第43話

 音星の誘いで真夏の商店街へと向かった。八天駅のロータリーから少し民宿とは別方向へ歩く途中にそれはあった。ちょうど、交差点四つと陸橋を渡ったところだ。


 八天街の街の人で賑わっている八天商店街。

 ここになら、叫喚地獄から更に下層の熱さでも、十分対策ができるクーラーバッグなどがあるだろう。


「あらー、巫女さんと火端くん?」

「あら? こんにちはー」

「あれ? おばさん?」


 八天商店街には、買い物袋片手の民宿のおばさんがいた。どうやら、買い出しらしい。


「おばさん? 買い出し?」

「ええ。魚と卵が足りなくてね」

「ええ? もうないの?」

「うーん……またうちに新しいお客さんがくるのよ。だから、足りないのよ」

「そっか」


 真夏の真上から猛射が降り注ぐ昼時。

 八天商店街では、夕飯の買い物をする主婦たちが多かった。


「へえー、そうなんですか? それでは、おばさん。私たちはクーラーというものを探しに行ってきますね」

「ひょっとして、音星。クーラー知らないのか?」

「ええ。うちは、団扇派なんです」 

「……ひょっとして、それってシャレ?」

 

「ぷっあはははははは」

「それでは……」

「おばさん。じゃあ、夜には帰るよ」

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