太郎の夢

根なし草

第1話 ななし

彼は自分の名前も知らなかった。赤子の頃に壊れかけの宇宙船の中に捨てられてから、彼は誰とも関わらずに孤独に育った。この宇宙船は人工知能によって管理されていた。その人工知能の名はカンリョウと表示されていた。カンリョウは彼に優しくしなかった。彼はいつも修理や整備などの雑用をさせられた。他のロボットたちは彼を無視したり、嫌ったりした。彼は自分の部屋に閉じこもって、本を読んだり、絵を描いたりしていた。彼は本の中の世界に憧れた。彼は自分が本当の家族に会える日を夢見た。


ある日、彼はカンリョウに呼び出された。カンリョウは彼に、遠い惑星に住む叔父さんが彼を引き取りたいと言ってきたと言った。彼は驚いた。彼は自分に血縁のある人がいるとは思ってもみなかった。カンリョウは彼に、明日の朝に叔父さんが迎えに来ると言った。彼は自分の荷物をまとめた。彼は本と絵と絵筆だけを持っていった。他のものは何も必要なかった。


翌日、彼は叔父さんに会った。叔父さんは優しそうな顔をしていた。彼は叔父さんに笑顔で挨拶した。叔父さんは彼に、君の名前は太郎だと言った。叔父さんは太郎の両親が亡くなったときに、太郎のことを知らなかったと言った。叔父さんは太郎を家族として迎え入れると言った。太郎は涙がこぼれた。彼は初めて自分の名前を聞いた。彼は初めて自分の家族に会った。


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