転生執事の悪役令嬢コンサルタント~魔法×IT×経営学でお嬢様の破滅フラグをマネジメントしてみせます!~
灼霧ゴッカ
#0「白薔薇の花束 -結論-」
「ルテティア・ラ・マルセイユ公爵令嬢。この場を借りてキミに話がある」
絢爛な舞台に、凛とした青年の声が響く。
優美と風雅が織りなす華やかな社交場。満点の星空のように煌めく舞踏会で、ドレスに身を包んだ令嬢たちが、その声に振り返る。
ひときわ目を引く令嬢、ルテティア・ラ・マルセイユ公爵令嬢は、隣で表情をこわばらせた少女と、声の主を交互に見やった。
「いかが致しましたか、ルイ=フレデリック・ド・ヴァロア王子」
わざわざフルネームで呼ばれるとは、ただ事ではないのだろう。名を呼ばれたルテティアもまた、真っ直ぐに青年の瞳を見返していた。
──ここは、乙女ゲーム『花咲く月歌のセレナーデ』によく似た世界。
この卒業式は、ゲームのラストシーンをなぞる舞台だ。悪役令嬢ルテティアは、王子に糾弾され、断罪され、破滅フラグが──
「最初に言うが、キミに罪は無い」
──立たない。
そのために、俺がいるのだから。
改めましてご機嫌よう。俺はアルセーヌ・ド・ボナパルト。ルテティアお嬢様に仕える執事だ。
前世、日本ではITコンサルタントを目指すシステムエンジニアだったが、道半ばで命を落とし、この世界に転生してきた。
この世界でも、俺は誰かを支える生き方を選びたかった。だからこそ、悪役令嬢の執事として、彼女のコンサルタントとなり──破滅フラグをマネジメントしてきたのだ。
「ティア様……?」
「大丈夫よ、アイリ。心配しないで」
お嬢様の隣に立つ少女、アイリ──ゲームにおける主人公である彼女は、もはや虐げられるだけの存在ではない。今やルテティアお嬢様の味方として、王子のただならぬ雰囲気に緊張していた。
「ルテティア嬢、キミは──いや」
……ならば、なぜ?
ルテティアお嬢様はもはや悪役令嬢ではなく、清廉潔白な公爵令嬢。主人公とも良好な関係を築き、王子との誤解も解けたはずだ。公の場で糾弾されるようなことなど──
「キミの執事は、国家に謀反を起こす気は無いんだよね?」
……あれ?
「──えぇ、わたしも憂慮が絶えないのでございます、ルイ殿下」
そんな風に嘆息するルテティアお嬢様を、陰から窺っていたはずだったのに、視線が合ってしまった。
「王女殿下の死病を癒した手腕は、わたしも誇りに思います。けれど──聖女様に信頼され、魔女様に覚えめでたく、竜姫様までもが彼の招待に応じていらしているなんて」
人形のように整った顔立ちは、ジト目すら可憐に映える。澄んだソプラノボイスで紡がれる皮肉は、まるで聖歌のような清らかさを持ち……なんて、
「ねぇ、アル」
そんなの、現実逃避でしかないのだが。
「貴方がハーレムを作って、わたしを嫉妬させることが、“ティア様の幸せのために、いつでも、どこでも、なんでもする人”の仕事なのかしら?」
──誤解です、お嬢様……!
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