第36話.潜入、再び⑧

 ルイスは窓をあけた。


 右手には、白い小さな糸のようなものを持っている。

 その糸の端を窓の下に張り付けて、少し引っ張る。それはゴムの様に伸びた。そして、ルイスはそれを持ったまま勢いよく窓の外へと身を躍らせる。


 3階の窓。地上からの高さはそれなりにある。


 糸を右手に握ったまま落下するルイス。


 ルイスの落下と共に右手の糸が伸びる。それは、ある程度伸びたところで、ルイスの落下速度を緩めていく。


 ティトが創った魔法道具、

 アラクネという蜘蛛の魔物から採った糸袋を加工して創ったもので、強い粘着力とゴムのような伸縮性を持つ糸を出すことが出来る。


 糸のおかげで落下速度が抑えられたルイスは地面に近づいたところで糸を放し、難なく地面に降り立った。


 そして、正門へと向かわずに屋敷の裏、北へと走る。

 屋敷を囲む塀を軽い身のこなしで飛び越えたルイスは、左手にはめた腕輪バングルに魔力を流す。

 離れた場所にいるティトに連絡するためだ。


『はい。兄さん』


 すぐにティトから応答がある。


『お宝は手に入れた。逃げるぞティト、北門に集合だ』

『はい。すぐに向かいます』

『門に近づく時は、マリベルにあれを着せておけ』

『分かりました』


 ルイスはティトと短い言葉を交わした後に、通信を切った。

 そして、北門のほうへと走りだす。




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 🔸アラクネの糸。便利かな?

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