元社畜、巨悪と対峙する

第29話 元社畜は見事に論破される

「ここには精密機械がありますので、ペットの持ち込みはご遠慮願うと先程言った筈ですが?」


 絶対零度の視線を叩きつけられて流石に僕も戸惑っています。


 ここは市役所の探索者窓口で7ヶ所をあれやこれやと回された挙句、また最初の窓口に辿り着いたところです。


 現在、探索者の窓口は市町村役場に委託されてて、手続きはその都度役場にやってこなければならない事になっています。


 なんせ各ダンジョン事務所は自分のダンジョンに係わる事以外はする権限が無いので、嫌でも市役所に来なければ手続きが進まない事になります。お稲荷ダンジョンみたいに民営の物があるせいでしょうかね?


 要するに、以前図書館ダンジョンで手続きの代行をするみたいな事を言っていたのは、口からの出まかせだったという事です。以前は本当にやってそうではありますが。


 ところで今怒られているのは、テイムしたグリフォンの登録をしようとして拒否られているだけの事ですよ(´;ω;`)。あっ、ダンジョンのが移ってしまいましたか・・・


 僕の探索者カードをチラッとみてテイマースキルが無いと見るや、僕が連れているグリフォンを、猫か何かに鳥の頭でも被せたとでも思われてしまったようで市中引き回したらいまわしの刑に処されているという訳ですよ、ええ。


「何度も言っていますようにこの娘グリフォンは、仮装している猫とかでは無くてですね」

「テイマーでも無いのにモンスターをテイムした?それもグリフォン?

 私がこれまで受け付けてきたテイムドモンスターは、スライムかゴブリン程度、一度だけコボルトがいましたがそれ以上のモンスターをテイム出来た実績など世界的に見てもです。

 卵から孵すテイムモドキでは、ワイバーンが記録された例がアメリカで1度だけありますがこれも本物かどうか・・・それにあれだとダンジョンの外どころか階層を移る事すらできないと定義されていますよね。

 貴方は、ここはダンジョンの第何層だと思ってます?・・・そうです、ダンジョンです!

 それに魔素がほとんど無いダンジョン外にグリフォンが生息できるのであれば、今頃地獄絵図が世界中で繰り広げられてるに違いないでしょ?

 現に、迷宮氾濫オーバーフローを経て野に放たれたモンスターで現在も生息が確認されているのも魔素が薄くても存在を維持できるスライム、ゴブリン、コボルト、ホーンラビット、後はせいぜいオークまで。

 グリフォンなんてありえないものを持ち込むなんて私たちを愚弄しているとしか思えません。伊達に国から委託されて業務を行っている訳では無いんです!

 尚も世迷い言を垂れ流すと言うのであれば警察を呼びますよ?」


 ちゃんと説明しているつもりなんですが聞く耳持たずで、逆に論破されてしまいそうです(´;ω;`)。


 どうやらダンジョンが約束した最新のステータスを確認する方法はまだ世間に伝授されている訳では無く、レベルの概念や称号による疑似スキルの付与みたいなものを誰も信じていないという事態が発生しているみたいですね。


 それもそうですね、あれからまだ1日しか経ってませんものねorz。


 ほとほと困り果てて自分のカードを見て公衆便所トイレダンジョンを出る時に確認したステータスと比較したくなります。



 氏名 雅楽 太智 《うたい ひろのり》

 生年月日 19XX年 6月 24日

 住所 XX県 XX市 XX町 XXーXX 保路井アパート202号

 血液型 A


 称号 初めての探索者、(始原の覇者)、(未知なるものに愛でられし者)、(強者を従えし者)


 (レベル 19)

      

 体力  12→(92)

 魔力   8→(56)

 

 筋力  10→(74)

 知力  11→(75)

 敏捷   9→(57)

 防御   7→(39)

 運    4→(20)


 スキル  なし→(視力強化lv.6)(テイムlv.3)(マッピングlv.1)(応援lv.1)(アイテムボックスlv.1)(風魔法lv.1)(料理lv.4)(掃除lv.6)(工作lv.3)(説得lv.5)(呪い耐性lv.6)

 職業   なし→(ポーター)

 加護   (ダンジョンの管理者)

 従魔   なし→(グリフォン1)



 ()で括っているのが今のステータスでそれ以外は探索者カードに記載されいるままのものです。


 レベルが18では無いのは、グリフォンがあの後も我慢できずにムシの魔石を狙って狩りをし続けてその経験値が僕に回ってきたせいです。つまりはグリフォンとはもう切っても切れない仲になってしまっているという事です。


 筋力知力共に常人の7倍越え、敏捷は6倍弱、防御は4倍弱、運は2倍になっているという事ですが、運が2倍ってどういう意味なのかピンときませんね。だって宝くじ買っても全然当たりませんよ?


 スキルに関しては多分称号一つにスキル一つが付与されてるみたいで、というのもこのとしまで眼鏡を使った事が無いのが僕の密かな自慢でして、もしそれが視力強化だったとしたら(それもレベル6)老眼鏡も要らない乱視も近眼も無縁だと言うのもうなずけると言うもの。なんせ40年前から『初めての探索者』やってますからきっと40年物のスキルだと思います。


 その次の『テイム』は『始原の覇者』で生えたスキルである事は明白ですね。すでにレベル3という事でグリフォンにどれだけ振り回されているか解るってものでしょ?


 『未知なるものに愛でられし者』で生えたスキルは、多分『マッピング』だと思います。だってダンジョンのお友達ですもの、ダンジョン攻略で便利なスキルをくれてもバチは当たらないと思いませんか?


 『強者を従えし者』で生えたスキルは・・・『応援』なんでしょうか?これに関しては何も意味が解りません。この称号自体グリフォンがいて初めて成り立つ称号なんですけどね。


 ついでに称号として『初めての踏破』は付いていませんでした。これでダンジョンを攻略せよと言う無形のプレッシャーから解き放たれてとっても嬉しいんですよ。


 そのせいかなぜか『アイテムボックス』が実装されていました!これは職業『ポーター』のせいでは無いかと・・・なんせ報告例が国内で2、3程度しかなかったはずですんで(ポーター専用の)とってもレアなスキルですよ。僕はいつからポーターになってたんでしょうか・・・30数年前の無理やりポーターをやらされた学生時代にもうなっていた?


 だとしたら、僕は30年以上スキルの存在に気付いてなかったという事になるんですね(´;ω;`)。


 その次の『風魔法』はグリフォンをテイム出来たからグリフォンに教える為にも生えたスキルなんでしょうか?今だったら魔力が56もありますからなんとか風魔法使いの真似でもできるようになるかもしれませんね。


 最後の方の『料理』『掃除』『工作』『説得』に関しては実生活から派生してきたんじゃないかなって思っています。一人暮らしが長くて自炊もしてれば掃除にしても家も会社も関係無いくらいやってましたし営繕と言うか補修と言うかそんな事やDIYみたいな事が好きだったり無能な上司のせいでヘソを曲げたクライアントを説得なんてしょっちゅうしてきてましたし・・・むなしい人生だなぁ(´;ω;`)。


 とにかく、ここを踏ん張らないとグリフォンが討伐対象にされちゃいます!

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