第27話 禍の女神

 ——天河村。

 天河村の丘の上に聳え立つ宮殿の書庫にて天河人狼の族長であるチホオオロはただ一人熱心に本を開いている。

 その頃マカは筑紫島を出て三日で安雲に向かっている最中、真冬で暖をとらずに寒い筈だがチホオオロは自身の尻尾を体に巻きつけて寒さを凌ぐ。


 彼女は白い吐息を出しながら本を捲っていると一面におどろおどろしい異形の怪物が描かれている絵を見つけた。


 「——これは?」


 チホオオロはさらに続けて口に出して読み始める。


 「多々炉(タタロ)大王治天下(じてんか)三十四年。禍の神、大王の娘である阿波波(アハバ)が要石を破壊したことにより泡の如く蘇る。場所は伊予島の大月都(オホヅキノミヤ)。伊予島、瞬く間に禍の神に蹂躙され秋津洲に来ようとした時、かつて禍の神に破れ山で体を癒していた——。阿波波(アハバ)ってあの阿波波(アハバ)?」


 チホオオロは先ほどの異形の絵を見る。その絵はどう見てもあの時見た体が朽ちていた阿波波(アハバ)そのものだった。


 「——阿波波(アハバ)が禍の神を甦らせた犯人。一体なぜ?」


 チホオオロは続きを読む。


 「禍の神を鎮めし源氏、源再護男(ミナモトノサガノオ)。彼は山で体を癒した後、大王の娘で阿波波(アハバ)の妹にあたる輝夜媛(カグヤヒメ)と共に禍の神を鎮めた。その後、輝夜媛(カグヤヒメ)は永遠に禍が世に現れぬことを祈り柱となった」


 チホオオロは本を読み終えるとゆっくり閉じる。


 「——輝夜媛(カグヤヒメ)?」


 チホオオロがひとつ疑問に思ったのと同時に書庫の外から激しい叫び声がこだまし始めたのと同時に炎が燃える音が響いた。

 チホオオロは音に驚くと一瞬尻餅をつくとすぐに体を起こし立ち上がった。


 「な、何事!?」


 チホオオロが声を発したのに合わせて甲冑に身を包んだ人狼の兵士が書庫に飛び込んできた。


 「族長! 天人の襲来です!」


 「な、天人ですか!?」


 「はい! 早くお逃げを!」


 チホオオロは兵士と共に書庫を飛び出すと宮殿は至る所から火をあげ、空を見ると不気味なまでに月が大きく、その月の前には大きな雲が不自然に浮き上には人らしきものが載っているのが見えた。


 「そ、そんな……兄様と宗介は!?」


 「宮殿の入り口で戦っております! 村の者どもは蝦夷たちの助けで避難中です!」


 チホオオロは宮殿の裏口から兵士と共に出る。次の瞬間兵士の体が上半身と下半身が分れて地面に落ちた。

 チホオオロは突然の光景で唖然とする。


 そしてそのチホオオロを見下すかのように林の影から白く輝く甲冑に身を包んだ明かこの世の物ではない不気味な兵士が出てきた。

 その兵士は月を模した仮面を被り、チホオオロに剣を向ける。


 「——我が名はアタベ。お前がこのクソ犬どもの頭領か」


 チホオオロは腰が砕けそうになりながらもアタベから目を逸らさず睨み怒りを抑えながら口を開く。


 「あ、あなた達が天人ですか。どうして我が村を襲うのですか……」


 「分からぬか? カグヤ姫を連れ去るならず者の源マカ、それからお前と同じ二匹のクソ犬が我の顔に泥を塗った。そに時点で月への宣戦布告だ。そこで手始めにまずこの村を完全に潰す」


 「酷いことを……。て、天人は地上とは接触はできない筈なのになぜですか! 地上に裁きを出すのは地上の神! 月の民への裁きは月の神! 掟を重んじるあなた方の仕方だとは思いません。もしや、すでに月の都はないのかもしれないんですかね? 裁きを与える相手がいない——」


