第24話 それも罪?

「ご馳走さまでした!」

「巫女さん。今日も梅干し入りのおむすびでいいのよね?」

「はい!」


「ぼうずには、俺が作ってやるよ」

「ああ、ありがとう。おじさん」


 おじさんとおばさんに地獄での飯を頼むと、俺と音星は早速二階へ行って、支度をした。


 途中、古葉さんが俺が階段を登る時に声を掛けてきた。


「お前も変わってるなあ。そんなに地獄へ行きたいのか? 行ってどうするんだ? そんなところは、いずれいつかは行くはずなんじゃないのか?」

「いや、古葉さん。地獄へは普通の人は行かないんだよ。というか、罪を犯した人たちだけなんだ。地獄へ行くのは……なのに、俺の妹が……」

 

 俺はカッと頭に血が昇って、急いでリュックサックを自室からぶんどると、民宿の外へと出た。外には音星が布袋を肩に掛けて待っていた。古い手鏡をあちこちから覗いては、コックリと頷いている。


「準備OKです! それでは行きましょうか。火端さん」


 俺と音星が玄関先で、頷き合うと。


「あ、わりい! 訳ありか! 俺が悪かった!! すまーーーん!!」


 後ろから、古葉さんの大声が追い掛けてきた。

 

「それでは、行きますよ!」

「ああ。今度は等活地獄の一個下の黒縄こくじょう地獄へ行こうよ」

「ええ。妹さん……。見つかるといいですね」


 黒縄こくじょう地獄とは、盗みや殺生をすると落ちる地獄だ。

 

「それでは、準備はいいですね」

「え、ここで?!」

「はい。この鏡をずっと見つめていてくださいね」


 俺は玄関先で、太陽の光を仄かに反射する古い手鏡を、じっと見つめた。


 …… 

 …………

 ………………


「火端さん。もういいですよ」 


 音星の声と同時に、ザンッという鈍い音が辺りに響き渡り。恐ろしい高熱が俺を襲った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る