 そもそも出塁率が高い羽村さんに付くにはかなり良い能力だ。羽村さんの走力は今やAになっているのでまた羽村さんが強くなった。本人の走塁能力は高いんだけど、『ウルプロ』では普通に設定されている。


 日本でプレイしている時にトリプルスリーを達成しているので盗塁の能力も高いのだが、そこも強くしちゃうと宮下さんと一緒でとにかく強いので羽村さんしか使わなくていいとなってしまう。あと、育てる楽しみが減ってしまうこともあって能力は抑えられている。


『おおー、2つも!』

『これは真・羽村』

『先月の結果が打率0.364、本塁打8、打点27、盗塁7というやべえ結果を残しているキャッチャー。キャッチャーの成績か?これ』

『キャッチャーなんて負担が大きいから打率とか低くても良いってされているのに。これは英雄』

『中学から相手には絶対打ってくる悪魔と呼ばれていた模様』

『それは宮下も変わらん模様。あの2人の高校の戦績はマジでぶっ飛んでるぞ』


 インタビューイベントの後は合宿をこなして更にチームを強化して、最後の大会である夏の甲子園に挑む。甲子園になっても試合を見ていることが多いので雑談は続ける。


『バージョンは2つあるけど、どっち買ったの?』


「僕はグレープを買いました。他の2人はオレンジを買うみたいです」


『リリが1人か。これ、交換要員として大変になるぞ』

『ポケクリ定番のバージョン違いで手に入るクリーチャーが違うやつ』

『2人にあげるように余分に捕まえるの?』


「捕まえる予定ですよ。そのためのバージョン違いですし」


 ポケクリは同時発売のバージョンで捕まえられるクリーチャーが違う。バージョン違い商法と呼ばれるものだ。だから全部のクリーチャーを集めるには2つのソフトが必要になるという何ともな売り方である。


 昔とは違って交換が簡単になったからまだ集めやすくなったが、それでも全部集めるには2つのソフトがいる。図鑑を埋めるのは知り合いに別のソフトがあった方がいい。2人が頼りやすいのは俺だと思うので別のソフトを買った。


『新人さんのことは?どれだけ絡み合った?』


「全体チャットには加入してるから、そこで会話したくらいですね。顔合わせはしてないです。SNSの開設ももうちょっとしてからみたいなのでもうちょっと待ってくださいね」


『男女どっちって聞いていいの?』


「えーっと、公開していい情報を確認しますね。……女性2人です。年齢とかは初配信かSNSでの情報を待ってください。名前とかもまだ公表しちゃダメらしいのでこれ以上の開示情報はないですね」


『少ないな』

『リリたちの時もそんなもんだったし』

『リリはなぁ。最初期は本当に表が炎上してたのに便乗されて燃えてたからなあ』


 初期は本当に大変だった。アレももう3ヶ月前になるのか。大変だったのは最初と霜月さん周りの問題が面倒だったけど、それも終わってしまえばもう過去のことだ。


 羽村さんの育成も無事終了。


 夏の甲子園が終わった瞬間、もう育成する対象がいないので秋大会は負けてほぼスキップして羽村さんの卒業まで飛ばす。飛ばしても1時間半はかかるのが難点だ。


 U-18の成長もあって最終的に羽村さんは金特殊能力は4つ、それ以外にも能力が上がり、最終ステータスは全部Sに乗った。最高野手として星もカンストして最強キャッチャーの爆誕だ。


 羽村さんもチームに入れて今回のオリンピックメンバーは完成だ。オーダーを組んでいって宮下さんと羽村さんのバッテリーを見て、ステータスの暴力を見て笑ってしまう。


「うーん、強い」


『お疲れさん』

『つっよ』

『現役のメンバーと比較してえわ』


「それ良いですね。現役の選手とこのチームで対戦もしてみますか。ポケクリが終わったら夜配信でやってみます」


『おおー!』

『バッテリーは確実にこっちの方が強いんだよな』


「じゃあ、今日はこれで配信を終わりにします。夜の18時からポケクリの配信をするのでお楽しみに」


 なんだかんだで5時間も配信をしてた。この後昼食を食べて、仮眠を摂って夜配信に備える。朝方まで配信をするかもしれないので寝れる時に寝た方がいい。


 栄養ドリンクとかを買いに行くついでに外食をして、それで寝よう。

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