第82話

「それねえ。交通事故起こした女の子が、その男の妹に似ているっていう話なのよ」

「ああー、きっと名前がなんだろうな?」

「いやいや、それがね。名前じゃないんだよ。あんた。確かねえ……あ、そうそう! 顔と年恰好がよく似てるって話さね」

「顔と年恰好だあ?」

「ええ、ええ。そうなの。この間なんてねえ。テレビで言ってたわよ。あの男。あれは妹だから、協力してもらっただけだって……」

「うー。そいつは……拳骨だなあ……」


 おじさんとおばさんの話で、だんだんわかってきた。

 俺の妹が広部の妹と、きっと、同世代なんだ。


 妹の弥生を妹だという広部……多分、広部の妹は……。


 もうこの世にはいないんだろう。


「うっわー、えげつねえなあ……」

「ニャ―ーー……」


 古葉さんとシロが再びテレビの映像に顔を向けている。

 俺もテレビを観てみると……?!


「うーん。これはなあ……」

「そうさねえー……。」


 おじさんとおばさんが唸った。


「うーん。世の中広いようで、狭いのかもなあ……」

 

 谷柿さんも唸った。


 霧木さんと音星は終始無言だ。


 テレビの映像では、広部の妹は広部の住んでいたマンションの一室で、変死していたと字幕に書かれていた。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る