第19話 カルア、ぐっすり睡眠をとる

 その日の夜。

 カルアは、ふかふかのベッドに寝ていた。

 俺はその寝顔を見る。

 うーん、幸せそうな顔で寝ているなあ。

 何にも知らずに。

 こいつ、今日はうまいものも食えたし、酒も飲んでたし、風呂にもはいれて聖女様とかいわれてちやほやされてこんないいベッドに寝かせてもらえて。

 そりゃぐっすり眠れるってもんだよなあ。


 ちなみに、こんな深夜に俺がカルアの部屋にいるってことを、カルアは知らない。

 無断の不法侵入である。

 別に、夜這いしにきたわけじゃない。


 重ねて言うが俺が好きなシチュエーションは俺にべたぼれの女の子(できればお姉さん)に授乳スタイルでイイコイイコしてもらうとかそういうのだから、夜這いとか無理やりとか強姦とかは好きじゃないのでしない。

 好きだったらしてたけど。


 さて、俺は今忍法で天井に張り付いている。

 現代でもあるまいし、部屋の中は真っ暗でなんの明かりもない。

 忍法で透明にもなれるんだが、この暗闇の中じゃその必要もないだろう。

 ただし、俺は暗視の術を使っているから昼間と同じように視界の中は明るい。


 カルアの寝顔もよく見える、こいつかなりの美人だからなー。

 うーん、俺を抱っこしてよしよししてくれないかな?

 自分からしてくれればいいけど、俺が無理強いするかたちになるともうそれは俺の趣味ではなくなるのでいやなのだ。


 地球にいたころも金を払って好みのプレイしてもらったこと何度もあるけどいまいち燃えないんだよなあ。

 人間の業ってやつだよなあ。

 人生で一度も経験ないので、愛情たっぷりにだっこされてヨシヨシされたいんだ。


 ……なぜ俺がこの部屋で天井に貼り付いてカルアの顔を見ながら授乳ヨシヨシプレイに思いを馳せているか?

 そんなの、わかりきったことじゃないか。

 こういうのはな、現行犯で捕まえるのが一番いいのだ。


 ほら来た。

 静かに部屋のドアが開く。

 そして侵入してくる五人の人影。

 黒ずくめの動きやすそうな衣服。ナイフを持っているものもいる。


 そう。


 聖女たるカルアを、襲いに来たのだ。

 殺しに来るか、脅しに来るか、どっちかだろうと思っていたが。

 男たちの一人が、猿ぐつわを持っていた。

 お、これは脅しにきたな。

 殺しに来たんじゃないならもうちょいようす見るか。

 男たちはまず寝ているカルアの口をふさいで無理やり猿ぐつわをはめた。


「⁉⁉⁉ むぎゅむぎゅ⁉ ふむーっ!!! むふーーーーっ!!!」


 そして持っているカルアの身体を四人がかりで押さえつけると、残りの一人がナイフで服をビリビリ切り裂き始めた。


「んふーーーっ⁉ んふんふーーーーっ⁉」


 さるぐつわされながらも抵抗しようとするカルア、でも男数人に無理やり押さえつけられたらもう動けない。


「やっていいんだよな?」

「ああ、ボスがそう言ってた、そのあと足の爪をはいでわからせてやれだとよ。今後こいつがボスのいうことを聞くようにな」


 ふむ。

 やはり、爪は剥ぐのが簡単だからな、俺も好きだ。

 足の爪っていうのは目立たない場所を痛めつけようってことだろう。

 なるほどなあ。

 五人がかりで輪姦して、そのあと拷問して恐怖で聖女を操り人形にしようってわけかあ。


 ふーん、悪い奴らじゃん。

 男たちは興奮しているらしく、すでに下半身を露出している奴までいる。


「ははは、無理やりでも女の身体ってのはなあ、身を守るために濡れ……」


 それがそいつの人生最後の言葉となった。

 そいつの首が、身体と離れてごとりと床に転がった。

 噴き出した血がカルアにぶしゅーっとかかっている。


「!?⁉⁉⁉」

「なんだ⁉」


 カルアも男たちも訳が分かっていないみたいだ。

 まあ、正直吐かせるだけなら一人いれば十分なので、リーダーっぽいやつ以外の首を俺は短刀で次々に刎ねていく。

 この暗闇の中、この俺を相手にしてこんなやつらがなにをどうしようもない。

 最後の一人の腹に軽くグーパンを入れると、そいつはうう……。と呻いて膝をついた。

 ふう、疲れることすらなく終わったな。


「あー? なに? なに? なんなのお? これなに、あったかいけどなんかビショビショなんだけど? 夢? 夢?」

「夢じゃない、そしてそれは人間の血だ」


 俺はそういってランタンに火をいれてやった。

 服をビリビリに切り裂かれ、ほとんど裸の身体を男の首から噴出した血でぐっしょりと全身濡らしたカルアは俺の顔を見、男たちの死体と生首を見、最後に血にまみれた自分の裸体を見て、


「きゃぁぁっぁぁぁああぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁああああああっぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁあぁっぁぁぁっぁぁあああああああああ!!!!!!!!!!!!」


 と悲鳴を上げた。

 ものすごい表情、とんでもない声量、喉がぶっこわれるぞ、そんな大声。

 ま、でも、うん、予想通り。

 これで俺がいちいち人を呼ぶ手間もはぶけたってもんだ。



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