 すると次の瞬間一瞬アタベの手がぶれた瞬間、チホオオロは右頬から血を流す。

 裾で傷を抑えるとアタベの体はみるみるうちに赤くなる。


 「その戯言、もう一度口にして見ろ。女のとしての尊厳を破壊した後に魂、肉体ともども殺してやる!」


 「——っ!」


 チホオオロはアタベの怒声と共に振り上げられた太刀を見て死を覚悟する。

 次の瞬間目の前で金属同士がぶつかる音が鳴り響くのと同時にチヒオオロは後ろに突き飛ばされた——。


 ——————。


 私は間一髪のところでチホオオロさんを後ろに突き飛ばすとアタベの剣を食い止める。

 アタベは以前よりどこか禍々しく見え、目元が若干赤く輝いている気がする。

 しばらく剣同士の力試しを続けるとアタベは後ろに下がる。


 私は咄嗟に振り返って一瞬チホオオロさんを見る。

 チホオオロさんは返り血がついているのか着物は赤く汚れ頬からは血が伝っている。

 私は視線をアタベに戻す。


 数時間前、天河村近くの海養(ウミカイ)の里に到着と同時に月に異変が起きた。

 天人の来襲に備えたけど何故か天河村方面から煙が上がってもしやと思ったけど来てよかった。

 カグヤは里に置いて一人で来たけど大丈夫なはずだ。


 「チホオオロ様! 後ろに下がって!」


 「マカ様!? いつの間に?」


 「話は後で! 早く祠の中に逃げて!」


 チヒオオロさんに大きな声を投げるのと同時にアタベが斬りかかってきた。


 「またお前かぁ!」


 「アタベ、今度は逃さない!」


 アタベの斬撃を盾で受け流し体を捻って回し、アタベの脇腹を切り裂く。

 アタベは一瞬声を上げると今度は足を出してきたのでそれを掴むと大岩に向かって投げつけた。


 「グフゥ!」と大岩にぶつかりアタベは苦しむ声を漏らす。

 アタベは脇腹から光の滴を漏らす。


 手に握る翡翠の剣は覚醒させたからかいつにも増して輝きを放っている。

 行ける、この剣なら!


 「アタベ、お前の目的はカグヤを攫うだけのはずだ。とうとう手を出したな! 天谷、天河、そして筑紫。これは地上との全面戦争の火蓋を今切った!」


 アタベは傷口から光の滴を流しながら剣を握るとよろめきながら立ち上がる。


 「全面戦争か。俺はあらかじめ言ったはずだ。最後通告だと。それを無視したのはお前だ」


 「——なら、カグヤを狙うはずだ。カグヤを狙わずしてここを攻めると言うことは別の目的があるだろう? 禍の神を蘇らせるためか?」


 アタベは反応を見せない。

 それどころか否定も肯定どちらもしない。


 「愚かなことよ……」


 すると急に今手に持っている翡翠の剣が輝き始めると頭の中に見知らぬ女性の声が響いた。


 『阿波波(アハバ)、来る』


 「阿波波(アハバ)?」


 するとアタベが急に苦しみ始め、その場に膝を崩すと剣を落とした。


 「グワァァ……」


 「なっ!」


 そしてアタベの周りに黒い渦が立ち上り、アタベを飲み込む。そして渦は徐々に球体に変化していくと中から黄色い光が漏れ出ると中から声が聞こえた。


 『あはははは! 大源神(オホミナノカミ)! 筑紫、ウガヤに住まう妖の神の力を借りて結界を強めるとは実に面白い!』


 「阿波波(アハバ)!」


 球体は地面に落ちて黒い水たまりを作ると徐々に人の形となり、布を一切纏っていないの女性となった。その姿はまさしく天河津翁と戦った後に見た阿波波(アハバ)と全く同じ姿だ。

