第105話.ダヤンとパナケアの秘密①
マリベルは、口元に手を当てたままダヤンを見つめる。
ダヤンのほうは、しばらく驚きを隠せないといった
「そうか。あのディアナに孫が……。まさかなぁ。しかし、あれが出て行って、もう100年か、孫どころか曾孫が居てもおかしくないのぅ……」
ダヤンは、懐かしむようにマリベルの顔を見つめる。ダヤンがそこに見ているのは、もしかしたら若かりし頃のディアナなのかもしれない。
「ディアナは……その……君のおばあちゃんは、まだ元気にしておるのかのぅ?」
少しだけ、ほんの少しだけ言いよどみながら、恐る恐るといった雰囲気で、マリベルの顔を盗み見る。まるで、答えを聞くのを恐れているかのようにも感じられた。
「はい。おばあちゃんは、とっても元気ですよ。本人はもう歳だって言ってましたけど、ぜんぜんそんなふうには見えなくて、母よりも若く見えるくらいなんです」
「そうか、元気なのか。そうか、そうか……。それは、よかった……」
ダヤンは安心したように肩を落とすと遠い目をしながら、ゆっくりとそう呟いた。その目には涙が浮かんでいた。
「あの……あなたは、私の曾お爺さん? なんですか?」
小さな声で、遠慮がちに口を開いたマリベルに、我に返ったようにダヤンはマリベルに目を向けた。
そして、もう一度、その目を細める。
「そうじゃ。まさか、曾孫に会えるとは思わんかったのぅ。わしも驚いたわい。それにしても、ディアナの若い頃によく似ておるのぅ。あんたは間違いなく、わしの血を引いておるだろうな」
「曾お爺ちゃん……。でも、そんな。お母さんよりもずっと若く見えるのに?」
自分で言ってみたが、とても信じられなかった。
祖母ディアナの異様な若さにも疑問が無いわけではなかったが、それでも母よりは年上に見えるし、パナケアの霊薬の効果を考えれば、説明がつかないほどではなかった。
だが、目の前の男は違う。
どう見ても、母よりも若く見える。
外見は30歳前後にしか見えない。それが、祖母ディアナよりも年上だなんて、とても信じられなかった。
「ほっほっほ。信じられないのも無理はないのぅ。じゃがな、わしがディアナの父であることは事実じゃ。ついでに言うと、わしはもう300を超えておる」
「えっ! 300歳!?」
マリベルは驚いて大きな声をあげた。
すぐそばで二人のやりとりを見ていたイザベラが目を丸くする。彼女は何か言おうとして口を開きかけたが、結局、何も言うことは無く口を閉ざした。
「そんなに驚くこともないじゃろう? ディアナとて200は超えておるしのぅ」
「えっ!?」
続くダヤンの言葉に、今度こそマリベルは口をぽかんと開けたまま固まった。
「ん? なんじゃ、聞いておらんかったのか?」
ダヤンは首を傾げながらマリベルの顔を覗き込む。
「えっ、だって、おばあちゃん、90歳くらいだって言ってたから。200歳って……えぇ!? 信じられない!」
「ほぅ、90とは、ずいぶんとサバを読んだものじゃな」
しばらくして我に返ったマリベルが発した言葉に、ダヤンはやれやれとため息をついた。
「ディアナがこの村を出て行った時には、もう100は超えておった。あれから優に100年は経ったはずじゃて……」
「本当……なんですね」
マリベルが恐る恐る訊ねると、ダヤンは大きく頷いた。
「おばあちゃんがとっても長生きなのも、曾お爺ちゃんがすごく若く見えるのも、やっぱりパナケアの泉が関係しているの?」
「うむ。そうじゃ。あの泉の水を飲み続ける限り、わしらは老いることは無いのでな」
ダヤンは、そこで視線をマリベルのそばにいるイザベラ達に向ける。
「あんた達は、知っていたのであろう? パナケアの泉が目当てでここに来たんじゃろうからな」
「ええ。でも、あまり詳しいことは……もし、よろしければ、パナケアの泉について詳しく教えて頂けないでしょうか? その効能などについても……」
ダヤンとマリベルの会話を邪魔しない様に控えていたイザベラだが、自分に水を向けられたことをきっかけにダヤンに質問をぶつける。
本当は、いろいろ聞きたくて仕方が無かったのだが、ダヤンの機嫌を損ねないように気を遣っていたのだ。
「ふむ。まあ、いいじゃろう。少し話しておこうかのぅ」
ダヤンは小さく息を吐いてから、ゆっくりと話し始めた。
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🔸ディアナおばあちゃんが、200歳超え!?
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