第50話・千夜一夜物語 7

兄と暮らしていた。

都市からは離れた所で。裕福ではなかった。

親はいない。覚えてもいない。兄は覚えているようだったが。

よくある話だ。それについては別に何とも思ってない。

ただ生きてる意味はあるのかとは思っていた。

不自由があるといえばあった。

貧乏すぎて盗賊になろうと思った事もあった。

ある日盗賊の宝を隠してる現場を見てしまった事があった。

盗んだ物を盗むのだから罪の所在はどこにあるだろう。ないかも知れない。

なんて当時の自分は思っていた。

何をしても何が起きても罪も何も生きてる意味のない自分にはない。

そう思って盗った。

とここまでは似たような話だな。今回の千夜一夜物語。

誰が作ったんだ、本当に。

見て来たかのようだ。名前まで同じだし。

でも、この後が違う。

それを兄に知られたら殴られた。

兄は言った。

それはダメ。と。

二人でバレないように宝を返しに行った。

そこで出会ったんだ。シンドバッド様に。

盗賊は宝の隠し場所と一緒に壊滅していた。

俺と兄は盗賊と間違われて捕まった。

捕まる前に抵抗はしたがシンドバッド様一人に負けた。

兄は弟だけは見逃してくれと頼んだ。

が、そのまま王宮に連れて行かられた。

そしていつの間にかシンドバッド様の警備隊に配属されていた。

警備の仕事はキツかったが、前の貧困故の不自由はなくなった。

何故俺達を警備隊にしたのかと、その理由をシンドバッド様に聞いてみると。

先に壊滅された盗賊より自分達兄弟のが強かったからだと。

あとついでに魔法の才もあったから。

シンドバッド様は笑った。

自分の生きる価値があるのだと言われた気がした。

生きる意味を他人に求めた。

後悔はない。

自分が決めたから。

他に何もない。

だから千夜一夜物語にも本当は興味ない。

願いなどないから。

決めたのだから、願いは自分で叶える。

シンドバッド様の願いは俺が叶える!

話が終わった。

自分の半生の半生のような話。

このアリババは兄に恵まれずシンドバッド様に出会えなかったアリババか。


急に意識を失う。

気がつくと白い靄の中に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る