第56話

 俺たちは煮え湯から逃げるために、また全速力で走ることになった。それも、今度は元来たところを通って、東へ向かうんだ。一度、走ったところだから、火のついた釜土の位置や、それに入っている人型の魂たちの位置までもが、俺には感覚的によくわかっていた。


 きっと、音星たちもだろう。 


 大急ぎで駆け抜ける間中。ずっと、俺の後ろにはシロがいた。シロもさすがに猫だけあって足が速いな。


「火端さん! もっと速く!」

「ああ! わかった!」


 音星って、こんなに足が速かったのか?

 

 俺とシロの後ろ擦れ擦れには、まるで追いかけるように、空から大量の煮え湯が降り注いでいく。


 俺たちが走り出した後で、ジュウ。ジュウっと、真っ赤な地面が焦げる音がしてきた。


「ハアッ、ハアッ!」


 俺は思いっきり地面を蹴って走った。

 

「キャッ!」


 目の前を走っていた音星が急にバタンと倒れた。何かに躓いたんだ。


「音星! 大丈夫か?!」


 俺が駆け寄ると、音星の右足を人型の魂が掴んでいた。

 

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