第29話 暴れおじさん
7月の診察。
9時の予約だから8時半までには採血を済ませておきたかったのだけど、この日は相方を駅に送るミッションがあったため、病院に着いたのが9時前。10時ごろに採血をし、1時間程度かかるので11時頃に呼ばれるだろうと思っていたら、予想が外れた。
今日はとても混んでいた。
座っているうちに苦しくなったり、その苦しさでホットフラッシュのような症状が出てきたり、長く待つのはまぁしんどい。
なにより安くて軽い長椅子は、隣の人の頷きや貧乏ゆすりを敏感に拾って振動を伝えてくるから、内臓に響く響く……そのため、時間つぶしの読書も集中が長く続かない。
足を投げ出してると通行の邪魔になるので楽な姿勢が取れない。
長時間はつらい……
何人か「もう待てない!」「いつまで待たせるんだ」と、苛立ちや怒りを内科受付のお姉さんたちにぶつけていた。
そんな人たちに穏やかかつ丁寧に接するお姉さんたち、態度に口調にも出ない。天使なの? 女神なの? いずれにしてもスキルが凄い。
一人のおじさんが「仕事の予定があるんだ!」「もういいだろう! 今日の診察で薬を出して終わるって前回言っていた!」とキレ散らかしていた。
前述の貧乏ゆすりおじさんは、この人だ。
私は本を読むどころではなくなり、席を移動する気力もなく、圧迫感と振動からの痛みに耐えながら、おじさんを観察していた。
受付のお姉さんがおじさんの要求を医療スタッフに伝えて、処方箋と次回予約をとってきておじさんに伝える。
しかしこのおじさん、どいういうわけか会計後にその最後の薬の処方箋を放置して行ったらしい。事務のお姉さんが追いかけたけど、無視して去っていったと漏れ聞いた。
元気だなぁ……でもこのおじさん、ここを最初に受診したときはこんなに元気じゃなかったんじゃない? よかったね、キレ散らかすほど元気になって。
予約制でも大きな病院。予期せぬ事で遅くなるのは仕方がないこと。各々事情があるにせよ、予定通りに進まないからと、人に当たるのは大人げないなぁ。
お姉さん相手に高圧的にキレてるの男の人ばかり。それもおっさん。私と年齢が変わらないか、それより少し上か。
大きな声で文句を言っても、順番は早くならないよ。
とぼけたおばちゃんにも、親切に対応する受付のお姉さん。
不思議ちゃん系の人に懇切丁寧に説明する看護師さん。
みんな対人スキルすごいなぁ。 プロだなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます