第21話.ルイスの変装①

 宿で遅めの朝食をとったルイスは、昼近くにメルゼベルク伯爵の屋敷の近くに来ていた。昨日の騒動のせいか、屋敷はいつもよりも慌ただしい気配に包まれている。


 昨日ティトが崩した正面玄関は、まだ半壊したままだ。

 それでも、出入りするのに支障が無い程度には、瓦礫は撤去されていた。そこを、ときおり騎士や兵士が通っていく。


 ルイスは、そんな騎士や兵士の姿を、屋敷の周辺をうろつきながら見ていた。

 その中には、昨日対峙した、赤薔薇の騎士団ローテローゼリッターたちも混ざっている。よく見れば、見たことのある顔もちらほらと確認できた。



 そんな彼らの目を誤魔化ごまかすためか、ルイスは昨日と違う格好をしている。

 黒のパンツはいつもと変わらないが、白いシャツはだらしなく着崩している。加えて、猫獣人みゃうの特徴であるを隠すためか、バケットハットを目深にかぶっていた。


 当然、尻尾しっぽもパンツの中に隠してある。


 いつもの短剣もティトに預けてあるので、今持っている武器は腰のベルトに吊るしている投擲とうてき用のナイフ3本だけだった。

 それも、着崩したシャツの下に隠れているので、ぱっと見だと分からない。


 そのおかげで、昨日侵入したルイスが、すぐそばをうろついているとは、騎士も兵士も気付かない。


 それをいいことに、ルイスは、屋敷周辺をぶらぶらしながら観察を続けた。



 しばらくすると、さすがに何人かの騎士たちが、ルイスの行動に不審の目を向けてくる。

 やがて、ひとりの騎士がルイスに近づいてきた。

 ルイスはそれを知りながら、さりげなく背を向ける。


「おい、おまえ。そこで何をしている。ちょっと、こっちを向いて顔を見せろ」


 ルイスは騎士のほうを振り向くが、帽子を目深にかぶったままだ。


「おい、帽子をとって、しっかり顔を見せろ」


 騎士はそう言って、ルイスの帽子を無理やり取り上げた。帽子の下から現れる猫耳。それを見て、騎士は目を見開いた。

 ルイスも騎士の顔を見る。

 その騎士は、ルイスが昨日対峙した赤薔薇の騎士団ローテローゼリッターの一人だった。


「おまえは、昨日の!?」


 騎士が叫んだ瞬間、ルイスは逃げ出した。




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🔸見つかっちゃった。どうするルイス?

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