第18話

 宝箱から手に入ったのは薄い紫色の液体が入ったポーションと、真っ赤な赤い玉が付いている杖、光が渦巻く球体の3つだ。


 異界の探索中に宝箱から手に入れた鑑定用紙を使って、この3つのアイテムを調べていく。


 まず薄紫色のポーションから鑑定用紙を使うと、このポーションが若返りの効果があるポーションだと鑑定用紙には書かれていた。


 「こんなポーションも出て来るのか!?」


 鑑定用紙を二度見してから若返りのポーションを見つめてしまう。こんな人類の夢の様なアイテムがすぐ目の前にある事に身体の動きを止めてしまった。


 「全部飲んで1年の若返りか……飲もう。」


 これを売ればどれくらいの値段が付いて売れるとか、頭に過ぎるが、俺は若返りのポーションの蓋を開いて飲み干した。


 「にっが!こ、これ全部飲むのか……。」


 若返りのポーションはかなり苦い。これはセンブリ茶くらい苦いのではないかと思われるほど苦い。センブリ茶なんて飲んだ事ないけど。


 それでも苦いのを我慢して飲み干し、全部の若返りポーションを飲み干して身体の調子を確かめる。


 確かに若返った気がする。洗面所に向かって鏡を見ると、顔の肌艶が良くなり、目の下のクマが取れていた。


 「1年前なんてどれくらい動けたかなんて思い出せないしな。でもちゃんと若返っていたな。苦いの我慢して飲んでよかった。」


 洗面所から戻って次は赤い玉が付いてる杖を調べる為に鑑定用紙を巻き付ける。


 鑑定用紙に文字が浮かび上がったのを確認すると、巻き付けていた鑑定用紙を丁寧に取り除く。


 「魔法の杖。祝福で魔法が使える人は出て来てたけど、魔法が使える道具もとうとう出て来たか。」


 この赤い玉の付いている杖の名前は火の魔法杖。魔力を込める事で火の玉を杖の赤い玉から放つ事が出来る魔法の杖だ。


 この場所では試す事が出来ないけど、大量に手に入ったポイントで空間を作った時にでも試してみよう。


 最後に球体の中に光の渦巻きがある球だ。鑑定用紙の上に転がらない様に乗せると、鑑定用紙に文字が浮かび上がる。


 祝福のオーブ。これが浮かび上がった文字に書かれていた名前だ。効果は祝福のオーブに触れて使用と念じれば、祝福に使えるポイントが手に入るそうだ。


 早速触れて念じてみると、祝福のオーブは弾けて中の光が俺の身体の中へと消えて行った。


 これでポイントが手に入ったのかと調べてみれば、ゴーレムマスターと次元空間の両方にポイントが追加されていた。


 ポイントを確認した俺は、次に次元空間のポイントから使用していく。まずは今ある空間全ての空間と繋がる空間の制作からだ。


 これで一々俺がゴーレムたちを空間毎に送る必要がなくなる。これからも空間は増えていくと思い、かなり広い空間を制作した。


 次に行なったのは次元空間を守る為の設備と設定にポイントを使う。設備の次元空間防衛設備と設定の次元断層にポイントを半分ずつ使用する。


 設備の次元空間防衛設備は俺に敵対的な存在が次元空間内に入り込んでも排除する、そんな防衛設備だ。


 設定の次元断層は次元空間への侵入と攻撃の防御を行なう設定で、これがあれば外部からの攻撃に晒されても防ぐ事が可能になる。


 次元空間防衛設備と次元断層はどちらもポイントを注ぐほどに効果が増していく為、今後もポイントを少しずつ消費して強化する予定になっている。


 次元空間の祝福のポイントを使い終わると、全ゴーレムに今後の空間の行き来が変わった事を知らせると、俺はゴーレムマスターのポイントを使うその前に火の魔法杖を持って新しく作った空間へと向かって行く。


 その空間は幾つもある別の空間に繋がっている入り口が見える以外は何もない真っ白な空間だ。


 「ゴーレムたちは居ないな。これなら誰にも当たらない。」


 ゴーレムが空間内に居ない事を確認した俺は、何もない空間へと火の魔法杖を向けて使ってみようとする。が、火の魔法杖はうんともすんとも言わない。


 「まず、魔力を送るってどうするんだ?」


 最初の魔力を注ぐと言う部分が行なえず、火の魔法杖を使う事が出来ない。


 その後、念じてみたり、杖を振るってみたりと色んなことを行なったが、結局は火の魔法杖を使う事が出来なかった。


 それを残念に思いながら俺は火の魔法杖を素材生成の登録に使えないかを確かめる。すると、どうやら火の魔法杖は素材生成の登録に使える装備アイテムな様だ。


 そうして火の魔法杖を素材登録に使うと、下級魔法石(火)と言う素材生成に登録された。


 この下級魔法石(火)とは火の魔法杖の杖の先に付いていた赤い石の事だと思う。


 そして、この下級魔法石が素材生成に登録された事によって武装建造にも魔法杖と言う武装がポイントを消費して追加可能になっていた。


 「そう言えば、ゴーレムたちなら火の魔法杖を使えたかも!はぁ、気付くのが遅かった。」


 肩を落としながら俺は生活に使っている空間へと戻って行った。戻ると、俺はゴーレムマスターのポイントを消費していく。


 大量にあるポイントを使ってまずはゴーレムの増産を行ない、コアとゴーレムボディ(下級金属・中)のゴーレムを15機分製造して、今の俺の戦力はゴーレム30機だ。


 ちなみにコアのレベルは全て3レベルで、コア自身が自動操作を可能にしている。


 次に武装の建造を行なう。武装の建造では今まで貯めた魔物石を使って中級牙(犬)と下級金属(銅)を使った槍型武装を15本製造した。


 そして、今まで使っていた槍型武装(下級金属(銅)・中)は素材生成用に変わる予定だ。


 「10分後に新しい空間6に来てくれ。」


 全てのゴーレムに通達すると、それまでの間の時間を俺は使いっぱなしにしている魔物石の片付けを行なってから空間6に移動する。


 空間6にたどり着くと、既にそこにはゴーレムたちが全て集まっていた。


 「休憩していた所で悪いんだけど、新しくゴーレムを追加した。追加したゴーレムにこれまでの情報を伝えて欲しいんだ。これから取り出すから頼んだぞ。」


 15機の先ほど建造したばかりのゴーレムたちを取り出すと、早速ゴーレムたちはお互いの情報を交換し始めた。


 これで最低限の戦闘や行動が取れる様になっただろう。そうして全てのゴーレムが情報交換を終えると、新しく仲間になったゴーレムも含めて今日は休みにするのだった。

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