第11話-喜ぶべき第一歩
さて、お仕事の時間だ。
僕は玉座の前に跪くと、イングリスの国王にトラスダン王国の代表としての言葉を述べる。
「イングリスの賢王、フレデリアス・アクス・イグリスト殿、この度は貴国へお招き下さり誠にありがとうございます。王太子殿下のご結婚を心よりお祝い申し上げます。」
国王は僕を見下ろして口を開く。
「表を上げてくれ。」
そう言われて、そっと顔を上げる。
「トラスダン王国とは長きに渡り諍いを起こしてきたが、こうして貴殿の姿を拝見出来た事は、我が国にとって記念すべき第一歩だと思っている。トラスダン王国の第三王子と言えば大飢饉になり得る災害を未然に防いだ立役者だと聞いている。その時の話をぜひ、茶でも飲みながら聞かせてくれないかね。」
国王は優しく笑いそういった。
「勿論でございます。貴国の今後の冷夏対策としても有効かと思いますので。是非とも議論致しましょう。」
僕も、にこりと笑い、また深々と頭を下げた。
国王と話をする機会が滞在中にある。
これはかなり有意義な滞在になりそうだ。
ああ、冬じゃなかったら一ヶ月くらい滞在したかった。
俺は謁見を終えると、用意された部屋へ案内された。
「おかえりなさいませ。クリストファー様」
部屋に入ると専属執事のエドワード・ラングが丁寧にお辞儀をして迎えてくれる。エドは僕が乳飲子の頃からそばに居る執事だ。もう六十を過ぎたというのに、休めと言っても聞かない頑固な執事だ。
「ただいま。そっちは大丈夫だった?」
「ええ、とても親切にして頂きましたよ。」
「こちらも、国王から歓迎の言葉を頂けたよ。」
エドワードは嬉しげに微笑みながら僕の肩のマントを外してくれる。
「どうしたの?」
「いえ。坊ちゃんの言った通りでしたね。やはり坊ちゃんは素晴らしいお方です。」
誇らしげに言うエドワードに、僕は苦笑する。
「坊ちゃんはやめてくれる?トラブルになるような場所にエドを連れて行かないよ。長生きして貰わねば困る。」
そう言うと、エドワードはまたふふふと笑う。
「私はクリストファー様のお子様を見るまでは死にませんよ。」
「まだまだ大丈夫そうだな。」
僕は袖のボタンを外しながらクスリと笑った。
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