第4話 夜中の電話

真夜中の静まり返った部屋にスマホの着信音が鳴り響く。

湊はベッドのサイドテーブルに手を伸ばすと、相手を確認することなく電話に出た。

「湊!動画上がってる!」

悠二のその一言でベッドから飛び起きるとスマホのアプリをタップした。

何の前振りもなく、AMAZING GRACEを歌う声が流れ、頭の中がはっきりとしてくる。


「どうやって音とってんだよ。」


何度か撮り直しをしているのかもしれないが、最初から最後まで音を外さない。

前回聴いた時は確信が持てなかったが、今回一つだけわかったことがあった。


歌っているのは女だ。



「湊、いきなりどうしたの?」

湊とさきほどまで一緒にベッドで眠っていた恋人の香梨奈が、眠そうな声を発した。

「悪い。ちょっと」

動画を見ている湊を後ろから抱きしめるようにして、香梨奈がスマホを覗き込む。

「誰これ?」

「わからない」

「焼けるなぁ。夜中にこんな若い子の動画を夢中になって見てるなんて。」

「若い?」

「うん。多分、10代」

「嘘だろ?なんで?」

「え?だって、さっきこの子の手が映ったじゃない。あの手は、若いよ。皮膚科の先生を信じなさい。」

「まじか…香梨奈サンキュ!」

湊は香梨奈の頬にキスをした。

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