ひとくち怪談 ─カメラ編─

双町マチノスケ

第一話「ホームビデオ」

 私が小さい頃は、VHSビデオカメラというものがまだギリギリ現役と呼べる時代でしたので、それで何気ない日常やお祝い事など……いわゆる「ホームビデオ」というんでしょうか、そういうものを両親が撮っていたんです。この前実家の整理を手伝っていたら録画してたビデオテープが何本か出てきたんですよ。まぁ別に残しておく必要もないですが、このまま捨てるのもなんなので最後に見ようという流れになりました。それで懐かしみながら、家族みんなで見てたんです。内容は幼稚園や小学校で行事をしている光景だったり誕生日会をしている光景だったりと、何てことないものばかりだったのですが……











 一本だけ、変なのがあったんです。


 7歳くらいの私が家にいる映像なのですが、全く知らない女の子が映っているんです。当時の私と同い年くらいの、やけに青白い肌をした女の子。私は一人っ子ですし、当然両親も全く見覚えがない。




 ……この子がただ映ってたり覗き込んだりしているだけだったら、言い方は悪いですが「よくある心霊ビデオ」で済ませられたかもしれません。それ以上に不気味なのは私含めた家族全員が、その子と普通に会話していることなんです。まるで家族の一員として、ずっと暮らしているかのように。でも、誰も覚えていないんです。


 しかも話している内容も変なんです。

「■■ちゃん(音声が乱れていて聞き取れなかったのですが、多分その子の名前なのだと思います)とも今日でお別れだねぇ」とか。

「今までありがとうねぇ、これからはヒトだからね」とか。

「いいトコ着いて芽吹けるといいねぇ」とか。

 とにかく訳の分からないことを笑顔で言っているんです。そして、その子が家の玄関から出ていくのを見送ったところで映像は終わりました。




 私たちは、何と暮らしていたのでしょうか?


 何故あのビデオにだけ、映ったのでしょうか?


 そして見送ったあと、あの子はどうなったのでしょうか?


 何もかもが分からなくて、とにかく怖いんです。



 あぁ、あともう一つ怖いことがあって。






 そのビデオは視点が揺れたり動いたりしていて明らかに定点映像ではないのに、家族全員が映っているんです。


 ……つまりビデオを撮るためには家族の誰かがカメラを回さないといけないから、その映像は絶対に一人欠けているはずなんです。






 でも、私たち全員が映っているんです。
















 ──このビデオを撮ったの、誰?

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