間章 プロローグ2
「ふわぁーあ」
と、あくびをもらした俺は、TVゲームのコントローラを床に投げ出し、電源を落とした。
(そろそろ寝るか……)
今日は久しぶりに、週末SOS団市内不思議探索があってひどく疲れている。無論、俺の財布の軽量化以外には、何の成果も上げる事はなかった。上げてもらっても困るけどな。
いっそアレは『ぶらりSOS団の我が街めぐり』とでも改名した方が潔くは無かろうか──などと愚にもつかぬことを考え、愚考の主原因たるアフターバーナー付ターボファンエンジン搭載の暴走女の顔を思い浮かべ、速攻で脳内から消去する。アイツの顔を思い出すと寝つきが悪くなるのでな。
そうして灯りを消す為に立ちあがったとき、
カチャリ
と部屋のドアが開く音がした。
妹か? そろそろこいつにはノックのマナーを教え込まねばなるまい。
「こら。もうお前は寝る時間だろ、それから入る時は……」
…………って、誰だこいつ。
入ってきたのは妹でも親でもなく、えらい、いやドえらい美人だった。
年の頃は20半ばか、前半か? 薄い形のよい唇の上に、スッと鼻筋の通った鼻。マスカラ要らずの驚くほど長い睫毛と、その奥のキラキラと光り瞬く大きな瞳。キッとあがった意志の強そうな細い眉。艶やかなセミロングの黒髪を無造作に後ろに流し、ピンクのルージュとアイラインを引いただけの、メイクとすらいえない薄化粧が、恐ろしいばかりにその美貌を引き立たせていた。
そして、その天下を睥睨する覇王のような傲岸不遜な笑み。
ああ、よく知ってるよ、その表情。俺の後ろの席に居るやつとそっくりだ。
ぞわり、と背筋をはいのぼる悪寒。
高校入学以来、はた迷惑なトンチキ騒ぎに、数多く巻き込まれてきた俺だったが…………これは最大級にやばい事態なのでは。
そいつはドアの前に仁王立ちし、ニヤニヤと笑いながら言った。
「グッドイブニング、キョン。やっぱ若いわねえ」
くそっ。
「あいつの姉ちゃん、じゃねえよな……」
「違うわよ」
やっぱりそうか。絶望とともに、精一杯のポーカーフェイスで俺は言った。
「お前、ハルヒか」
「そ! 未来から来たのよ」
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