 阿波波(アハバ)は笑みを浮かべると私に近づく。


 「天人の姿は欲しかったのだ。禍の道を通ろうにも月に行けるのは天人のみ」


 「——禍の神は月に……」


 「ほう、やはり頭は良いのか。ククク、だが、禍の道がある限り我らが神はいつでも地上を攻めれる。地上を禍に染め上げるのが使命なのだ!」


 阿波波(アハバ)が両手を高く掲げた途端、月は真っ赤に染まると空は赤黒くなり風が吹き乱れ木葉から煙が立ち上り始めた。


 私は阿波波(アハバ)に斬りかかるが避けられ気の上に逃げられる。

 阿波波(アハバ)は私を一瞬見下したかのように見下ろすと月に視線を送りながら大声を出し始めた。


 「禍の僕(しもべ)達よ! 今こそ目覚めよ! 憎き大敵、天孫一族が住まうこの国を皆殺しにするのだ!」


 赤き月一面に顔が現れたかと思えば鬼の形相となり口を開けると煙を出し始めた。


 私は背中に立てかけていた弓を手に取ると阿波波(アハバ)に向かって矢を放つ。しかし、矢は阿波波(アハバ)の頭に突き刺さったがむしろ馬鹿にしたかのように笑い始める。


 「愚かな。我が禍の瘴気で灰になるが良い!」


 地面が少しずつ揺れ始めたかと思えば徐々に強くなっていく。

 阿波波(アハバ)の頭の真上に徐々に赤黒い球体が出来てくる。それは瞬く間に自身の頭よりはるかに大きくなる。

 私は震える手に力を込めて剣を握り、その禍々しい球体に剣先を向ける。


 次の瞬間、阿波波(アハバ)の背中を光が貫く。


 阿波波(アハバ)は一瞬何が起こったのかが分からない顔をすると続々と光の矢が阿波波(アハバ)を貫き始め蜂の巣にした。


 「かっ……か」


 阿波波(アハバ)は白目を剥くと頭に浮いていた球体が闇に溶け込むように消え、月と空は元通りとなった。

 そして木から地面に背中から落ちる。


 「——一体、誰?」


 私は剣を阿波波(アハバ)に向けながら近づく。すると木陰からナビィさんが出てきた。


 「ナビィさん!?」


 「久しぶりです。マカさん」


 ナビィさんはボロボロの着物に似合わず優しい微笑みを向けた。

 ナビィさんは弓矢を手に阿波波(アハバ)を見下ろす。阿波波(アハバ)の体は黒い液体になるとそのまま空へと逃げていった。


 あれは流石に追いつけない……。


 いや、それにしてもどうしてナビィさんが?


