2:妖狐~盗賊少女~女盗賊
第11話 さんぽ、さんぽ♡
「さんぽ、さんぽ♡ アルトさまとさんぽ♡」
今日はメディとダンジョン散歩。
彼女にせがまれて、手を繋いであちこちを歩いている。
ただ遊んでるだけじゃなくて俺は仕事も兼ねているからな?
おもに上層を、侵略者がまず通るところを回って点検している。
モニターでどこでも視認できるから歩き回る必要はないんだが、現場を確認するのも大事だ。
それにメディとの散歩は楽しいしな。
ダンジョンの出入口まで行き着いて俺は、
「ここさえ塞げればなぁ」
「? 外、出れなくなる」
「食材はどうにかするとしてさ。それより人間が入って来ないほうが大事だよ」
「アルトさまは、そと出たくない?」
「まあな。つーか人間に会いたくない!」
俺は右の拳を握る。
「王族でいたあいだもドロドロの権力争い! 逃亡中は賞金首になったからな、その辺の村人や野盗にも命を狙われる始末!」
「おー」
「だから俺は人間と関わりたくないんだよ」
再訪の約束をしてしまったポンコツ村娘ちゃんみたいなケースは例外にしたい。……いやほんと、あれ限りにして欲しい。
「じゃあめでぃ、ここに立つ!」
「ん?」
「ここで人間、止める!」
言うと、メディは繋いでいた手を離し、入口のところで仁王立ちしてみせる。
「アルトさま守る!」
「メディ……大きくなって……」
そんな、ちょっと父親っぽい気分に浸ってから。
「ありがとう。でもな、それはそれで騒ぎになるから」
「?」
今は人間の姿のメディ。ふわふわのショートカットに、キラキラした目。ぷにっとした頬に、愛らしい唇。
低身長なのに大きな胸と、太もものまぶしいミニスカート。
天真爛漫ロリ巨乳な美少女って感じだが、ウエストからお尻、脚にかけてのラインにはメデューサだったころの妖艶さをどこかに残している。
無垢と魔性が同居したような女の子だ。
しかしその金色の瞳には確かな魔力が籠っている。
メディがここで『門番』をしようものなら、訪れた人間を問答無用で石像に変えてしまうだろう。
正直、人間がどうなったって構わないが、そんなのすぐに噂になる。
メデューサが立ちはだかる洞窟。
そんなの、真っ先に討伐対象になるだろう。
「もっと無害なダンジョンを装わないと。いや、ダンジョンとすら思わせないのがベストだな」
この、入口すぐの空間は、手狭な洞穴のようになっている。
そこから二又に道が分かれて奥へと続いているわけだが、
「ここを塞ぐのが手っ取り早いよな」
クリエイトで岩壁を作って2つの通路を塞ぐ。
「おー! 出れない、入れない!」
こうすれば、外からやって来た人間はここをただの洞穴だと思うだろう。
「村娘ちゃんは入れないといけないけど」
あの子はもう内部を知っていて、虜になっている。通路を封鎖したままなら彼女も侵入できないが……そうすると彼女はどうするだろう?
ここには本当はダンジョンがある、と騒ぎ立てるかもしれない。
それは厄介だ。
「こそっと彼女だけは入れて、満足させてやるか」
「えじき、えじき!」
「お、おう。餌食て……物騒だな」
さすがはモンスター。
「応急処置としてはこれくらいだよな」
「かんぺきじゃない?」
「ないね。いくら物理的に通路を塞いでも瘴気までは密閉できない。そいつを勘づかれたら、壁を壊してでも侵入しようとする奴らが出てくるだろうし」
こればっかりは止められない。
どうにか追い返す手段を考えないとな。
「……俺の代わりに動けるメンバーも増やしておくか」
メディは良い子だが、先ほどの理由で人前には出せない。
他のモンスターも俺が命令すれば動いてくれるが、やはり人の目に触れさせるのは避けたい。
となると、モンスターの外見をキャラメイクで変えるのが手っ取り早い。
「やるならメスだよな……って、そういう意味じゃないからな⁉︎」
「?」
メディは何も言ってないが、俺の口からは勝手に言い訳が。
「いやほら! どうせなら女子のほうがいいってのはあるけど、メディも一緒に住むなら女の方がいいだろ?」
べ、別に、たくさんのモンスター娘に囲まれたいわけじゃないんだからね⁉︎⁉︎
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