 しかし、私が聞く前にナビィさんはゆっくり話してくれた。


 「——不死山の神はなんとか味方になってくれました。その分、分からせるには大変でしたがね」


 「そ、それは無事でよかったです。じゃ、後は安雲だけ」


 「その様子ですと、筑紫に立ち寄った感じですね」


 「えぇ、不可抗力ですけど」


 すると先ほどまで洞窟に隠れていたチヒオオロさんが顔をちょこんと出してこちらを見てきた。


 「あ、あの。もう大丈夫ですか?」


 「はい、大丈夫です」


 私の言葉を聞いて安心したのかチホオオロさんは安堵の息を漏らすと私に駆け寄る。


 「では、早く村に戻らないと!」


 「そうですね。ナビィさん、とりあえず話は後で村に向かいましょう!」


 「えぇ、分かりました」


 私はナビィさんとチホオオロさんと共に村に戻った。


 ————。


 村に戻ると宮殿は焼け落ち、あたりは死屍累々で首がなかったり身体の一部が欠損している死体や内臓を腹から出して呻き声だけを出している兵士など悲惨な有り様だ。

 チホオオロさんは廃墟となった宮殿の前に着くと目に涙を浮かべた。


 「——天人との戦は、ここまで大きな物なのですね」


 「——私も、予想はできませんでした」


 「良いのです。これが戦です。覚悟はできていました」


 チヒオオロさんは振り返ってこちらを見ると驚きを見せる。


 「に、兄様と宗介!」


 振り返ると宗介さんとチホサコマさんがボロボロになりながらも手を振ってこちらに近づいてきた。

 チホサコマさんは足をやられたのか宗介さんに肩を借りながら歩いている。


 「マカよ。無事であったか。それにお前も」


 チホオオロは涙を拭うと返事をする。


 「はい、兄様と宗介もご無事で何よりです……!」


 チホサコマさんはチホオオロさんの頭を撫でるとこちらを見る。


 「マカよ。大王とはどう言う話があった? 一応物部の使者からマカが天地を分け隔てる結界を張るために旅に出ると言うことは知らされているが」


 「えぇ、そのままの意味です。結界は残すところ安雲にある物です」


 「なるほどな。だが、今はこう言う有り様だ。その始末から付けよう」


 ——————。


 それから私はチホサコマさん達と共に蝦夷の集落に向かい、到着と同時にオトシロさん達に迎えられた。

 そして早速私とナビィさん含めてチホサコマさんとチホオオロさん、それからオトシロさんと大家の広間で話し合いを始めた。

 最初に話し合われたのは天河村からの避難民について。

 現状、天河村は完全に焼き払われており、少なくとも今はもう住むことの方が難しい。

 復興自体は季節が冬なのもあって難しく、雪解けを待って復興しそれまでは各村で保護して貰えるかを頼むことに決まった。


 避難民の処遇について話し終えた後、早速チホサコマさんは天人について話した。

 今回天河村を襲った天人は前回狛村に現れたものと同類で今回の被害は先のと比べて甚大な結果だ。

 しかし、今回は兵士たちの消耗はそう大きくなく、むしろ一度戦った兵士たちが天人達の武術を見極めて各々の兵士に伝授したおかげかむしろ天人を追い詰めていた。


 チホサコマさんは話を終えるとチホオオロを見る。


 「ところで妹よ。確かアタベと会ったのだな。そこで何が起きた?」


 「はい。間一髪のところでマカ様に助けられました。あとはマカ様が戦って私は祠に隠れていました」


 「そうか、ではマカ。話してくれぬか?」


 私はチホサコマさんに起きたこと全てを話した。

 

 ————。


 チホサコマさんは難しい表情を浮かべ、それはチホオオロさんやオトシロさんみんな同じだ。

 そこで口を開いたのはナビィさんだった。


 「取り敢えず妖の神は三柱は協力してくれます。最後は安雲に住まう妖の神です。禍の神は今回で月にいる事がわかりました。なら、今すぐにでも向かうべきです」


 ナビィさんの言葉に一同は頷く。

 するとチホオオロさんは思い出したかのように声を上げた。


 「あ、そういえば古文書に気になる逸話がありまして……兄様は輝夜媛(カグヤヒメ)と言う人の話はご存知ですか?」


 「輝夜媛(カグヤヒメ)? 聞いたことはないが……それがどうした?」


 「今から六百年前の多々炉(タタロ)大王、治天下(じてんか)三十四年での話に出てくる人物なのです。その舞台が月神が関わる伊予島で、そこで禍の神との戦いが記されているのです。今までの伝承では越国(コシノクニ)や東国が舞台なのに何故か伊予島が舞台。その話にはマカ様の話にでも出てきました阿波波(アハバ)が現れ、その彼女を源氏と共に打ち破ったのが輝夜媛(カグヤヒメ)。彼女の最後は神(はしら)になることです」


 ——輝夜媛(カグヤヒメ)……カグヤ、ヒメ?


 表情に出ていたのかチホオオロさんは真剣な顔で私を見る。


 「マカ様とナビィ様は気づきましたよね。マカ様と同伴している少女の名前はカグヤ、さらにカグヤは天人にわざわざ姫と呼ばれている。それ即ち……彼女が輝夜媛(カグヤヒメ)では?」 


 その言葉に一同は静まり返る。

 私は一つ気になった、ナビィさんは知っていたのではと。


 今思えばナビィさんは狼山の神の言葉から長生きをしている可能性もありその他にも初対面時にも何故か天人の対処を知っておりカグヤについて知っている素振りを見せ、私を祠に導いてきた。


 ナビィさんは私の視線に気づいたのか申し訳なさそうに俯く。

 そんな時、チホサコマさんも薄々は違和感を覚えていたのかナビィさんを見る。


 「——ナビィよ、申すが良い。其方は知っていたのではないか?」


 ナビィさんは葛藤しているのか手を強く握る。

 彼女は秘密を隠しすぎる人だ。今までぼかして自分の存在を悟られないようにしてきたのだろうが、今思えば全くぼかしきれていない。それは彼女の性根が清らかな人で嘘はつけないと見抜いているに違いない。現にチホサコマさんは不愉快な顔をせずむしろチホオオロさんを見るような優しい顔つきをしている。


 それから少し間を開けてナビィさんは諦めたかのように口を開いた。


 「——えぇ、多少は知っておりました。ワタシは古に日向神の命で地上に降りたその時から源氏の勇者を導いてきました。カグヤさんの事も……知っておりました。そして天人が妙な動きをしたらマカさんを導き天人への備えを致せとも命じられたのです」


 ——なるほど、確かに辻褄が合う。


 狼山に来たのは源再護男(ミナモトノサガノオ)とナビィさんと思われる女性。

 その女性がナビィさんなら全く偽りがない。


 私とチホサコマさんは納得はできているが、チホオオロさんとオトシロさんは驚きを隠せない様子だった。

 オトシロさんはゲフンと咳をするとナビィさんを見る。


 「取り敢えずナビィ殿は丁重にもてなすべきですかな? 神の使者であれば丁重にもてなすべきかと」


 「あ、それは結構です。むしろ普段通りの食事がいいというか……猪肉とかお米が」


 「——源氏の一族と過ごした影響か食事が武人寄りだな」とチホサコマさんはボソッとそう漏らした。


 それから話し合いを終えたあと、言った私とナビィさんは休めと駅やに案内され寝床に進むと安心したのかナビィさんは安堵の息を漏らした。


 「マカさんは悍ましくないと思うのですね?」


 「何をですか?」


 「ワタシのことです。長く生きると人を見透かせるようになるのですよ? 気持ち悪いとは思いませんか?」


 「いえ、別に気にならないと言うかむしろ長生きして見透かせない人……もいますし」


 「たとえば誰です?」


 「絹物主(キモノヌシ)と阿我大神(アガオオカミ)ですね。後者は話どころではなかったです」


 「あぁ、だから髪の毛が短くなっていたんですね。後者は怒ると容赦がないので」


 ナビィさんは思い出したかのように笑う。

 確か源再護男(ミナモトノサガノオ)と二人で会いに行ったはずだから知っているのは当たり前か。


 「あ、ではカグヤのことも知っているのですよね?」


 「いえ、カグヤ様のことは本当に少ししか知らないんですよ。チホオオロさんが話したお話の知識と日向神からの教えられた天人への対策ぐらいで」


 「——ん? 源再護男(ミナモトノサガノオ)は六百年前ですよね? ならカグヤと会っている可能性が……」


 「そこもおかしいんですよ。ワタシが彼と会って旅をしたのは九百年前ですし」


 ——あれ? 三百年も間ができてる?


 「それにワタシは九百年前の激戦で眠りにつき目覚めたのはつい十年前です」


 ナビィさんの言葉と昔話や神との話を合わせてみると少し違和感が残るけど大体は把握できた。

 昔話の舞台は伊予島だ。だけどあの神々は筑紫やウガヤと広範囲。もしかしたら私たちが知らなかっただけで一度禍の神が現れていた可能性がある。

 

 ナビィさんは私を見ながら首を傾げている。


 「分かりました。では最後は安雲の荒波(アラナミ)山ですけど聞いたことないんですよ」


 「荒波山? 確か狛村がある山の古い名前だったはずです」


 「古い名前ですか?」


 「では明日にでもカグヤさんを迎えに行ったあと狛村に向かいましょう」


 私たちの旅はまだ続く——。

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